Part 1 ガーナで起こす「カカオ革命」、ガーナのチョコレート長・田口愛さんにインタビュー!

アクティビストインタビュー第5弾では、ガーナで「カカオ革命」を始め、現地のカカオ産業の改革と日本とガーナをチョコレートで繋ぐ活動に取り組むアクティビスト、田口愛さんにお話を伺いました!

Q1. 田口さんはどのような活動をされていますか?

これは私が命名した活動なのですが、ガーナで「カカオ革命」を起こそうとしています。ガーナの良質なカカオ豆を生産して流通を透明化し、生産者と消費者の間に信頼と愛のつながりを創り出すことで、世界中でその価値を向上させ、現地に持続可能な形で還元するモデルを提案しています。

Q2. 愛さんはいつからその活動を始められたのですか?

活動を始めたのは、2018年6月、大学一年生の夏に初めてガーナに単身渡航した時です。最初は、ただカカオ農家さんに会いたいという思いでガーナに行きました。というのも、私は幼い頃からチョコレートが大好きで、おじいちゃんの家に行くたびにもらう1粒のチョコレートを大切にして、気合を入れたい時や元気をつけたい時に食べていました。こうしていつしかチョコレートは私の人生に欠かせない存在となり、チョコレートの生産に深く関わっているカカオ農家さんにいつか会いたいと思うようになっていました。

現地ではカカオ農家さんのたくましい生き方に魅了されて、カカオやチョコレート産業の持続可能な生産・消費循環型モデルを作ったり、教育や医療などのサポートをしたりしながら、大好きなガーナをあらゆる面からより「豊か」にしていきたいと強く考えるようになりました。実際にガーナに行き、農家さんの生活や彼らのたくましさ、ガーナ政府の仕組み(カカオ豆買い取り価格均一政策)を知ることによって、彼らの助けになりたい、彼らのことを日本に伝えたいと思い活動を本格的に始めました。そして2020年5月までは、ガーナのカカオ豆の可能性を広げ、カカオ農家さんや地域コミュニティの所得向上・自立を目指す活動「カカオ絆プロジェクト」に取り組んでいました。

Q3. 現地に行って驚かれたことは何ですか?

温かい経済エコシステムが残っていることです。物々交換もまだ盛んに行われています。芋と鶏肉を交換したり、農園の手伝いに行く代わりに自分の農園も手伝ってもらったり。村の人々の積極的なgiverとしての姿勢は当たり前でした。この先、こういった社会が資本主義システムの多大な影響を受け始めた時にどうなってしまうのかと、不安に感じています。また、「国際協力」というと、「無いもの」に目をつけてそれらを次々に拡充していくイメージが強く、私もガーナに行くまではそのようなイメージを持っていました。自分の生活基準と比べてしまいがちでしたが、現地で生活を送る中で人々が楽しそうに生活しているのを見て、自分の考えや姿勢が大きく変わりました。

ガーナの村の人々は毎日とても楽しく生きていて、経済的な豊かさよりも、「今日も元気だから」「恵みの雨が降ってきたから」「今日も食べ物があるから」「今日は晴れていてカカオが乾くから」と、日本に住む私たちが思い過ごしてしまうことを大切にしているんです。その日の食べ物について心配しなければならない経済状況でも、毎日幸せを感じながら暮らしている様子にとても刺激を受けました。日々の生活の中で私が当たり前に享受している恵みを大切にしていきたいという気持ちが芽生えました。

Q4. 具体的に「カカオ革命」とはどのような活動ですか?

「カカオ革命」とは、ガーナのカカオとチョコレート産業を5つの面から改革していく取り組みです。この「カカオ革命」を始めたきっかけには、ガーナ独特のカカオ産業の仕組みの負のループがあります。ガーナ政府には「カカオ委員会」があるのですが、全てのカカオ豆は収穫後、政府の倉庫で管理され、均一な値段で売られることが決まっています。豆の品質向上を行っても収入アップに繋がらないこの政策によって、農家さんは最小限のことしかしなくなり、どんどん豆の質が落ちてしまっているのです。カカオの袋に石などが入ってしまっていたり、発芽しかけている豆を輸出してしまったり…。日本のショコラティエの方々の中には、購入したガーナ産カカオ豆の3分の2が使い物にならないと嘆いている方もいます。そうすると、ガーナからカカオ豆を購入する企業やショコラティエが減少し、ガーナ政府は買取価格をさらに低く設定し、農家さんのモチベーションは下がり、現地では貧困が進んでいくという悪循環が出来上がってしまうリスクがあるのです。こうした負のループをなくしていこうという取り組みが「カカオ革命」です。

この「カカオ革命」では、現地の意識の変革、生産の変革、流通の変革、消費者の意識の変革、還元の変革の5つのアプローチから改革を実現しようとしています。

「現地の意識の変革」

普段カカオ農家さん自身はチョコレートを口にすることなく、外国の企業に売り捌くために量重視でカカオ豆の生産をしていました。この改革では、量重視の生産から質も重視する生産に移行させる改革を行っています。チョコレート工場の建設もその一環です。普段チョコレートを口にすることのない農家さんも、工場でカカオからチョコを作ることで、カカオに対する興味とこだわりを持つようになりました。

「生産の変革」

村のカカオ農家さんたちが全員参加している農協を設立し、どうやったら質の向上に繋げられるか、などの情報共有の場を設けることで、村全体のカカオの質の向上へ繋げることができました。

「流通の変革」

流通では、カカオ豆をただ麻袋に入れるのではなく、タグをつけることによって生産者や生産地が明確にわかるようにしました。ガーナでこの流通の透明化の試みを取り入れるのはMpraeso合同会社(田口さんが2020年6月に設立)が初めてになります。日本のショコラティエの方々だけでなく一般の消費者も、生産者のことを考えるようになるきっかけを作りました。

「消費者の意識の変革」

カカオのワークショップを日本で行うことによって、身近なチョコから、あまり身近でないカカオ豆の魅力や課題について考えるきっかけになればいいな、と思い、毎月開催しています。特にバレンタインなどは良いきっかけになるので、日本でのワークショップ開催のために何度かガーナから帰国しています。今後SNSやYouTubeなどを活用し、より積極的に情報発信していく予定です。

「還元の変革」

貯蓄がなく、その日暮らしになりがちだった村の人たちと一緒に、「Mpraeso基金」を作りました。みんながカカオ豆の生産や販売から得たお金の一部を村のために使えるようにすることを目的としています。普段は医療や教育をサポートしたり、今回のコロナのような疫病や災害が起こった際に、必要な物資や補助金を確保したりするのに使っています。また、新しい買取システムを取り入れることによって起こるかしれない現地の人々の収入格差のリスクを抑えることで、人々の可能性を広げつつも、村全体のエコシステムを守る役割も担っています。

もともとガーナは土地的にすごく豊かで、様々な種類の木が生えているんです。ガーナのカカオ豆は本当に味のバランスが良くて、世界中から愛されています。このような負のループが続いていても、ガーナの豆は世界中で多く使われていて、実際に日本で消費されているチョコレートの8割がガーナ産のカカオ豆から作られています。こういった状況の中で、頑張って作ったカカオが高く売れる仕組みを一緒に作っていこうよ、というメッセージを私は現地で発信しています。

次回のPart 2は、6月28日に投稿予定です。田口愛さんのMpraeso合同会社設立、起業の経緯、活動のやりがいなどについて紹介していきます!

クラウドファンディング

この記事でご紹介した「カカオ革命」に向けて、7月からクラウドファンディングを行う予定です!
「クラウドファンディングで支援してくださった方に向けて、リターンのチョコレートを作り、お届けします。これを通じて、皆さんがガーナについて考えるきっかけを作ることができたら嬉しいです。」
クラウドファンディングについてはこちら!

TICAD 開会式のメッセージ

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