「脱力系」ジェンダーアクティビスト、りおっぴさんにインタビュー!

インタビュー第7弾では、ICU Prismを創設し、メンバーとしてもジェンダーに関する幅広い活動に尽力するりおっぴさんにお話を伺いました!現在の活動、ICU Prism創設の経緯、りおっぴさんの目指すアクティビズムの形、社会に訴えたいことについてご紹介します。

Q1.りおっぴさんはどんな活動をされていますか?

ICU Prismというプラットフォームで、ジェンダーに関するプロジェクトの企画、Podcast配信、イベント開催、セクハラ・性暴力調査プロジェクト(SSP)など幅広い活動にメンバーが取り組み、発信できるスペースをつくっています。つい最近インカレになり、ICU生だけでなく他大生や大学院生の方も一緒に活動しています!

Q2. ICU Prismを始めようとしたきっかけは何ですか?また、いつからその活動を始められたのですか?

活動を始めたのは大学1年生の始めの頃です。大学入学当時、入学式を欠席し、サークルやELA(English for Liberal Arts)のクラスの中でなかなかうまく人間関係を作ることができず、コミュニティを心の底から求めていました。ジェンダーについて理解していて「脱力」状態で付き合えるコミュニティが欲しかったので、自分でつくろうと思ったのがきっかけです。なので、活動を始めた時の気持ちを一言で表すと、「孤独」でした。

最初は、性的同意に関する認知を広める会を開催するために、1人でジェンダー研究所(CGS)にポスターを貼りに行きました。その後、Approaches to Gender and Sexuality Studiesという授業をとっていたID23の学生に一緒に活動しないか、と提案して、後から誘ったセクメ(ELAのクラスメイト)と合わせた5人で本格的にICU Prismを始動させました。気が付いたらメンバーが集まっていましたね。ICU Prismは大学キャンパスをセーフスペースにすることを目標としていますが、今ではジェンダーに興味のある学生が各自のプロジェクトを持ち寄って活動するプラットフォームとして機能しています。

Q3. りおっぴさんは、ジェンダーに関する取組みを中心に活動されていますが、どのようなきっかけでジェンダー問題に興味を持ったのですか?

高校生の時に、東大で山田秀頌さんが開催していたクィア理論入門公開講座に参加して、そこでジェンダーが学問として研究されているのを知り、興味を持ったのが最初だと思います。その時は大学に進学するかどうか迷っていて、高校卒業すらも危うかったのですが、ジェンダー学を学べる大学はどこだろう、と気になって調べる中でICUのジェンダーセクシャリティ研究に興味を持ち、ICUを受験、入学したという経緯で今に至ります。ICU Prismを始めた当時、性的同意についてフォーカスしていたのは、Twitterで見つけた他大学の学生団体やアクティビストからアイディアを得たのが理由です。

Q4. Podcast配信について教えてください。

Podcastは最近始めたばかりの活動で、「Gender 4 Youth」という名前で配信しています。このPodcast配信では、ジェンダーに関する研究者や大学院生の方をゲストとしてお招きして、研究についてお伺いしています。ジェンダー分野に興味のある高校生・大学生にぜひ聞いてもらいたいです!このPodcastはICU Prismの3人のメンバーがコアとなって企画・運営をしていて、私はスクリプトを書いたり、カンペ係を担当したりしています。つい先日、第1話をリリースしました!第1話では、米ワシントン大学で研究をしている平森大規さんをお招きしてお送りしています。

Podcast配信を始めた理由ですが、メンバーの中に発信をするのが好きなメンバーがいて、発信の活動をすることにしたのがきっかけです。でも私は文章で発信するのは得意ではないので、それならPodcastを使って発信していこうということになりました。アイディアを得たのは、「となりの研究室」ですね。これは、様々な分野の駆け出し研究者たちが自分たちの経験や研究について語るというPodcastチャンネルです。このチャンネルみたいに、ジェンダー分野の研究にフォーカスしてアカデミックな方向で発信していきたい!と思って今の形になりました。

Q5. セクハラ・性暴力プロジェクト (SSP)とは具体的にどのような活動ですか?

SSPは、ICU内のセクハラ・性暴力の実態を量的に調査することを目的として始めました。社会調査法を学びながらどのデータ収集方法が最適なのか、などを模索しながら調査を進めていく予定です。この調査をすることで、ICU Prismという学生団体としてどのような問題に着目して活動していくべきか把握することができると思っています。今は、大学側との交渉をしているところです。

Q6. このプロジェクトを始めようと思ったきっかけは何ですか?

私がICU Prismとして活動してきた中で、「ICUをセーフスペースにする」というゴールに近づいている実感がありませんでした。それは、実際に数値として表せていないからだと思ったんです。質的な聞き取りやジェンダーについて話し合うイベントはよくあると思うのですが、それがどれだけの効力を持つのか、というのって数値で表してみないとわからないことが多いなと思って。

様々な理由から、あまりこのような調査が大学で実施・公表されていないという現状があり、それなら学生のみで調査することによってやりやすい部分もあるのではないか、と考えました。

Q7. 活動を通してのやりがい、わかったこと、気がついたこと、ぜひICU生に知ってほしいことがあれば教えてください。

やりがいを感じるのは、活動を通じて色々な人との出会いや繋がりがあることです。例えば、Podcastの第1話に出演している平森大規さんのことはSNSで知り、ダイレクトメッセージ(DM)を送って知り合いになりました。今では、ICU Prismの活動を様々な場面でサポートしてくださっています。

活動して感じたことですが、分かったことよりも分からなくなったことの方が多いように感じます。クィア理論について、万人にセーフなキャンパスのあり方について、アクティビズムのあり方について、など。例えば、クィア理論に関しては、用語の定義のしづさらを感じたり、そもそも定義すること自体がクィアと相反するのではないかと考えたり、クィア理論を論じる側が権力となってしまう難しさを感じたりなど、学問としての複雑さを実感しています。

Q8.りおっぴさんにとっての「アクティビズム」とは何ですか?

私は「脱力系」なので、今のICU Prismをつくる際も誰でも気軽に入れる、気軽に幽霊部員になれる、興味のあるプロジェクトのみ参加できる、ということが可能な、気軽なコミュニティをつくりたいな、という思いがありました。メンバー全員が同じ熱量を持ってひとつのことに取り組むのは容易なことではないです。だから、みんなが個々で取り組みたいことや持っている問題意識などを大切にしながら、個々でプロジェクトを立ち上げたり参加したりできるアクティズムの形もありなのかなって思います。私がしたいアクティビズムは啓蒙主義的な活動ではなく、自分のスタンドポイント(個人の価値観はその人の社会的・政治的経験に帰属するという考え)を明らかにして、泥臭くアカデミックな学びの蓄積を大切にしながら発信をしていくことです。

Q9. りおっぴさんが社会に訴えたいこと、伝えたいことは何ですか?

個人が、社会構造の中で形成された権力によって傷ついたり不平等を被ったりした経験を持つとき、自らを救うために社会運動に取り組むということがあると思います。しかし、社会運動の目指す目標やそのプロセスによっては必ずしも個人がその経験から救われるわけではなく、むしろ苦しみが倍増されたり、違う方向に傷ついてしまったりすることもあるのではないでしょうか。もやもやした感情や経験について考えているとき、たまたまTwitterで似たようなツイートを見つけて共感したり、一方リプライをみて気持ちがザワザワしたり、あるいは意外な感情を抱いたりするかもしれません。私はたまにTwitterを見ていて、私に傷つき方を教えないでほしい、と思うことがあります。特に、あきらかに快楽でも不快でもない特定の経験を私がしたあと、まだ結びつきを考えられてない感情の所在を考えようとしているときに感じます。正当な理由で怒っている勇気あるネットのフェミニストたちのツイートを読んでいると、自分の中で作りかけていた文脈が一気に吸い込まれて、ツイートと似たような感情の結びつきを自分の中に作ってしまうのです。そしてしばしばツイートに零れ落ちてしまった感情を無意識にネグレクトしてしまいます。だから、私はいつも自分の経験の結びつきを最終決定するのは自分だと再確認するようにしています。

私が僭越ながらひとつ、社会、とりわけ自分の経験を大切にしながら社会運動をしている方にお伝えしたいのは、自分の手で既存の文脈を裏切ることができること。自分の中で一度結ばれた感情の結びつきをゆっくりとほどけるし、また結び直すこともできるということを伝えたいです。

Q10. 今後どのようなことに挑戦していきたいですか?

Podcast「Gender 4 Youth」は、50エピソードの配信を目標にして作成していきたいです!それから、ジェンダー関連の活動をする学生団体を支援する基金とかあればいいですね。また、今インカレになったICU Prismの新メンバーを募集しているので、団体の規模をより大きくしてみんなが気軽に「脱力」で参加できるコミュニティを目指していきたいです。

(上写真)2020年にコロナの影響で中止となった東京レインボーパレードをSNS上で開催しようというオンラインキャンペーン、「#おうちでプライド」に参加した際の写真。

(上写真)パネル展示にての写真

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