バナナの茎をエコラップに!Hult Prizeで活動されたダニエルさんにインタビュー!

インタビュー第10弾では、Hult Prize at ICUで優勝し、ビジネスアイデアの実現に向けて活動しているダニエルさんにお話を伺いました!どのような経緯で今のアイデアにたどり着いたのか、インドネシアでの体験、環境問題に対する考えなどを語っていただきました。

Q1. ダニエルさんはどのような活動をされていますか?

Hult Prize at ICUという団体でバナナの茎から作ったエコラップの企画活動をしています。日本はプラスチック消費量がとても多い国で、年間の食品ロスは約600万トンと言われています。国連の支援食品量が390万トンであるのと比較すると、その多さが分かると思います。
日本では回収されたプラスチックのほとんどは燃やされ、CO2も発生しているので環境に悪いという側面があります。

この問題に対して2つの願望があります。一つ目は、石油が原料であるプラスチックを使用せずにラップを作ること。二つ目は、プラスチックよりも食品を長持ちさせることが出来るものでラップを作るということです。こうすることで、食品ロスを少しでも削減できると考えます。

この2つの願望を叶えるにあたって目をつけたのがバナナの茎です。コットンや麻布と蜜蝋などを使った、蜜蝋ラップはカナダやアメリカで流行っていますが、結局その繊維を集めるために木を伐採するなど、環境に違った負荷がかかる一面もあります。バナナの茎は使われずに捨てられてしまうので、それをコットンや麻布の代わりにラップの材料にすることは、持続可能であると考えられます。捨てられるはずの茎を農家さんから買い取ることができれば、それも利点になると思います。
プラスチックと食品ゴミ問題を同時に解決するというアプローチです。

Q2.いつからその活動を始められたのですか?

2019年9月頃にHult Prizeのテーマが発表され、そこからアイデアを練り始めました。その年のテーマは「1ドル設けるごとに環境にポジティブなインパクトを与えるビジネス」でした。もともと環境に興味があったので、面白そうだなと思いました。頭の片隅にはバナナを使うというアイデアがあり、そこから紆余曲折があって今に至ります。

Q3. どのような過程を経て今のアイデアになったのですか?

最初はバナナのデンプンからバイオプラスチックを作ろうと思いました。しかし、意外とバナナのデンプン配合率が低かったため、別の路線に変更し、蜜蝋ラップとバナナを組み合わせてみようというアイデアが生まれました。

Q4.その後、Hult Prizeで出したアイデアはどうなりましたか? 

バナナの茎を使ったエコラップのアイデアでHult Prize ICUで優勝し、その後の地域予選では優勝は叶わなかったものの、約70チーム中でトップ6に入ることができました。当初の予定では、バンコクにて大会が開催されることになっていましたが、コロナの影響で出発の2、3日前にキャンセルになってしまい、3月上旬に東京のオンライン大会に出場しました。

Q5.バナナの茎を使うというアイデアはどこから思いついたのですか?

以前インドネシアに住んでいた時に、1990年代にインドネシアに駐在していた人の伝記を読みました。当時は工場が整っていなかったため、必要な部品が揃わなかった時にバナナの茎を利用して部品を作ったという話がとても印象的で、環境に良いビジネスを考える時にバナナを使おうと思い至りました。

その後、バナナのデンプンからプラスチックを作る研究を見つけて、バイオプラスチックを作ろうというアイデアが出ました。そこから試行錯誤して、バナナの茎の繊維を使った蜜蝋ラップを作ることになりました。

これはあまり知られていないのですが、バナナがなっているのは木ではなく草なんです。なので、約1年ほどの短いスパンで成長します。バナナの茎は比較的柔らかくて、様々なものに使うことができます。

Q6.始めた時はどんな気分でしたか?

最初は軽い気持ちで参加しました。そのうち大会に向けて試作品を作っていくと商品化できるんじゃないかと思うようになり、優勝しなきゃという気持ちになりました。また、実際にインドネシアに行ったことで気持ちが燃え上がっていきました。

Q7.Hult Prizeのチームでインドネシアに行っていたとおっしゃっていましたが、そこではどんなことをしましたか?

学内大会で優勝してから、もっとバナナのことを知るためにインドネシアに行きました。行ってからよく分かったのですが、バナナの種類によって茎の性質が全然違うんです。また実際に農家の人の反応を知りたかったというのがあります。

NGOなどと連絡を取って、バナナの産地として有名な東ジャワ州のルマジャンというところに訪問をしました。村人の集会で、僕たちのビジネスアイデアをプレゼンしました。実際にバナナの布を見せてもらい、5、6種類のバナナを切り出してもらって、繊維を抽出しました。そこまで繊維自体に違いはないと思っていたのですが、全く違っていたので驚きました。例えば、ピサン・ケポックという種類のバナナの繊維はとても硬く、凧に使われるくらい丈夫です。それに比べて、一番主流だと言われているマス・キラナの茎は柔らかいということが分かりました。

ジャカルタの近郊では、ストリートチルドレンに農業を教えるNGOで、バナナに関する習慣などを調査することができました。

Q8.なぜインドネシアを選んだのですか?

バナナの生産量は一位がインド、二位が中国、三位がインドネシアです。個人的にインドネシアが好きというのもあるのですが、インドネシアではまだそこまでバナナの布が注目されていなかったのと、小規模な農家の方が多いので、そのような人たちを助けることができれば良いなと思ったからです。

Q9.現地でバナナの茎の繊維を抽出したとのことですが、それは簡単にできるものなのですか?

それに関しては日本で予め調査してから行きました。現地では少量抽出できれば良かったので、沖縄の芭蕉布の作り方を参考にしました。まずバナナをアルカリ性の水で茹でて、竹の破片で周りを擦ると布状の繊維を取ることが出来ます。しかし、大量に繊維を取るときは機械が必要です。

Q10.Hult Prizeはチーム戦だったと思うのですが、チームで働くのはどうでしたか?

大変でしたね。チームメンバー同士の価値観が色々だったのと、大学の授業や他の部活などでそれぞれが忙しくて予定を立てるのに苦労しました。一人でやった方が早いのではと思うこともありました。

チームで良かったことは、やはりお互い助け合えることですね。アフリカのことわざで、「早く行きたければ一人で進め、遠くまで行きたければ皆で進め (If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together. ) 」という言葉がありますが、まさにそれだなと感じました。

Q11.Hult Prizeの大会に向けた具体的な実行プロセス(製品化など)は、メンバー同士でどのように行っていたのですか?

メンバーのメジャー(専攻)が良い具合に分かれていたのが良かったと思います。僕は公共政策と環境、国際関係も折り合わさった感じなので、主にインドネシアに関する調査をしました。化学メジャーの人もいたので、バナナの性質などを調べてもらいました。経営学メジャーの人にはプレゼンや会計のアイデアをまとめてもらいました。あと一人は国際関係とビジネスだったので、横断的にサポートしてもらっていました。

このように分かれていると、皆の専門性が生きますし、それぞれに居場所があるため心理的にも良かったと思います。

Q12.どんな時にやりがいを感じますか?

自分がやっていることを人に共有し、分かり合えた時にすごくやりがいを感じます。自分は心配症なので、計画があっても現場の人にとって本当に為になるのか不安になることがありました。しかし、実際行ってみると現地の人からの反応が良くて、さらにやる気が出ました。

また社会起業といっても、色々な考え方があって、僕は社会のためになることが結果的に利益を生み出せたら良いなと思っているので、金銭的なメリットだけではなく、人々に満足してもらえたと実感出来るときにやりがいを感じます。

Q13.活動したことで分かったこと、気がついたこと、ぜひICU生に知ってほしいことはなんですか?

活動して分かったのは、今はインターネットでなんでも調べられると思ってしまいがちですが、実際に現場に行かないとわからない事が多くあるということです。気になったことは自分の目で見て実証・検証する必要があると感じました。また、チームで働くことの長所や短所にも気付くことができました。インドネシアのゴミ問題の深刻さも再認識しました。

Q14.社会に訴えたいこと、伝えたいことはなんですか?

個人的には環境問題に関心を持っていただけたら良いなと思います。健全な環境無しでは人間は生きていけないので、危機感を持つ必要があると感じています。環境問題に限らず、自分と自分に関わる他者との間の問題について考え、関心を持つことで、世の中の見方が変わり、行動の指針にもなるのではないでしょうか。行動は必ずしも大きい必要はなく、+0より+0.1の方が良いという気持ちで、完璧主義になりすぎないことも大切だと思います。そして行動した自分に少し誇りを持つというのも良いかもしれません。しかし同時に、批判はしっかりと受け入れ、自己完結にならないようにするのも大切だと思っています。

Q15.これからやっていきたいこと、挑戦してみたいことなどがあれば、教えてください!

満足のいく試作品を作るというのが今の目標です。品質に劣りがないようなものを販売できるようにしていきたいです。販売を通して学べる事も沢山あるのではと思っています。ゆくゆくは日本だけではなく、食品を保存するのが困難な地域や、食べ物の衛生管理があまり良くないところの助けになれたら良いなと思います。いずれはバナナの茎をインドの会社などから外注することになると思うのですが、エコラップの工場を作ることができたら、インドネシアでお世話になった方々も招いて感謝を伝えたいです。

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