Part1:『橋渡し』でつくりだす小さな変革。ICU PRISMの加美山紗里さんにインタビュー

インタビュー第11弾は、ICU PRISMで活動するジェンダーアクティビストの加美山紗里さんにお話を伺いました。今回はPart1とPart2に分けて投稿します。今週のPart1では、紗里さんのICU PRISMでの活動内容、活動を始めるきっかけや、活動を通して目指す「橋渡し」の役割についてお伝えしていきます!

Q1. 紗里さんはどのような活動をされていますか?

ICU PRISMで活動をしつつ、個人での発信活動をSNSでも行っています。

ICU PRISMでは、ICUを誰もが快適に過ごせるセーフスペースにすることを大きな目標として活動していて、私はイベント開催・登壇、SNSやPodcastを通しての発信活動、生理用品プロジェクトなどに主に携わっています。今は分かりやすい差別は少なくなってきているかもしれませんが、マイクロアグレッション(悪意のない無意識な偏見や差別)やステレオタイプで傷ついたりモヤモヤする人、アイデンティティに自信を持てない人がいます。この状況を変えるためには、マジョリティの立場を相対化して、力関係の構造を理解することが必要だと考えます。そこで、既存の社会の構図を社会的性別の視点から批判的に見つめ直すジェンダー・セクシュアリティ研究が大きな意味を持ってくると思います。まずは、その第一歩としてICU PRISMが、ジェンダーについて気軽に話せるような場を提供するプラットフォームとしての役割、またわかりやすく且つ正確な情報を発信する情報源としての役割を果たすことによって、多くの人々がジェンダー研究に足を突っ込むきっかけを作りたいと考えています。

個人としては、ジェンダーとアートを組み合わせた発信活動を主に行っています。友人のジェンダーステレオタイプの経験を絵にして投稿したり。色々な人が様々な場面で生きづらさやモヤモヤを感じていることがわかって、共有してくれたことへの感謝とともに苦しさを感じました。生きづらさを言語化・可視化することで、少しでもみんなが楽になるきっかけをつくれればいいな、と思っています。

Q2. ICU PRISMのイベントについて教えてください。

イベント登壇に関しては、ICUでSOGI (性自認・性的指向)の多様性に関する学長宣言の際、ICUにおける4つのジェンダーの課題と改善案について話しました。1つ目は、教授やELA教員による差別的発言やハラスメントに対して学生が声を上げやすくする環境づくりと教員へのジェンダー教育の拡充。2つ目は、大学内での生理用品へのアクセスの改善と生理用品用ゴミ箱の女子トイレ・男子トイレの両方への設置。3つ目は、オリエンテーションや授業で性的同意やSOGIの多様性に関するセクシャルヘルス教育の提供と必修化。4つ目は、学生が妊娠している場合、また意図しない妊娠をしてしまった場合、させてしまった場合に頼れるセクシャルケアサービスの提供です。

イベント開催は、これまで対面とオンラインイベントの2種類のイベントを開催しました。対面イベントは、去年の6月頃に「性的同意」をテーマとして、参加者と一緒に「性的同意ハンドブック」を読みディスカッションをするという内容で実施しました。大学の新入生向けオリエンテーションで性的同意に関するワークショップがないことに疑問を持ち、その状況を少しでも改善したいという思いから開催に至りました。オンラインイベントは、これまで2回開催してきましたが、新メンバーのリクルートの主な目的でした。参加者とジェンダーに関するトピックについてフランクに話し合うというイベント内容です。

Q3. イベント開催をして、どのような手ごたえを感じましたか?

イベント開催を通して色々な点に配慮することの重要性に気付かされました。初対面の人とジェンダーの話をすることって容易ではないので、グランドルールを設けてセーススペースづくりを徹底したり、性の話題をするので開催ツールの安全性を考えたり、みんなが話せるようなトピック選択を心がけたり、参加者のジェンダーに関する知識量の違いで参加者間に溝が生まれないようにメンバーがリサーチをして知識共有をしたり。そしてイベント開催を通して、ICU PRISMの活動に対する私の思いも再確認できたのではないかな、と思います。ジェンダーに関する知識量の違いを埋め、橋渡しをしていきたいな、と。象牙の塔にこもるのではなく、色々な人を巻き込んでジェンダーの議論がしたいです!

Q4. ICU PRISMのSNSでの発信活動ではどのようなことをしていますか?

私は、今ICU PRISMでSNS発信とPodcast発信の2つの発信活動をしています。

SNSでの発信活動では、インスタグラムなどを通してジェンダー学がどのようなものか簡単にわかるようなオーバービューを作ろうとしています。具体的には、ジェンダー学にはフェミニズムの他にどんな議論が存在しているのか、ジェンダー学が何を批判しようとしているのか、など。このジェンダー学のオーバービューは私がジェンダー学を学び始めた時にまさに欲しかったもので、今はICUの豊富なジェンダー学の授業と文献へのアクセスというアドバンテージを活かして発信しています。私は、学術的な文献を使いつつも、ジェンダー学の敷居を下げることを目指しているので、投稿の際には多くの人が読みやすいようにデザインにもこだわっています!発信について思うのは、表現の方法にこだわることは、発信する側の義務というより、ロマンに近いなと。伝えたいことを体系的にまとめてから、文字のサイズ、色、媒体、ターゲットを少し変えるだけで返ってくるものが変わるので楽しいですね。

Podcastでは、教授や大学院生をお招きして、ジェンダーに関する研究についてインタビュー形式で毎回配信しています。ひとりの視聴者としてもインタビューする側としても色々なお話を聞けるのでとても楽しいです!それに、ジェンダー学のフィールドをより俯瞰して見れるのも面白いところです!

ジェンダー学の現状として、研究者と学部生や高校生の間に距離があるように感じるのですが、誰もが親しみやすい内容の提供を意識しすぎると薄い内容になってしまうという傾向がある気がするんです。だからこのPodcast配信では、高校生やジェンダーを学術的に勉強したい人に向けて、「橋渡し」の役割を意識して取り組んでいます。今は、知り合いの研究者の方に頼むことが多いので、これからはもっと意外なジェンダーとの組み合わせの学問分野の方をお招きしたいですね。例えば物理学とか!

Q5. 生理用品プロジェクトについても教えてください。

このプロジェクトでは、ICUにおける生理用品拡充を目指したプロジェクトで、学校の生理用品無償化活動などに尽力するレッドボックスジャパンと協力して取り組んでいます。

ICU PRISMは学長からの依頼で生理用品に関するアンケートを大学内で行い、180人から回答を得ました。そのうち通学生の69%、寮生の61%の回答者が生理用品がなくて困った経験があると回答したんです。大学内の生理用品を購入できる場所が三省堂と体育館の2箇所しかないことが原因です。周期がずれて生理が来たときに生理用品を持っていなかったという意見や、10分しかない休み時間の間に広いICUを移動できず、生理用品を購入できなかったという意見もあり、問題意識がより強くなりました。今は、コロナの影響でこのプロジェクトを進めることが難しくなっていますが、レッドボックスジャパンや「#みんなの生理」で活動する谷口歩美さんとともにオンラインイベントなどの開催を考えています。また、今年本館にオールジェンダートイレができ、とても嬉しく思うとともにさらに活動の可能性が広まったなと思っています!

Q6. 紗里さんは、いつ、どのようなきっかけでICU PRISMでの活動を始められましたか?

ICU PRISMの活動を始めたのは、大学1年生の5月だったと思います。

きっかけは、ICU入学後すぐのジェンダーの授業で性的同意のワークショップがないのはおかしくない?って話したことです。お酒とタバコの必修講義はあるのに、大学生として知っておくべき性暴力やセクハラ、特にキャンパスレイプ についての言及があまりにも少なかったことに疑問を覚えました。

それから、私の中で高校生の時から「何か活動したい」という思いがあり、アクティビズムへのイメージを強く持っていました。この思いと、ジェンダー学の授業で抱いた疑問が合致してICU PRISMの活動に繋がりました。この授業で一緒だったID23の学生とはICU PRISMのメンバーとして活動を共にしています。

Q7. 始めた時はどんな気分でしたか?

始めた時は、私たちが声を上げれば変えられる!と思ってました。でも実際には、オリエンテーションでの性的同意に関するワークショップの開催を求めようとても、大学システムの中で誰に求めればいいかわからず、いざアプローチしても大学の立場やあくまで一研究所であるというジェンダー研究所の立場などが障害となって実現することができませんでした。

そして私自身の中でも、性的同意に関するイベントを開催しながら「こんなに性について語っていいのか?」と思っている部分もありました。変えたいという気持ちと、いいのかなっていう気持ちとで揺れていました笑。私の中で、性について話すことに抵抗感があったんですよね。それはこのような活動に関するネガティブな声や偏見を耳にしたからだと思います。「ジェンダーの活動していると結婚できない」「ジェンダーについて語る=下ネタ」など。「普通」でいることに重きを置かれたような中高生活だったので、このような活動をしたら引かれるかもとか思っていました。

でも、モテとかを気にして大学生活を過ごしたくないな、と思うのと同時に、ICUに入ったからには社会に訴えかけるような活動、ICUに小さな波紋を起こすような活動がしたいと思うようになりました。ジェンダーについてもっとオープンに話すべきと、今は強く思っています!

ウェブサイト・関連リンク:https://icuprism23.wixsite.com/prism

Instagramアカウント:@kamisari.tweety , @icu__prism_23, @gender4youth

Twitterアカウント:ICU PRISM , @konnichihane 

Facebookアカウント:ICU PRISM , 加美山紗里

加美山紗里さんへのインタビュー記事Part1はいかがでしたか?

Part 2は10月4日に投稿予定です!

活動にどのような思いややりがいを感じているのか、紗里さんにとっての「学生団体」とはどういうものなのか、どのようなことを社会に訴えていきたいのか、などをお伝えしていきます。ぜひPart 2もお楽しみに!

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