身近な友人1人を勇気づける行動からアクティビズムを始めよう。「手ばなすぺーす」を運営するID19卒業生 最首希咲さんにインタビュー!

先週の10月10日は世界メンタルヘルスデー!

「メンタルヘルスってなんだろう」と考えるきっかけを作るため、「つながる、どこでも、誰にでも」をテーマに日本でも様々なイベントが開催されました。

そこで今回のICONfrontインタビュー第12弾では、ICUの卒業生ID19の最首希咲さんにインタビュー。最首希咲さんは、ICUコミュニティにおけるwell-beingの向上を目指し、悩みを手放すことができる「手ばなすぺーす」を開催するアクティビスト。

手ばなすぺーすを始めようと思ったきっかけや、活動の中で感じるやりがい、ICU卒業後も尚、ICU生に向けてイベント開催を継続する思いなど、たくさんのお話を伺いました!

Q1. 希咲さんはどのような活動をされていますか?

well-beingの向上をミッションに活動しています。ICU生に向けては、ICU82卒の半田ウィリアムズ郁子さんと環境研究・生物学教授の小林牧人先生と3人で「手ばなすぺーす」という集まりを月1で開催しています。この集まりでは、不安や悩みを抱えた参加者が、他の参加者にその不安や悩みを共有できる機会を作っています。

ちなみに私はこの6月にICUを卒業していて、今は環境保護のNPO法人と自殺対策の社団法人でダブルワークをしています。

Q2. 「手ばなすペーす」を開催するときは1つのテーマを設定しているのですか?

事前にテーマは決めず、参加者に合わせてフレキシブルに話を進めることがほとんどです。基本的には、最初に自己紹介とアイスブレイクをして、その後は参加者がしたい話をフリートーク形式で進めます。参加者によって毎回進み方が違い、日常会話のような軽い感じで終わることもあれば、精神病のことなど深い話になることもあります。毎回雰囲気が変わる感じです。

2020年の2月からこの集まりの開催準備を開始し、5月には旧ディッフェンドルファーにある宗務部の図書室を借りて第1回目の開催を考えていました。しかし、丁度その頃にコロナウイルスが流行してしまい、結局オンラインに移行して開催することになりました。

Q3. 実際にオンラインでの開催はどうでしたか?

実際に開催してみて、オンライン開催には良いところと悪いところが両方あるなと思いました。

良いところとしては、様々な場所から参加できることですね。例えばこれまでに、他の県にある実家から参加した人や対面では参加する元気はないけどオンラインならということで参加できた人がいました。

悪いところは、強いて言うと場の空気が少しわかりにくいことでしょうか。

オンラインとオフラインにはどちらも良いところと悪いところがあるので、今後キャンパスでの開催が可能になった時には、オンラインと現地開催を交互にやっていけたらと考えているところです。

Q4. 手ばなすぺーすを始めようと思ったきっかけを教えてください。

「人間なら誰でも不安や心配を抱えているはずで、それを話すことで消化する(=手放す)機会があれば良いなあ」という想いで始めました。日常生活において、自分の不安や心配をあえて話すことやそれらを気軽に話せる環境ってなかなか無いと思うんです。でも話してみると、思っている以上に気持ちがスッキリするんですよね。そんなことを経験的に信じている3人でこの集まりを始めました。特に今はコロナ禍で気持ちが揺らいでいる人も多いはず。そんな人がちょっとでも落ち着ける場になれば良いなと思って開催しています。

Q5. 手ばなすペーすを開催して、参加者とお話をする時に心がけていることはありますか?

そのまま受け入れ合うことを心がけています。

誰かに悩みを打ち明けられた時、多くの場合「悩みを解消できるように頑張って」とか「その悩み、なくなるといいね」のように返すことが多いと思います。ただそれはコインの裏返しで、今の状態を否定していることになってしまうと思うんです。つまり、”今の状態が悪い、だからこの状態じゃなくなるといいね”と言っているような感じです。

だから、手ばなすぺーすでは、今の状態でも十分OKという視点を念頭に置いて話を聞き合っています。誰でも生きていれば落ち込むこともあるし明るくなる時もある。落ち込んでいる時に、「それでも大丈夫、そうなるのはある意味当たり前」と聞き手に受け入れてもらうことで、話す側は「今の状態でも大丈夫なんだ、こう感じるのはもしかしたら私だけじゃないんだ」と感じてもらえると思っています。参加者にこうした体験をしてもらうことを目標にしています。

Q6. 始めた時はどんな気分でしたか?

不思議と自然に始められました。また、病院の元チャップレン(施設や組織で活動をする聖職者)として活動されていた郁子さんとの出会いや、卒論発表の場でお会いした小林教授とのご縁もあって、スムーズに活動が始められました。

ICUにはカウンセリングセンターがありますが、場所が食堂の奥の方にあって、行きづらいと感じる人が少なからずいるという印象があります。なので、カウンセリングセンターの一歩手前みたいな場所として、普段の生活のことを何でも話せて気持ちを楽にできる場を作りたいなとずっと思っていました。

また、ICUにはジェンダーに特化して気持ちを話す場所(CGS)があると思いますが、もっとジェネラルな内容を話せる場所を作りたいという想いがありました。

Q7. どんな時にやりがいを感じますか?

参加者の方に「心が少し軽くなった」「自分の奥底にしまっていたことをやっと取り出せた感じがした」といった感想をもらえる時ですかね…。「身近な友人1人を勇気づける行動」ができたかな、と感じる時にやって良かったなと思います。

ICUのアクティビストって個人的にはちょっと派手なところがあると思うんです。賞をとったり、団体を立ち上げたり。でも私は遠くの人に認められるより身近な人から感謝の言葉をもらえた時、身近な人を勇気付けられた時により嬉しく感じます。

まだ始まったばかりの活動でまだ色々と模索中です。ICUの現役生だけではなく、卒業生など幅広い層の人にも参加してもらえたらなと思っています。

Q8. 活動したことでわかったこと、気がついたこと、ぜひICU生に知ってほしいこと

「みんなと違ってもいいし、違わなくてもいい」ということをICU生にぜひ知ってほしいです。というのも、ICUってみんなと違うことしなきゃっていう意思が強い学生、目立たなきゃと感じる学生が多いなと感じるからです。ちなみに、私もかつてはその一人でした。「あの人は起業した」とか「あの人はインターンシップですごいところに行っている」とか、みんながすごいキラキラして見えることも時にはあると思います。でもキラキラして見えることだけが成功じゃないと私は思っていて。

だからこそ「アクティビズム」は壮大なものじゃなくていいと思うんです。私がやっていることは規模的にも小さいし、組織を立ち上げた訳でもないから自分自身に何か肩書きがある訳でもありません。だけど、「アクティビズム」の目的って”目立つためにやるもの”じゃなくて”社会をより良くするためにやるもの”だと思うので、別に壮大じゃなくても良いと思うんです。規模が大きくても小さくても、その活動が目立ってても目立っていなくても、影響が早く現れても遅く現れても、社会に何かしらの変化をもたらすものは全部「アクティビズム」だと思っています。だから、例えば”身近な友人1人を勇気づける行動”も私にとっては「アクティビズム」です。

周りを見て相対的に自分の存在を決めるのではなく、自分を絶対的に認めてあげられるといいのかなと思います。みんなと同じでもいいなと思うところはみんなと同じでいいと思います。違ってもいいし違わなくてもいい。ただ自分のやりたいことをやればいいんだよっていうことをICU生に伝えたいと思います。

Q9. ICU生として「相手を受け入れる」環境を整えるために、個人としてできることってどのようなことでしょうか。

私はこの手ばなすペーすがイベントとしてだけではなく、日常にも起こったらいいなと思っています。「これを言ったら変に思われるかも」などと思わずに、不安や悩みを友達に気軽に話せる環境が日常でもできていったらいいんじゃないかなと。だから、話を聞く側に立った時は、多様性を受け入れる気持ちを持って聞くこと、逆に自分が準備ができたなと思ったら思い切って友達に不安や悩みを話してみること、などが個人としてできる一歩だと思います。そうやってみんなで人生を一緒にやっていくっていうのができたらいいのかなって。自分の良いところだけをシェアするのではなくて、自分の悪いところや困っているっていうところまでも日常で話せたら、もっとみんなで協力して人生を歩んでいくことができるんじゃないかなと思うので、聞く側と話す側、両方の意思が重要だと思います。

Q10. 色々な参加者の悩みを聞いてきた希咲さんですが、ご自身のメンタルヘルスはどのように保っていますか?

自分も手ばなすペーすで不安や悩みを話すことがあるので、そこで話しながら考えていることを整理したり、自分の悩みを手放したりもします。だから、ある意味相互作用です。

あと、現在ダブルワークをしているのですが、そのうちの1つ、ホットラインの仕事を通して様々な社会問題・精神的な問題について学んでいます。私の中で言葉や概念を学ぶことってとても重要で、例えば、漠然としたもやもやを感じる時、社会問題や病気について知っていると、「あ、もしかしたら私ってこれに該当するかも」と、自分をよりよく理解するためのフレームワークになると思うんです。

仕事や手ばなすぺーすの活動から学ぶことはたくさんあり、自分自身もその恩恵を受けています。また、必要だなと感じる時には、積極的に休むようにしています。自分の中で、活動と休息のバランスがやっと見つけられてきたなと感じているところです。

Q11. 社会に訴えたいこと、伝えたいことはなんですか?

私がメンタルヘルスに興味を持ったのは私自身の経験がもとになっています。その経験を経て、なぜ世の中ではみんな自分の悩みを隠してしまうんだろうと疑問に思うようになりました。

日本社会の中で「メンタルヘルス大事だよ〜」っていう話は最近増えてきたと思います。でも、実際の所、自分の悩みをオープンに話せる人がどれくらいいるかっていうとまだまだ少ないと思います。もちろん、何でもかんでもオープンにするのが良い訳ではないし、悩みとかトラウマを話せるようになるまでには相当時間がかかるものですが、私は自分自身の経験を今後も積極的に周りにシェアしていきたいと思っています。そうすることで、より多くの人に「悩んでいるのは自分だけじゃない」と感じてもらえたらと思っています。それが最終的には、メンタルヘルスに関するスティグマとか偏見を少しでも減らすことに繋がればと思っています。とりあえず言いたいのは、人生色々ありすぎるので、一生通して心身共に健康なんて人はいないということです!(笑)

人生で何か悩み事が出てきた時に、誰もが恥を感じることなく弱みをさらけだせる、そして、それを周りの人が優しく受け止めてあげることができる、そんな社会になればいいなと思っています。

(ICONfrontより:希咲さんがどのような経験をされたのか、気になる方はぜひ彼女に直接連絡してお話を聞いてみてください!)

Q12. これからやっていきたいこと、挑戦してみたいことなどがあれば、教えてください!

1つはこの手ばなすペーすを続けていくことです。

もう1つは今働いている環境保護のNPOでの活動を通して、身近なみどりを増やしていきたいです。

一見無関係な2つの目標ですが、どちらもwell-being向上に深く関わる話だと思います。

well-beingって直訳すると、「良い状態であること」や「バランスが取れていること」なので、私たちのwell-being を向上するには多面的に考える必要があると思います。身体的な面や精神的な面、社会的な面、人が住む環境も関係してくると思います。1つでは計れない良い状態を考えることがwell-beingの向上には大事なんじゃないかなと思います。

ひとりひとりが生きやすい社会を作るため、人間と環境のwell-being向上のため、今後も活動を進めていきたいと思っています。

[最首 希咲さんのSNSアカウント]

◯ Facebookアカウント:Kisaki Saishu

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