教育を通して若者に希望を与えるーGPE Youth Japanの大竹日和奈さんにインタビュー!

インタビュー第18弾では、GPE Youth Japanに所属されているID24の大竹日和奈さんに話をお伺いしました。

GPE(Global Partnership for Education)は、世界銀行傘下にある低所得国の教育支援に特化した国際基金であり、大竹さんはこの国際機関が持つ、世界17ヶ国の支部のうちの日本ユース、「GPE ユース・アンバサダー・ジャパン」のメンバーとして活動されています。

今回のインタビューでは、大竹さんの団体内での活動やその思い、やりがい、ICU生に伝えたいことなどさまざまな話をお聞きしました。ぜひお読みください!

Q1. 大竹さんはどのような活動をされていますか?

 教育のためのグローバル・パートナーシップ(Global Partnership for Education: GPE)という国際機関の日本ユース「GPE ユース・アンバサダー・ジャパン」のメンバーとして活動しています。GPEとは、世界銀行傘下にある教育に特化した「低所得国が教育課題に取り組むのを支援する基金」です。そのもとで、合計17カ国37人のユース(18歳から30歳までの教育アクティビスト)が活動しています。昨年8月末に、世界で一番最初のユース団体が日本に作られました。その創設メンバーとして携わらせていただいています。

 GPEが設立された経緯としては、1990年代に提唱された、EFA(Education for All)という目標の達成を加速化するために、世界銀行が中心となってFTI(Fast Track Initiative)という国際的な資金協力の枠組みができました。そのFTIの名称が変わってGPEができました。

 教育のためのグローバル・パートナーシップは、パートナー国、NGO、国連機関などを繋げているマルチステークホルダーの銀行で、すべての人に公平で質の高い教育を提供することを目的としています。

 日本のGPEは5人で活動していて、そのうち4人がICU生、もう1人は慶應生です。

Q2. GPEユース・アンバサダー・ジャパンでは具体的にどのような活動を行っているのですか?

 私たちは「質の高い教育のために人々をつなぐ」ことをビジョンと置き、活動しています。GPEのPでもあるパートナーシップ(つなぐ)ことを意識しながら、このビジョンを達成させるためのミッションとして、三つの柱を掲げています。

1、世界の若者の声を代表する。これは世界の若者と日本をつなぐことを目的としています。

2、発展途上国の教育の現状を日本政府に伝える。これは発展途上国と日本政府をつなぐことを目的としています。

3、日本に教育の重要性を広める。これはGPEと日本をつなぐことを目的としています。

 これらビジョンとミッションを元に、大きく分けて二つの活動を行っています。

一つ目は、アドボカシー活動です。アドボカシー活動はミッション2の「発展途上国の教育の現状を日本政府に伝える」ことを目的として行っています。アドボカシー戦略の作成、GPEに関わる国内でのアドボカシー活動、政府関係者と議員が出席する会議への参加などをしています。最近は、国際会議などへの出席も行っています。近い将来、政策提言も行っていきたいと考えています。

 具体的な例としては、3月中旬に行われた国会議員の方々・外務省等とのGPE/教育に関する会議に私とメンバーの一人が出席し、教育の重要性についてスピーチを行いました。また、ここ四ヶ月間くらいは、議員会館に何度か足を運び、さまざまな衆議院参議院の先生方とお話をしています。その際、私たちが作成したパンフレットを手渡すようにしています。そして、7月28日、29日に英国ロンドンで開かれる世界教育サミット(Global Education Summit)に私が出席してきます。そこでは、主に日本が出席する二国間会議に若者の視点として参加することで、より日本の政策決定者に対しても、海外のリーダーに対してもアドボカシー活動ができたらいいなと思っています。

 二つ目は、コミュニケーションの活動です。私はアドボカシーよりコミュニケーションを軸におき、活動させていただいています。最近はオンラインではありますが、他大学の学生とコミュニケーションをとっています。

 ミッション1の「世界の若者の声を代表する」ことを目指して、国際的に他国のユースとつながる取り組みをしています。具体的には、ベトナムのユースにコロナ禍の女子教育の現状に関するインタビューをし、それをYoutube(https://www.youtube.com/channel/UC1L8zgQzzxSfn3gzQhT1SBA)に投稿しました。他にも、ドイツ・韓国と二国間会議を開き、つながることができました。最近では、GESに向けて定期的に17カ国で国際会議を行ったり、ドナー戦略を練るためにドナー国間での会議に参加したりしています。

 また、ミッション3の「日本に教育の重要性を広める」ことを目標に、日本の若者と積極的につながるため国内の若者対象のセミナーやイベントも主催しています。具体的な活動例として、昨年11月にICU生を対象にセミナーを開催しました。他にも、日本のY7*の方々と会議をし、日本の若者の声を届けてきました。また、GPEの職員にインタビューをし、その動画をYouTubeで配信することで、現地で働いている方々から世界の教育の現状を教えてもらい、発信しています。他にも、活動内容やGPEの記事の和訳、ブログをInstagramに投稿するなど、SNSにも力を入れています。

 告知になりますが、現在千羽鶴プロジェクトというものを日本対象に行っています。http://chng.it/zsqKp697 こちらのリンクで賛同を集め、集まった分だけ鶴にし、7月末に私がイギリスに持っていくというプロジェクトです。これもまた、残り5日間で1000人の声を集めないといけないので、ご協力お願いします。

※Y7・・・G7サミット公式会議の一つとして、各国から30歳以下の代表団を募り開催される青年国際会議のこと。

Q3. 2つ目の柱にある、発展途上国の教育はどのような状況なのでしょうか?

 GPEの活動のなかで感じるのは、新型コロナウイルスの影響で教育の現状が悪化しているということです。途上国にはもともと教育とは遠い存在である子どもたちが多くいる中で、コロナで多くの学校が閉鎖し、教育から完全に切り離されてしまっている人が増えています。とりわけ女子教育が大変な状況で、早期結婚・早期出産が日本よりも多いです。コロナで学校が無いから結婚・出産しようという判断をする家庭も増えています。

 つまり、ただでさえ教育がギリギリだった人たちが、さらにコロナによって教育から完全に切り離されてしまっているというのが現状です。子どもたちが子どもたちで居れる期間はその時しかないと思うので、一回でも教育から離されてしまうと戻って来れないというリスクを少しでも減らしたいです。そのためには、世界全体で教育変革が必要だと考えています。

Q4. 日本に教育の重要性を広めるというのは具体的にどのような内容なのでしょうか?

 これは日本の教育についてというよりも、世界全体の教育の重要性について広めようとしています。特にGPEでは基礎教育に力を入れているので、基礎教育の重要性を伝えています。日本にいると当たり前のように読み書きができるようになるので、なぜ読み書きができないと問題なのか、というのは考える機会があまりないと思います。衣食住の重要性は言わずもがな分かると思いますが、教育というのも大切なライフラインになるということをお伝えしたいです。例えば、やっとの思いで病院に行って処方箋をもらっても、文字が読めないから薬の飲み方が分からなかったり、バスの時刻表が読めないから、いつバスが来るのか分からず、ずっと待たなくてはならないということがあります。こういったことは、日本にいては考えないようなことなので、考えるきっかけになれば良いと思います。

Q5. 政府関係者と議員が出席する会議への参加というのは、どのような繋がりで実現したのでしょうか?

 3月中旬に開かれた、GPE主催の対面のセミナーがあり、その時に私たちの上司から、ユースが話す枠が取れたから会議に参加しないか、と打診があり、私が参加することになりました。オンラインの会議にも参加して、各国の外務省の人や国会議員がどのようなことを考えているのか知ることができたのはとても良い機会になりました。どれもGPEが繋げてくれているものです。

また、アドボカシー活動のために国会議員と一対一でお話しするときは、自ら電話・FAXを通してアポイントメントをとっています。

Q6.ドナー国との関係性はどのようなものになっていますか?

 ドナー国というのはつまり、お金を供給する側です。途上国と先進国という二極には分けたくないのですが、役割として、パートナー国(途上国側)のユースリーダーたちは、自分たちの国の教育の現状と教育のサポートの重要性をを各国の首脳に伝えています。私たちは、先進国で生きてきたものとして、日本政府が世界の教育に目を向ける必要性を伝える必要があります。そうした時に、どうすればドナー国がお金を出してくれるのかということを考えるために、ドナー国間での会議を行っています。

 国際会議と言うと規模が大きく感じますが、大学の授業のように、何をやったらドナー国はお金を出してくれるのかな?とアイデアを出し合うようなことを行っています。

Q7. 様々なSNSで発信をしていると思いますが、それぞれで差別化は行っているのでしょうか?

 インスタグラムとツイッターはユースで運営しています。YouTubeはGPE Japan PRというGPEの本部がPR会社に委託して運営しているので、ユースは運営していません。インスタグラムは私たちの声の中でもフォーマルなものを発信していて、ブログのシェアなどをしています。ツイッターは国会議員などへのアドボカシーを目的に運営していて、インフォーマルにつぶやきをしています。

Q8. いつからその活動を始められたのですか?

活動を始めたのは2020年8月21日です。1年生の夏休みの時です。

Q9. GPEの活動を始めようと思ったきっかけを教えてください。

 正直な話、計画的に始めたものではありませんでした。大学一年生の一学期、予想もしていなかったパンデミックによって、毎日グダグダ生活を送っていました。 その時、春学期にお世話になった西村幹子教授から、GPEのインターンの募集がメーリングリストを通して送られてきました。「暇だしチャンレジしてみよう!」という軽い気持ちで応募したところ、案の定インターンは落ちてしまいました。しかし、その後履歴書を読んでくださった、西村教授とGPEの上司の方が数人選んでくださり、ユースボランティアとして活動を始めたという感じです。インターンは事務作業など内部に関わることを行い、ユースボランティアは学生の立場から発信をする、という違いがあります。

Q10. 始めた時はどんな気分でしたか?

 混乱というか、「全くわからない」状態でした。 正直、GPEに入るまでGPEの存在など知らなかったし、知識が足りないあまり、上司に質問すらもできませんでした。なので、GPEとはどのような機関なのか、説明を受けても理解できず、混乱していました。日本に事務所がなく、上司もフランスにいるため、とても不安な気持ちが大きかったです。

Q11. 活動したことでわかったこと、気がついたこと、ぜひICU生に知ってほしいことはありますか?

 大きく三つあります。

 一つ目は、国際機関は聞こえるほど遠い存在ではないということです。私も正直「世界銀行の傘下」と聞いた時、ビビりました(笑)。 しかし、私たちが提案したアイデアはかなり取り入れてくださり、私たち主体で進めさせていただくことも多いです。トップダウンではなく、自分たちの声が反映され、かなり裁量権もあります。

 これが二つ目につながるのですが、社会を変えることは難しいが不可能ではないと思っています。私たちは、日本政府の教育におけるODAの資金配分を考え直して欲しいということをアドボカシー活動で伝えています。その中で、私たちがGPEについてY7の方々に伝えたことで、Y7がG7にGPEについて言及をしてくださいました。最終的には、G7の声明にもGPEについて記載があり、きちんと私たちの声が反映されていることを実感しました。教育・GPEだけでなく、皆さんがそれぞれ問題意識を持っていることを熱意を持って伝えれば、道のりは長くとも社会は変わっていくのだと思っています。

最後に、若者の力です。国会議員の先生方が快くお時間をとってくださることも、各会議に出席させていただけることも、それだけではないと信じたいですが、若さが理由の一つです。多くの人たちが私たちに期待をしてくださり、言い方は悪いかもしれませんが、良い投資として私たちに時間・労力を割いてくださいます。学生に与えられたこの期間を、全力で利用していっても良いのではないかなと思っています!

※ODA・・・政府資金で行われる、開発途上国などに対する援助・協力。

Q12. 政府や議会、国際会議というと、学生からは遠い存在、自分たちの意見が直接的に反映されるということが想像しにくいイメージでした。

 そうですよね笑 私も普通の大学生だし、誰にでもできるんだよ、ということを分かっていただけたら嬉しいです。

Q13. アドボカシー活動を通して「ODAの資金配分を考え直してもらうこと」を伝えているとのことですが、日本政府がODAの基礎教育分野の資金配分を増やすことで、どのような良い影響があるのですか?

 日本がODAの教育分野に出してる額は世界で4位と多いのですが、そのうち51%は高等教育に出していて、基礎教育に対しては10%ほどしか支出していないんです。高等教育に支出することで、世界のエリートになる人たちへの教育援助が可能になります。そこを重要視するのもわかりますが、大切なのは大衆が教育を受けることだと思います。

 日本のODAは終わらないODAだと思っています。支援は本当は終わりがなくてはいけない、しかし、日本のODAの現状が続けば、基盤からの強化、立ち上げができません基礎教育への資金配分を増やし、大衆が識字率を上げることで、国の基盤を強くすることが大切なのではないでしょうか

Q14. どんな時にやりがいを感じますか?

 私はコミュニケーションに力を入れているので、成果が数値で見えやすいです。Instagramのフォロワーが増えた時、普段より「いいね数」が多かった時、YouTubeの視聴回数が少しずつ伸びて行った時に自分の声が届いてるんだな、と喜びを感じます。個人的な話ではありますが、祖母が1週間に一回は私のYouTube動画を見て、何度もフィードバックを送ってくれることもとても嬉しいです。

 また、開発学に関して大学で学んで、それをすぐに実践できる環境があることをとてもありがたいと感じています。

 何よりもGPEユースジャパンのメンバーといる時が本当に楽しいです。正直簡単なことばかりではないですが、GPEに入ったことで、今では家族のように仲のいい、彼らと出会えたことが一番の喜びです。

Q15. 頻繁に活動されているイメージですが、学校生活との両立はどうしていらっしゃるのですか?

 テスト期間などは、GPEのメンバー5人で協力して仕事を分担しています。メンバーみんな学生なので、みんなお互いの大変さを分かっています。あとは気持ちの整理の問題で、GPEに集中するときと学業に集中するときのメリハリをつけるようにしています。

Q16. 高校時代は生徒会長をなさっていたという大竹さんですが、高校時代を含め、今まで大竹さんが経験してきた過去は、今の活動にどのような影響を及ぼしていると思いますか?

 全ての経験が生きていて、今やってる経験も全て今後にも生きていくんだろうなと思います。教育に関心を持ったのは、イギリスに住んでいた経験からで、そこで教育の楽しさを学びました。イギリスに住んでなかったら教育に対して興味を抱かなかっただろうと思います。また、生徒会長だったのもあり、人前で話すこと、大人と話すことが好きです。一生懸命なにかにパッションを感じて、やり抜くという経験が、今に生きているなと思っています。

Q17. 社会に訴えたいこと、伝えたいことはなんですか?

 世界の教育変革に取り組むことが、世界の未来を明るくする鍵だと思っています。教育はあらゆる社会問題を解決することに繋がります。ジェンダー平等、環境保全、人権保護など。自分が生きたいと思う世界にしていくためにも、その中でなりたい自分になるためにも、教育は必要です。私たちは1+1=2を学ぶためだけに教育を受けているのではないと思っています。教育とは知識を通し、自分の権利を認識し、それを訴えるパワーを与えるものです。自分の意見を共有することで、同じ権利を有する人と繋がり、連帯し、自分が安心できるコミュニティを見つける事ができます。衣食住と違い、生きるために必要ではないと思われがちの教育ですが、生きるために大切なスキルを学ぶライフラインであるということを考えて欲しいと思います。

 世界では常に緊急事態が起きています。災害、紛争、そしてパンデミック。皆教育が大切だと分かりながらも、緊急時に必要なものに囚われすぎてしまい、教育はいつも「ただそこにあるもの」扱いをされています。しかし、国を立て直すためにも、世界の基盤を作るためにも、教育は必要です何かが起きてから供給するだけの支援ではなく、長期的に強い国、世界を作っていくためにも、国際的に教育変革/改善に取り組む必要があると思っています

Q18. 最後に、これからやっていきたいこと、挑戦して見たいことなどがあれば、教えてください!

 まず近い将来、7月28日、29日にロンドンで世界教育サミット(GES)が開かれます。私自身、GPEで初めての海外出張でもあり、5年に一度しかない重要なサミットでもあることから、かなり気合が入っています。日本の若者の声をきちんと代表できるよう、残り数週間きちんと勉強をし、準備をしていきたいと思っています。

 今はGESで頭がいっぱいなのですが、それが終われば、世界・日本の未来を見据えて、GPEユースジャパンを築いて行きたいと思っています。これからは実際に5年後、10年後、20年後世界の教育状況がどのようになっていて欲しいのか、それにおいて日本にはどのような働きをして欲しいのか、ということを考え、そこに辿り着くまでのロードマップにGPEユースジャパンがのれるように、組織づくりをしていきたいです。

 また、個人的には、そこにおいて自分はどういう立ち位置で携わりたいのかを考えていく必要があると思っています。自分が将来どのような世界で生きたいのか、そのためにどのような社会を作り上げないといけないのか、どのような人と一緒に活動していきたいのか、そのために何を学んで体験すべきなのか、さらに考えていきたいです。

【千羽鶴プロジェクト】ご参加はこちらから!:http://chng.it/YXDWGYykHS

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