起業家精神を教養として届けるーENTREPの創設者である小楠泰雅さんにインタビュー!



ICONfrontインタビュー第23弾では、ENTREP(アントレップ)で活動されているID23の小楠泰雅さんにお話を伺いました!

起業家精神とはどのようなものか、どういった経緯でENTREPを創設され、今に至るのかについて語っていただきました。


Q1.自己紹介をお願いします。

 ENTREPという学生団体の代表を務めながら現在はイギリスに留学しています!留学先では起業家精神育成教育について勉強しています。起業家精神教育というのは起業家の考え方や精神を人々が身につけるためにはどうするべきか、どうあるべきかを考えるものです。

起業家という言葉は「マネタイズすること」や「お金儲け」との結び付きが強い反面、僕の考える起業家精神は情熱や創造性などの土台となる考えに焦点をあて、その考え方を身につければより自己実現がしやすくなるのではないかというものです。全員が起業家になる必要はない!ただ、起業家精神は身につけるべきだと思っています。これはのちにENTREPの軸となる考え方に繋がっていくのですが、現在はこの起業家精神教育を勉強して形にしていきたいと思っています。

Q2. 現在イギリス留学中ということですが、留学先を選んだ理由や留学してみて感じることをお聞かせいただけますか?

 現在イギリスのUCL(University College London)に留学中で、教育分野において世界一位だからというのがUCLを選んだ理由のひとつです。世界最高峰の教育学とは何なのかを勉強するためにUCLにきました。授業の半分が自由選択の授業なので、経営学と教育学の授業を履修しています。経営学の授業では起業家を志す人が集い、スタートアップやプロダクトを考案する授業があります。この授業ではスタートアップのためのマネタイズの仕方も学ぶので、このコンテンツを組み合わせればENTREPの活動にも活かせると思っています。

一つ、イギリスにいて感じるのは起業に対する意識の違いがあるということです。中高生の頃から 「会社を作り始めた」という人もいますし、大学の学費を払うために起業してる人もいます。生活基盤の選択肢の一つとして起業が入っていると思います。周囲にも面白い事業をやっている人がいます。例えばワクチンの供給を行っている大学生がいて、政府とワクチンを供給するサプライヤーの仲介役を担っているそうです。日本でいうバイトのような感覚で起業してる人もいてかなり驚きました。日本だと大半の人がいい大学に入って、その後就職をする、という大きなレールに乗るように感じています。日本の就職までのルートにも強みはありますが、イギリスの起業を含めたキャリアは日本のそれとは価値観が違っていて、新鮮で面白いです!。

Q3. ENTREPでは、具体的にどのような活動をしているのですか?

 まず、ENTREPでは活動の軸となるコアバリューとサブバリューを決めていて、それらを元に、イベントの主催やインタビュー、ポッドキャスト、記事の執筆などを行っています。

コアバリューは「起業家精神を教養として届ける」で、起業家のもつ考え方ーやりたいことを知っていることや失敗を肯定的に考えることなどーを教養として普遍的に身につけることで、自分の「したい」を現実にするための土台をつくるという意味です。

 サブバリューは4つあります

1つ目は” I think, therefore I do” (理想を現実にする人)

2つ目は”Fail fast, Fail Forward” (七転び八起きの精神)

3つ目は”Be a comple-mentor” (1+1=3の関係)

4つ目が”Reveal your true art” (溢れ出す独創性)です。

 これまでに様々なイベントを主催してきました!メンターとの関係性を考えるもの、メンタルヘルスについて考えるものなど、起業家精神について扱うのでイベントで取り扱う範囲が広く、僕はその抽象さが好きです。

最も印象に残ったイベントは、一番最初に開催した「The mindset of a successful entrepreneur」というイベントです。2020年2月に開催したものが一番最初のイベントで、韓国の500Startupのボードメンバーとアメリカで起業した経験のある女性をゲストとして呼び、アラムナイハウスで講演を開きました。このイベントがきっかけでENTREPを作ろうと思いました。

 当時は「起業」という言葉 はあまり身近ではありませんでした。でも「Slush Tokyo」というスタートアップと起業家を繋ぐイベントにボランティアとして参加した際に、若者の起業家達の創造力と目の輝きに衝撃を受けました。それが、僕が最初に「起業」について衝撃を受けた時です。他にも僕が起業家精神について興味を持ち始めたエピソードがあります。それは、僕が主催した「The mindset of a successful entrepreneur」でゲストの起業家の女性とイベントを作っていく中で、「起業家精神とは何か」と尋ねたところ、「あなたのやっている『これ』だよ。自分の考えているものを形にしていく、そしてそのプロセスを楽しんでいくっていうのが起業家精神そのものだよ。」と言われて、二度目の衝撃を受けました。

 「起業家にならなくても起業家精神は身につけられる」ということを学び、イベントを通して起業家精神に興味のある人と出会ったことからコミュニティを作りたいと思い始めました。そこで社会学のキム・アレン教授にアドバイザーとなってもらい、ENTREPを作っていきました。教授との出会い方は意外にもシンプルで、一年生の春にオフィスアワーに赴いたところ、起業家精神について意気投合し、学内でもコミュニティーを作ろうという風に話が進んでいきました。

Q4. ENTREPは、イベントがきっかけで始まったとのことですが、いつからENTREPの活動を始められたのですか?

 2019年10月に最初のイベントを検討し始め、イベントを作り始めたのが2019年11月、JICUFの補助に応募したのも同時期です。11月以降にアクティビティの補助の受給が決まり、そこからENTREPの活動が徐々に始まったと認識しています。2020年3月ごろに団体として始まりました。

 最初から1人で活動していたわけではなく、友人に恵まれていたのもあり、僕を含めて3人のメンバーが集まりました。その3人が最初のチームとして少人数精鋭でイベントを行って成功し、その後団体を作るにあたって公募はせず、知り合いから必要な枠を埋めていきました。みな子さん(https://iconfront-icu.org/2020/08/09/hultprize-icu-socialbusiness/)も初期メンバーの1人です。今はID 23~25含めて13人のメンバーで活動していて、23(3年生)が5人、24(2年生)が1人、25(1年生)が7人というメンバー構成でティール組織を目指して、日々活動を行っています。

Q5. 始めた時はどんな気持ちでしたか?

 始めた時はとにかく楽しかったです。自分の手で模索することにやりがいを感じました。ICUで起業家精神についてのイベントを行うことも、誰に何を届けるかをということを一から考えることも初めてでした。ゲストスピーカーの方とも一緒にイベントの方向性を考えて形にし、価値として届ける事で、「良いイベントだった!」「成功だったね!」と言われることが嬉しかったです。

Q6. どんな時にやりがいを感じますか?

 非日常的な体験をする時、Hands-onで(実際に手を動かして)何かを行う時、新しく価値を作りそれを届けた時の3つがあげられると思います。これも、ある起業家の人生設計の仕方にのっとって自分で出した答えです。

 1つ目の非日常的な体験に関しては、人間何事にも慣れてしまうと、当たり前のことを当たり前に感じることもできなくなってしまうので、日々何かしら新鮮な体験をすることを心がけています。

 2つ目のHands-onに関しては、僕はデスクワークよりも、自分で手を動かして何かを作っているときの方が喜びを感じます。見れるものにしろ、触れられるものにしろ、ものを作るプロセスとアウトプットが好きで、やりがいを感じます。

 3つ目の新しく価値を作りそれを届けた時というのは鉄板ではありますが、自分が作ったものを、他の人も価値あるものと感じられるようにして届ける、という工程にやりがいを感じます。

Q7.活動する上で、大切にしていることや譲れないことはありますか?

 団体として譲れないのは、コアバリューの部分です。これまで色々な団体を見てきて、自然崩壊していく団体も中にはあり、それらに共通するのは、活動に軸がないことや、ノリで初めてノリで消えていくということがあげられると思います。それを踏まえると、何をする団体なのかは明らかにしておくべきだと考えています。同時に、その軸はアップデートされるべきだとも思います。

 個人的には、「面白いかどうか」も譲れないポイントです。作っていくのは自分たちで、面白くないとやっていられないというのもありますし、見ているのも同じ学生なので、楽しんでもらうことが一番だと思っています。

Q8. 活動を通してわかったこと、気がついたことはありますか?

 「起業すること」を経験した人が周りに少なく、起業することに関しての情報があまり普及していない現状があります。今まで、起業することを「脱サラしてパン屋になること」、のように大きなハードルとして捉えられていましたが、今は学生でも起業することができますし、このまま起業することのハードルを下げていきたいという思いがあります。若い頃に失敗する方がリスクも少ないし、助けてくれる人も多いです。また、たくさんのICUの学生がボンヤリと起業を考えているのではないかと思います。起業が選択肢の一つとして捉えられ始めているというのはとても嬉しいです。しかしその反面、実際に起業のためのビジネスの勉強をしているのも一握りですし、自己内省から発展して実際に行動するという部分がまだ不足しており、ICU内ではそこに関する機会が少なく、ビジネスを毛嫌いしている傾向があると思っています。

 でも僕は全員が起業家になるべきと思っていません。「どんな職業か」よりもそれを決めた過程が重要だと思います!起業をするかしないかを考えた上で、起業しないという選択をすることは、自分のやりたいことと、今の日本の仕事のあり方を天秤にかけて考えているということだからです。今の日本では「就活」をするのが王道ルートで、それに乗っかるか乗っからないかは自分次第だと思っています。どういうことかというと、ルートがあるからといって考えずにそれに乗るのではなく、焦らず自分の中のベストな選択肢を見定めるのが大切だということです。それが結果的に、日本の就活のあり方というのを少しずつ変えていくのではないかと思います。

 起業をしなくても、起業家精神があると自己実現しやすい、ということも伝えたいです。僕は、日本では人生の中で大きく分けて2回、自分について考える機会があると思います。まず、大学入試の時に、自分はどこにいきたくてそこで何をしたいのか考えます。次に、就活する上でまた同じように考えます。でも同時に、本来であればその2つの機会に大きく頼るべきではないとも思っていて、常に考えておく必要があると思います。以前あるイベントに参加した際に、登壇された起業家の方が「みんな旅行の予定決めるよね?なのになんで人生の予定決めないんだろうね」とおっしゃっていました。これに感動して、やることを旅行の日程のように決めたら、意外と人間もっと楽しく生きれるんじゃないかと思っていて、直近のことに関しても、旅行のようにやりたいことについて日々考えて共有するのもいいんじゃないかな、と感じています。

Q9. ビジネスの勉強会とかもやられているのですか?

 意図的に勉強会はしないようにしています。理由としては、僕たちの団体のターゲットは起業を実際にしたいと考える上澄みの2%ではなくて、どちらかというと起業に興味があるというような真ん中50%くらいの層だからです。届けたいことは起業家精神を教養として身につけることなので、起業による利益目的ではありません。なので、マネタイズや利益関係のことはイベントとしては基本的に行っていません。

Q10. 泰雅さんご自身の大学卒業後のプランを教えてください。

 個人的には今漠然とさせています。一つには絞っていないです。僕の人生毎年ブレブレで、大学入学前は先生になることもいいかなと思っていましたが、家庭教師のバイトをしたり学内の教授たちと話すなかで、これはちょっと違うなと思ってやめました。こんな感じでドアを開いては閉じていくような過程を繰り返しているので、これといって今は決めていません。ただ、教育に関わりたいとは思っています!その理由として、自分が先生のように「教育」を通して人の成長を見るのが好きなのと、形は何であれ教育が人を形成する上で重要だと考えているからです。

Q11. “起業家精神”を具体化するとはどういうことで、どのような要素が含まれていると感じますか?

 僕は今あえて決めていないです。一つの答えはなくて、可能性として考えられるものを、周りの人から聞いてから決めたいと思っていて、ここ2年くらい聞き回っています。起業家精神とは何なのかを探求し続けていて、そのために留学もしています。ただ、要素という点においては大体決まっていて、リーダーシップ、クリエイティビティ、グリット(grit)レジリエンス(resilience)、情熱というのが、EntreCompというヨーロッパでされた研究などでも明らかにされています。

Q12. 社会に訴えたいこと、伝えたいことはなんですか?

 僕個人が、社会というよりは隣の人に伝えたいようなことなのですが、起業家精神の普及は大切だということです。自分がどういう人で、どういう価値観がある人かをわかっている人はとても強い。「自分」を持っている人は輝いてるなと思います
比較されることが多い現代社会、自分のやりたいことと人のやりたいことを混同しがちな今に、自分自身の幸せを追求することが大切なのではないかと思います。

__(Iconfrontメンバー)起業家精神ってただビジネスだけの話じゃなくて、自分のあり方を追求していくそういう側面も持っているのだと実感しました。

 仕事のあり方の変化に対応していくことの重要性も伝えたいです。一昔前までは副業をすることなんて考えられませんでしたが、今は転職、副業などいろんな選択肢がありどんどん受け入れられています。生きる上で変化はつきもので自分も変わり続けなければいけないし、その変化を拒まないことが大切なんじゃないかなと思います。

Q13. これからやっていきたいこと、挑戦してみたいことなどがあれば、教えてください!

 個人としては、起業家精神を今以上に体系化して、より多くの人が身につけられるようにしたいです。団体としては、「ICUといえばENTREP」と言われるまでに多くの内部と外部の人に価値を届けられるような団体にしたいし、起業家精神と言ったらあの団体だ!と思ってもらえるようになったら楽しいなと思います。今はそれに向けて少しずつステップアップできてるんじゃないかなと思います。また、大学生活の活動から得たことを、多くの人にとっても意味のあるものにできるように体系化していきたいです。ただ、起業家精神が体系化されてもその後に何を成すかは結局その人次第であることは今持っている大きなモヤモヤです。

Q14. 今その目標への過程のなかで見つけた課題などはありますか?

 ENTREPとしての大きな課題の一つはコミュニティづくりですね。まずICUの学生自体の母数が少なく、起業に興味がある人も少ない中で、その中で本当に起業家精神に興味がある人はもっと少ないです。ターゲットが広い分、全員に当てはまるイベントやコンテンツをどうやって作っていくかが解決していきたい課題です。

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