ブログ第6弾|ICU生は別にそこまでジェンダー問題が好きなわけではない ー服部翼
執筆者情報
ID24 服部翼(はっとり つばさ)
専攻:社会学、法学
所属団体:Voice Up Japan ICU共同代表、硬式野球部キャプテン
Instagram:@tsubasa_activist @voiceupjapan_icu
Twitter:@TsubasaActivist @VoiceUpJapanIC1
ICU生は別にそこまでジェンダー問題が好きなわけではない
「明日の大学」の理念を掲げ、学内にジェンダー研究センター(CGS)を設置し、オールジェンダートイレの設置、メジャーとしてジェンダー・セクシュアリティー研究が選択可能な制度など、ジェンダー問題に関してICUはとても積極的な取り組みを行なっている。その精神は様々な授業に反映されており、ICUには多くの場面でジェンダー問題に関して考える機会がある。ICUはそんな大学だ。
そんなICUにいる生徒は、さぞかしジェンダー問題に興味関心が高いと思うのだが、実際はそうでもない。これはICU生ならどこかしら感じ取っているのではないかと思う。グリーンウォッシュのように、なんとなくジェンダー問題に興味関心を持つという節が多いことは否めない。これは、どの社会問題にも言えることなのだろうが、ICU生におけるジェンダー問題も例外ではないのである。
でも、こうしてなんとなくジェンダー問題に興味を持ったICU生の末路を皆さんは知っているだろうか?
多くのICU生が、興味関心を失っていく。
理由は人それぞれたくさんある。張り切って授業を取ってみたら、難しすぎたり、理論的で、どこかハッとさせられるものがない。ディスカッションの場で、みんながなんとなくの興味関心で話しているから同じようなことしか話せず、刺激が足りない。ジェンダーに深く精通している人と話すと、その勢いに圧倒される。いろんな方法で、ICUでなんとなく興味関心を持った人は潰されていくのである。
ものすごくもったいない。せっかく興味関心を持ったのに、潰されるなんて。ジェンダー問題は日常の話だ。勉強してなくても、日常生活をしていればそこらじゅうに転がっている。
でもなんとなく興味関心を持ったICU生はみんな、LGTBQ+や男性の特権、女性の社会進出くらいのトピックまで進んで、そこで終わる。当然どれも大切な話なのだが、もっと日常レベルで考えれば、興味関心を持ちやすいし、実は自分にも深く関係しているんだってわかるのに。
悪気はなくても、日常で無意識のうちに差別的言動をしてしまうことを「マイクロアグレッション」という。運動部などに多い男性だけの空間を「ホモソーシャル」という。家族や社会の構成は多くが「家父長制」に縛られている。セックスの方法を一歩間違えたら「性暴力」になる。性暴力にならないように、ちゃんと相手の意思を確認することを「性的同意」という。これを読んでいて、男性がセックスを誘う側だと思ったそこのあなたは「有害な男性像」に縛られているのかもしれない。このように日常生活の様々な場面でジェンダー問題は見えてくる。シスジェンダーとかSOGIとかの概念を知ることは大切だけど、問題が存在するのは日常生活の中なのだから、もっと日常生活に目を向けなければ、ジェンダー問題を深く知ることはできない。
詳しくはぜひVoice Up Japan ICUのインスタグラムなど、発信を行っている団体の記事を見てみてください。もしくは、後日YouTubeに投稿される僕のTED talkも見てみてくださいね。
みなさんは学術的な部分をなんとなく知って、他人事のように感じ、様々な理由で次第に興味を失っていく。でも、実はジェンダー問題って誰もが何かしら苦しめられていて、絶対にあなた自身にも関係のあるものなんです。
ここまでジェンダー問題について用語などを交えながらお話ししてきましたが、ここで、1つ衝撃的な事実を教えましょう。
僕は今まで一回もジェンダーの授業を取ったことがありません。
というのも、僕はその”なんとなく”ジェンダー問題に興味関心を持った、まさに当人でした。そして、僕の場合は入学前の体験授業のような機会にジェンダーのクラスを取り、その時点で興味関心を潰されていた人間なのです。多くのICU生と同じく、僕自身もなんとなく持っていた興味関心を潰された人なのです。
では、どうして僕が今、ジェンダーアクティビストとして、強い興味関心を持って活動しているのか。それは、まさに先述した「ジェンダー問題を日常で考える」ということができる環境があるから。その環境こそがVoice Up Japan ICUだった。
Voice Up Japan ICUはジェンダー問題などの社会問題に声を上げる団体だが、ジェンダー問題を勉強したいからという理由で入るメンバーも多くいる。このような団体でジェンダー問題について勉強すると、自然とその団体の主催するイベントなどに参加し、知識を得ることができるのみならず、日常ベースでジェンダー問題を考えるということができるのである。
だから、これを読んでくれているあなたに、ジェンダーに興味関心を少しでも持っているなら、ジェンダー系の団体に入ることを勉強の1つの方法としておすすめしたい。先述の理由で、授業では興味関心をつぶされることが多い。僕もその一人。でも団体なら、興味関心を潰されずに、ジェンダー問題という大切な社会問題について知ることができるだろう。特にVoice Up Japan ICUは、アクティビストの他にも勉強のために入るというメンバーが多いからこそ、自然な形でジェンダー問題について知ることができる。他にもICUにはICU Prismという団体も存在する。これらの団体に入ることも学びの1つの形だと思ってほしい。団体に入る=表に立って何かをやるという訳ではない。少しの興味関心があれば十分で、みんなその少しの興味関心から始まるものなのです。
ICU生は、そこまでジェンダー問題が好きなわけじゃない。なぜなら、少しの興味関心が潰されてしまうことが多いから。でも、心のどこかで興味関心を持っている生徒は多いということも事実。実はあなたも、心の中で興味関心が、くすぶっている一人なのかもしれませんね。せっかくの興味関心をなくさず、僕とあなたと、みんなでジェンダー問題の解決に向けて進んでいきたい。なぜなら僕もあなたも、ジェンダー問題に苦しむ当事者であり、ジェンダー問題を生み出す犯人だから。ぜひご自身の興味関心に従って、行動してみてください。ジェンダー問題に限らずとも、最初の一歩はその小さな興味関心から出てくるものです。僕たちはいつでも、みんなが仲間になってくれることを楽しみにしています。