Womenomicsの生みの親、MPower Partnersでご活躍のキャシー松井さんにインタビュー!

今回のICONfrontインタビューでは、1986年〜87年にロータリーの奨学生としてICUに在学されていたキャシー松井さんにお話を伺いました。

キャシーさんが2021年に共同創業されたMPower Partnersでのご活動を中心に、多くのICU生が関心をもつ、ダイバーシティなどのトピックについて、WomenomicsやESGの観点から教えていただきました。


キャシー松井 プロフィール
MPower Partners ゼネラル・パートナー

ゴールドマン・サックス証券会社、元日本副会⻑およびチーフ日本株ストラテジスト。1999年に提唱した「ウーマノミクス」の概念はその後広く世界に浸透し、日本政府も女性活躍推進を経済成⻑戦略として打ち上げるに至った。多様性、コーポレートガバナンスと持続可能性を経済合理性の観点から分析し、多くの企業や投資家に影響を与えている。2020年に『女性社員の育て方、教えます』を出版。ハーバード大学、ジョンズホプキンズ大学院卒。


Q1. 最初に自己紹介をお願いいたします。

キャシー松井と申します。日系二世アメリカ人で、両親は奈良県出身で戦後に船に乗ってアメリカの西海岸カリフォルニア州に渡り、アメリカで農業をやっていました。私は両親が向こうに渡ってから一年後に生まれたので、国籍はアメリカです。アメリカで生まれ育ちましたので、家の中では日本語と英語が日常会話でした。

東海岸のハーバード大学を出て、卒業式の直後、ロータリー奨学金をもらって他の13人の奨学生と一緒に集中的にICUで日本語をまず勉強しました。それが、短かったけれど私のICUでの経験です。はっきり覚えていないんですけれども、第四女子寮で過ごして、コロナの前に同窓会があって寮を拝見しました。食堂が変わっていましたね。私の最初の日本はICUのキャンパスでしたので、とても思い出深い時期でした。

Q2. 現在MPower Partnersでされている活動は、具体的にどのようなものですか?

MPower Partnersは、2021年5月に立ち上げた日本初のESG(環境・ソーシャル・ガバナンス)重視型のグローバルベンチャーキャピタルファンドで、いわゆるスタートアップに投資しています。ESG重視型は、スタートアップに環境あるいはソーシャルあるいはガバナンスの要素を実装することを手伝うという意味です。

日本経済は世界三番目という大きい経済なのに、スタートアップやベンチャーエコシステムがまだまだ小さいです。不思議なのは、すごく才能のある人材がたっぷりいる国、資本あるいはお金がたっぷりある国、技術もたくさんもっているのに、たとえばユニコーン*と呼ばれる企業がなぜかスタートアップの世界ではまだまだ少ない。もちろんあると言えばあるけれど、国としては相対的にまだまだ少ない。

何が抜けているのか、何が問題なのか、というところで私とファンドを立ち上げた長年の友人の村上由美子さん、関美和さん、は共通的な問題意識を持っています。

この問題の解決方法としては、より多様な考え方を組み込まないといけないところと、グローバルです。日本のスタートアップはそれなりに規模があるので、日本の中で成功すれば十分です、という考え方はもちろんあります。ですが、もっとグローバルに、もっとアンビシャスに考えられるかなと思います。

特に私たちのファンドのミッションの一部としては、日本のスタートアップエコシステムをもっと多様な要素、グローバル化できるかなと思っています。

たまたま女性三人が立ち上げたファンドで、別に女性起業家だけに投資しているわけではありませんけれど、今までの既存のベンチャー投資業界の中では割と珍しいほうですね。

*ユニコーン企業
「企業価値が10億ドル(約1120億円)以上の未上場の創業したての企業を、めったに姿を見せないという伝説の生き物である一角獣になぞらえて「ユニコーン」と呼ぶ。1桁大きい100億ドルを超える企業も増えている。」宿輪純一,2018,「ユニコーン」,『情報・知識imidas』(https://go.exlibris.link/K0S2B3xH,2022年7月4日取得).

“A start-up company in the technology sector that quickly achieves a valuation of $1 billion or above. Typically, such companies use venture capital to fund very rapid growth, in the hope that acquiring high visibility and a large market share will lead to profits.” Law, Jonathan, 2018, “Unicorn,” A Dictionary of Finance and Banking (6 ed.), (https://go.exlibris.link/xvSnH2gp, retrieved July 4, 2022). 

Q3. MPower Partners以外の活動についても教えていただけますか?

一つ大きい企業としては、ファーストリテイリング社の社外取締役を務めております。いわゆる上場企業のボードメンバーに去年の12月に就任しました。

色々な非営利団体の活動もしていて、一つはアジア女子大学。バングラデシュにある12年前に開校した女子大学です。日本とかアメリカでは女性の高等教育は当たり前ですけれど、当たり前じゃない地域、国々の女性の学生のために創られた大学です。現在19か国から、南アジア、中東、最近はアフガニスタンの学生さんも入っています。すごく優秀な学生さんが来ていて、そういう人たちに教養学、リベラルアーツの教育を与えています。その大学の支援、財団の理事を長い間務めてまいりました。

あとは非営利団体での活動や、長年womenomics*の関連活動は常にずっとライフワークのようにやっています。

*womenomics is a concept that “out of economic necessity or as a result of lifestyle choices, an increasing proportion of Japanese women are actively participating in the workforce and becoming a very important source of income and consumption growth” (https://www.goldmansachs.com/insights/investing-in-women/bios-pdfs/womenomics-pdf.pdf, 2022年7月8日取得)

*womenomicsとは、経済的な必要性や生活上の選択の結果として、より多くの女性が働き、収入と消費の拡大に重要な役割を果たすことを言います。(同上・訳)

Q4. MPower Partnersを始めたときはどのようなことを感じられていましたか?また、MPower Partnersを始めるきっかけなどがありましたら教えてください。

ゴールドマンサックスに26年間、その前はバークレーズ証券に4年間、いわゆる証券会社、投資調査の仕事を30年間やってきたので、そろそろ違うことをやろうかなと結構前から思っていました。たまたま先程申し上げた2人の友人と私は、同じ年同じ月に生まれたんですね。由美子さんとは同僚でしたし、美和さんは実はゴールドマンサックス時代のお客さんの一人だったんですよ。

三年ぐらい前かな、毎年三人集まって誕生日祝いをやって話をするんですけど、この年で人生の残りでどうしようかなという悩みとかを色々ディスカッションして、もっと明るい日本の未来を描くために、私たちができることはなんだろうと。

三人とも長年金融業界でキャリアを積んできまして、その中でダイバーシティやガバナンスへの関心がずっと高かったし、経験と知見もありました。もちろん三人のもう一つ共通点だったのは、公開株、つまり大企業を中心とした世界にずっと属していました。そこで、企業の考え方や行動を変えるのは簡単でないと長年感じていました。

たとえば、いま世の中GAFA*と呼ばれるすごく新しいビジネスモデルが出てきている中で、もっと日本からも新しいビジネスモデルが出るはずなんですけど、なかなか少なかった。だから、金融xESGxスタートアップで何かできることがないか、ということになり、よし!とESG重視型のベンチャーキャピタルファンドになったんです。

いきなりGOとできた訳ではなく、やはり色々な人たちのアドバイスを受けたり、相談相手になってもらったり、ものすごく色々な方々のアドバイスやガイダンスをいただいて、最終的にやりましょうとなったんです。

やったことはないことでしたし、できるか不安はいっぱいありました。けれど、一人ではなかなかできないことですので、やはり三人で一緒に協力しあってできたことかなと思います。

*GAFA
「グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンというネット上のプラットフォームとなっている4大企業の頭文字を取った造語。」(gafa/2021 [欧文略語/2021 ] (2002) https://go.exlibris.link/T1LWm5yK, 2022年7月8日取得)

“Amazon, Apple, Facebook, and Google currently are the four dominant platforms in the digital markets industry and consequently, have the greatest impact on the community of users. Collectively known as GAFA, these four digital platforms provide a variety of services built on transnational infrastructures that sustain their leading positions and create a gulf in relation to any new entrants in their markets.” (Rosa, F. R., & Hauge, J. A. (2022;2021;). GAFA’s information infrastructure distribution: Interconnection dynamics in the global north versus global south. Policy and Internet, 14(2), 424-449. https://doi.org/10.1002/poi3.278, 2022年7月8日取得) 

あともう一つ共通点なのは、三人とも親が起業家なんですよ。

関さんの実家がチロルチョコ(もともとは松尾製菓)、由美子さんのお母さんが48歳で五人の子どもを育ててから島根県でドラッグストアを開業したんですよ。私の両親は、農家です。アメリカで最初はとても苦労しましたが、最後はアメリカの最大手の蘭の生産者になりました。だから三人とも親の背中をずっと見てきたんです。起業すること自体がどんなに大変なのかを自分の目で見てきたので、すごく尊敬してますね。簡単なことでは全くないけれど、挑戦することをすぐ目の前で見てきましたから。

わたしたち三人ともずっと大きな組織で働いてきましたから、自分たちも親のような道を辿るのはどうかという夢も三人とも持ってましたよね。

あとMの意味は、松井、村上、松尾(関さんの旧姓)なんです。

(ルーツからご縁のある三人だったんですね)

その2人がとても私の力になってくれてますし、信頼だけではなくこの二人を愛してますので。あと、みんな子どもがいますので、その辺の悩みも共感できますし。 

左から関美和さん、キャシー松井さん、村上由美子さん
(MPower Partnersウェブサイトより)

Q5.先ほども少し触れられていましたが、大企業のトップにいらした時と、自分で起業した時ではどのような違いがあったか、またどのような困難があり、どう乗り越えたのかを教えていただけますか?

大組織では、色んなインフラがあるじゃないですか。自分の場合はアシスタントがいたり、ちゃんとしたオフィスやパソコンがあって。そこから今はラップトップになり、パソコンが壊れても、誰かに電話すれば直してくれるわけではない。今の会社は、自分にとって3人目の子供のようなものなので、やるしかないという感じです。

リーガルまわりなどの様々な手続きが、ハードで難しいことも多いです。それだけではなくもちろん、ファンドを作るためには投資家が必要ですので、アイデアを投資家にピッチするという活動もあります。今の仕事は、ゼロからものを作るという面白さがあって楽しいですし、難しい場面も沢山ありますが、自分の組織で夢を実現させようとしている私たちとっては、やりがいがすごくあります。

最初Mpower Partnersを発表した時に、メディアはもちろん、他のベンチャー投資家や女性起業家からも喜んでいただき、応援していただきました。女性に対してこういう仕事があるよという説明をする機会も増えました。

Mpower Partnersの組織編成を教えていただけますか?

現在は9名のチームです。投資に関わるチームが大半で、資金調達しているスタートアップに会ったり、面白そうな企業のデューデリジェンスやインタビューをしたりしています。最終的に投資すると決定した場合、投資後のサポート、例えば新しい顧客を開拓するための人探し、あるいは人事的なサポート、もちろんその上にESG実装のサポートもしています。ほとんどの場合、投資先企業の取締役会に入ることが多いので、取締役会会議 に参加したりもしています。定期的に、私たちの活動をまとめて、ファンドの投資家に報告しなくてはならない義務もあります。

簡単にいえば、我々のファンドで資金調達をして、スタートアップに投資して、理想としてはそのファンドの寿命の10年の間に、買った金額の何倍かリターンを得るということです。もちろん全ての企業からリターンを得られるわけではなく、数社が良いリターンを出してくれれば、その一部を投資家に戻すという構造になっています。投資信託や債券投資に比べたら、リスクは高いです。スタートアップですから、きちんと黒字化するかも分からないのです。未来に投資するわけですから。

Q6. これは度々聞かれていることだとは思うのですが、なぜESGに着目されたのでしょうか?

そうですね、たまたまその3文字の言葉になっているかもしれませんが、どの企業でもガバナンスがしっかりしていなければダメじゃないですか。例えば、社長がすごく悪いことをして、それをチェックする目がなくて、誰も何も言わずに許してしまうとか。悪いガバナンスは誰も容認しないはずですが、良い・健康的なガバナンスを実行するのは簡単ではない。

私はあなたたちが生まれる前からこの仕事をしていますが、今は大企業に社外取締役が入っているのは普通だと思うでしょ、でも昔はなかったんですよ。インサイダーばかり。インサイダーばかりは、いい意味では決定が早いですが、何か問題があった時に誰も指摘しない、あるいは、事故をキャッチできないなどの潜在的な問題が起きるじゃないですか。ビジネスがすごく良くて、右肩上がり成長の企業なら、もしかしたら悪いガバナンスでも通るかもしれない(笑)。ただ、どこかで成長の速度が低下した時に、ガバナンスが鍵になります。

S(Social)はすごく幅広いですが、例えば多様性が例になります。先ほどと一緒で、全ての決定権を持つ人たちが、一つの人種やジェンダーだったら、転換することが難しくなるじゃないですか。リスク管理だけではなく、日本は2055年までに労働人口が40%減ると言われていて、それが正しければ、既存の人口のポテンシャルを全て最大化しなくてはいけないじゃないですか。その全ての中には例えば、障害を持っている方やLGBTQの方、あるいは外国籍の方、もちろん女性もそこに入るのですが、すごく優秀な人材がこの国には沢山あるのに、最大化できていないのが、とにかく一言で言うと”もったいない”と思っています。

SはDiversityだけでなく、従業員の満足とかも含まれます。結局日本の一番の資源は人材でしょ。長く働いてもらいたい優秀な人材を、キープするための社風、会社のパーパスを明確にしないと、あなたたちの世代はまず来ないと思うんですね。何のためにこの会社は存在していますか、社会にどういう貢献をしていますか、あるいは社会貢献的な話だけではなく、どういうインパクトを与えていますかとか。例えば、脱炭素にどんなインパクトを与えているか、児童労働を使っているか、社長が人種差別的な発言をしているかどうかなど、様々なことが含まれていると思います。とにかく採用で良い人に来てもらうためにもESGはすごく価値があるものだと思います。

これらをふまえて、ESGはなぜ必要なのかというと、一言で、企業の持続可能な成長を促すためのドライバーだからということになります。

Q7. キャシーさんは、生まれてから大学までずっとアメリカで育たれていますが、お仕事をされてからは日本の成長に着眼点を置かれています。なぜ日本に着目したのでしょうか?

2つの理由かな。一つは正直、大学在学中に日本にすごく興味があって勉強したわけでは全くなかったんですよ。元々、アメリカの外交官になりたくて大学院に申し込んで入れたのですが、同時にロータリーの奨学金をもらえたので、とりあえず大学院を2年間延期して、初めて日本に来ました。そこで初めて日本にいる親戚に会って、カタコトでしか日本語はしゃべれませんでしたが、自分のルーツを発見したことがすごく面白かったです。当時はバブルの頃でしたから、みんな日本のことを知りたかったんですよ。それが最初の日本への出発点でした。

2番目の理由は、大学院の修士課程の間の夏に、インターンとして日本に来たのですが、その時に旧三井銀行、今の三井住友銀行で、研修生していました。制服を着てたんですよ(笑)。日比谷本店で。その時になんと私の主人、ドイツ人ですけど、東京でお会いして、恋に落ちて、大学院卒業後、日本に戻って就職する予定は全くなかったんですが、大学院を済ませて、すぐ日本に戻り、就職活動をそこから始めました。レジュメを色んな会社に送りました。

なぜ今日本にいるかはこのストーリーの通りです(笑)。

Q8. 少し話が戻りますが、ESGに関して「重要だよね」と納得してくれる人は多いと思うのですが、一方で、ESGという言葉だけが先走って形骸化してしまうといったこともあると思います。ESGのデメリットや課題を教えていただけますか?

おっしゃる通り、ESGはいわゆる流行り言葉になってきている側面があります。そうすると、企業にはやらせ感があり、投資家から色々と言われたり、マーケットからのプレッシャーもあります。先ほども申し上げた、我々がやろうとしているスタートアップの企業の事業戦略の中に、ESGの要素を組み込まないといけないと思っているのですが、そこまでやらずに単なるチェックボックスみたいに、「これやりました。」と言うだけで、本当に腹に落ちていないところがまだあるかなと思っています。

ESGを実装すると何が良くなるのか、どういう利点があるのか、それを理解していないまま、ESGをやってますよと宣伝するだけでは不十分ですね。

正直長年ダイバーシティ、Womenomicsを働きかけてきたのですが、色んな経営陣と話していた中で、結構分かれちゃいましたね。例えば、当然多様性は良いことで、社長の口から「これを僕は信じている、良いことです」とダイバーシティ部を設立し、スタッフを女性にして、チェックボックスのように”はい、ダイバーシティをやりました。”と形だけ行なった会社も結構ありました。

でも、社長自ら、優秀なマイノリティの人材をとにかく昇格させるようにとか、インフラを整えたりとか、「これをやることで我々のビジネスがもっと成長できる」とか発言しないと、結局表面だけにとどまる懸念はありますね。

そうならないで実装するためには「スプリントではなくマラソンです」といつも言っていますので、本当に時間のかかるプロセスになると思います。

腹落ちさせるには何が足りないのでしょうか?

アナリストの時代は、なるべく客観性のあるデータとか分析の結果を使うようにしていました。例えばWomenomicsをしたら、より多様なリーダーシップがより高いパフォーマンスや株価になり、高いROE(Return On Equity)と正の相関ありますよ、とか。世界には山ほどデータや分析が存在していますので、それを使って説得しないといけない。単なるエモーションでは当然不十分です。ですので、分析には定量的なエビデンスを使って議論してきました。

Q9.Ted TalksのWomenomics(2011年)と比べて、現在の状況はどのように変わっていますか?またどのような課題が残っていますか?

一番最後に書いた、Womenomics5.0に書いた内容とそこまで変わらないのですが、働く女性の人たちが、アメリカやヨーロッパ以上に増えたことが、大きな劇的な変化かなと思います。

あと実は、日本にいると感じないのですが、外から見ると日本の国の育児給付制度はものすごくgenerousですよ。アメリカは国レベルでは全く育児給付制度はないんですよ。日本は先端的なポジションです。日本では、育児休暇をお母さんはみんなとるんですけど、お父さんがあまり取らないなどの問題がありますが、制度自体はすごくgenerousですね。

3点目は透明性が改善されたところで、2015年に女性活躍推進法が施行され、企業や組織がジェンダーに関する情報開示をしないといけなくなり、初めてどういう実態なのかがわかるようになりました。また目標も立てないといけないですから、何年までに女性管理職を何%増やすと示す企業が随分増えました。

一方、まだ改善できるところは、ご存知の通り、リーダーシップ層が全然まだ足りていなく、民間及び政治の世界でも少ないですし、正規雇用者もまだ少ないですから、どういう風にそれを変えていくかが課題かなと思います。

Q10.ご自身が投資銀行時代に女性管理職として働く中で大変だったことや、それをどのように乗り越えたかを教えていただけますか?

幸い外資系投資銀行でしたので、女性だから不平等な扱いや差別をされた経験はなかったです。一番大変だったのは、おそらく大学院直後に就職して、若かった・女性だった・日本人じゃなかったというハンディが感じられ、私が当時やっていた仕事が、競合他社は中高年日本人男性ばかりでしたので、どのように戦っていけるのかという悩みや苦労がありました。

ある日、目が覚めてわかってきたのは、当時の自分のチームがすごく小さくて、日系の証券会社がとにかく大きかったので、量で勝負するのは無理とわかってきて。彼らのしていることを真似しようとしていたのですが、それはチームサイズが小さくて不可能で、とにかく差別化するために何をしなくてはいけないのかを考えるようになりました。リサーチアナリストでしたので、彼らが書いていないテーマ、全然違うことを書くべきだと思いました。

そこから最初、日本の年金積立不足問題やWomenomicsもそうですし、おそらく競合他社が書かないテーマを深く分析してレポートを出してきたんですね。でもそれが、一気にわかったわけではなく、かなり時間をかけてわかってきたかなと思いますね。

あとは、自分のアナリスト職以外に、部署の部長や、日本だけではなくアジア太平洋を見るようになった時も結構大変でしたね。それまでは自分の仕事だけに集中すればコントロールできるじゃないですか。いきなり部下が何十人となるとかなり大変で、学ぶところがものすごい多かったですね。

Q11.ICU生の今後に対して、どのような軸を持ったらいいとお考えですか?

せっかくICU生はグローバルな視点を持っていると思うので、国内の会社で仕事をしていくのも悪くはないですが、現代では国境の意味がなくなってきているからこそ、海外に行ける機会を探すとか、グローバルな基準を肌で感じることが大事だと思います。

日本は住んで働く場所として”天国”ですが、若いうちは色んな意味で苦労すべきです。居心地がちょっとチャレンジなところにいくと、価値のある経験になりますし、何においても後悔しないと思っています。

Q12.コロナで友達が増えず悩む大学生も多いと思いますが、キャシーさんにとって友人はどのような存在ですか?

自分の人生はイレギュラーで、21、22歳で母国のアメリカから出て、日本に来ました。自分にとって、日本に来てできた友達は財産です。私は、友人がいないとサバイブできないと思っています(笑)。

友達との関係は”一方的”ではなく”ギブアンドテイク”の精神であるべきで、友達に投資することも大事だと思います。すぐに相談できる人、自分のことを360度わかっている人を集めて、自分なりの”個人取締役会”を作るのです。正直に言ってくれる人がだんだん歳をとってくると少なくなってきますから、友人は大事にすべきですよ。今後皆さんも、子供が産まれた時の子供の悩みとか、いろんなライフステージで直面する悩みを相談できる人を持つべきです。そのライフステージによって、相談する人も変わってくるかもしれませんね。

Q13.ご自身の経験から、これだけは大学生・ICU生に伝えたい、ということはありますか? 

先ほどの言葉と似ているんですけれども、”世界を経験しなさい”ということですね。


最後までお読みいただきありがとうございます!
ESGやMpower Partnersについてもっと知りたい!という方は、以下のFurther readingsを是非参照してみてください!


【Further Readings】

MPower Partners ホームページ
https://www.mpower-partners.com/

ESGとは?MPowerが考える定義とその本当の意味
https://www.mpower-partners.com/blog-jp/what-is-esg/

Our ESG Charter

TEDxTokyo  – Kathy Matsui – Womenomics (2011)

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