ワクワク感と共に“食”に新たな選択肢をーPlant-BASEの飯沼笑花さんにインタビュー!


ICONfrontインタビュー第26回弾は、Plant-BASEで活動されているID24の飯沼笑花さんにお話をお伺いしました!プラントベース食とは何なのか、活動をする上で心がけていることなど、たくさんお話ししていただきました。ぜひお読みください!


Q1. Plant-BASEさんはどのような活動をされていますか?

ICUにおいて、プラントベース食の普及を目的に活動しています。「植物性材料のみ/植物性中心の」という意味のプラントベースは、肉・魚介類・乳製品などの動物性食材の代わりに、野菜、果物、豆類、穀類などの植物性食材を積極的に取り入れよう、という概念です。

Plant-BASEは「なんでプラントベース?」への答えとなる5つの要素に基づいています。「健康」「動物」「環境」「包括性」という4つの柱と、「ワクワク」という核です。

___「健康」、「動物」、「環境」はなんとなくイメージがつくのですが、プラントベースにおける「包括性」というのはどういう意味でしょうか?

プラントベースの一つの大きな要素として、食に対する様々な文化や価値観を持った人が、一緒に同じ食材を食べることができるという点があります。例えば、宗教的に特定の動物を食べないという信条を持っている方は、特別な食事を用意されることがあると思うのですが、そもそも動物性食品を摂取しないっていう食べ物だったら、そういった価値観を超えてみんなが同じ食べ物を同じ食卓で囲んで食べることができます。この「フードダイバーシティ」の観点からプラントベースは見直されているので、多様な価値観を持つ人が集まっている場所であるICUで、プラントベースを広める価値はあると感じています。

また、「ヴィーガンになるのはちょっとハードルが高いな……」と感じてしまう方でも、プラントベースだったら毎食自分で選択することができるので、誰でも、いつでも、好きなように、自分の生活にプラントベースを取り入れていくことができます。100%プラントベース食じゃなくてもいいんです!週に一度だけ、朝ご飯の時だけ、プラントベースを選ぶ。

そういった「誰にでもプラントベース食を取り入れる可能性が開かれているんだよ」という意味を込めて「包括性」を柱の一つにしています。

___ヴィーガンとプラントベースの違いは動物性食品を排除することと、植物性食品を積極的に取り入れることの認識の違いなのですか?

まず最初に申し上げておきたいことは、プラントベースもヴィーガンも絶対的な定義は無いだろうということです。ヴィーガンとかベジタリアンとか、菜食の人にも色々な種類があります。そういう人を包括してプラントベース、植物性中心のスタイルと定義されることが多いです。ただ、動物性が多少入っていてもプラントベースと表記する企業もあり、一方で、動物性素材が完全に含まれていないものをプラントベースだとする人もいます。そのため、用語の定義は多少のばらつきがあるというのが現状です。一つ、ヴィーガンとプラントベースの差があるとすれば、ライフスタイル全般において、動物性排除を重視するのか否かという点だと考えています。ヴィーガンの、食べ物だけに関わらず、衣類なども含むライフスタイル全般において動物性を排除するというところは結構大きい違いかなと思います。ヴィーガンが生活全体における動物性排除に重きを置く概念である一方で、プラントベースは特に食事において植物性を積極的に取り入れることに焦点を当てた概念である、という認識です。

Q2. 具体的にどのような活動なのですか?

現時点では、インスタグラム上でのプラントベース情報の発信と、ガッキ新商品の開発を行なっており、今後はICU祭でのお菓子販売、講演会、ワークショップ、料理会、他団体とのコラボイベントなどを企画しています。

メンバーは現在10人程度で、意外かもしれませんが、メンバーのほとんどは普段動物性食品などを食べています。興味がある、学びを得たい、植物性に少しシフトしたい、という思いから参加してくれています。

Q3. いつからその活動を始められたのですか?

今年の6月に設立したばかりで、まだ小規模な団体です。そのため、まだ水面下で企画している活動がほとんどですが、焦らず一歩ずつ着実に進めて行くつもりです。

Q4. 飯沼さん自身がプラントベース食やエシカル消費に興味を持ったきっかけは何でしたか?

もともと家族が「食」と「農」に携わっていたこともあって、野菜や豆が多い食事が好きでした。それでも以前は動物性のものも少しはとっていたのですが、高校時代にオランダで一年間留学をしていたときに、そこで出会った友達やコミュニティの人たちを通してプラントベースやヴィーガンについて知ったことが大きなきっかけになったと思います。話を聞いているうちに、その考えにとても魅力を感じ、「賛否両論はあるけれど、まずは自分で試してみよう!」という気持ちで始めました。

また、欧米ではプラントベースがかなり主流になってきているので、実際に取り扱っているレストランを訪れたとき、その予想以上の美味しさに驚いたことが「プラントベースってすごくワクワクする!」と思えるきっかけにもなりました。

母は自営業としてオンラインでお菓子を販売しているのですが、半分以上はプラントベースのものです。バターなどを使っているお菓子の良さもあるけれど、プラントベースという別の路線もある。という想いに基づき、通常のお菓子で使用するような卵やバターなどは使っていません。今の自分の活動は、そのような母の想いに影響されているかもしれません。

Q5. 実際に活動を始めようと思ったきっかけを教えてください。

近年プラントベース市場は国内でも拡大していますが、まだ日本では菜食の人は「ちょっと特殊な意識を持った人」のような括りで認識され、そうでない人達との間に境界線を引かれる傾向がある気がしています。主観的かもしれませんが、2年間ほぼヴィーガンである自分の経験からも、世間一般で言われていることからも、そう感じています。

___飯沼さん自身はどういったときにその境界線を感じましたか?

例えば、大学の友達やサークル仲間とご飯を食べに行くときや、実家に戻って家族とご飯を食べるときに、自分がヴィーガンであることを周りに言うと、「そうなんだ……」って遠目で見られちゃったりすることが多かったですね。それ以降「笑花はヴィーガンだから」とご飯に行くのを誘われなくなったりする時もあって。これはしょうがないことではあるし、誰かを責めるわけではないのですが、どうしても自分が完全にヴィーガンを追求しようとすると、社会的に人との関係を保つのがとても難しく、「自分を周りの人から遠ざけてしまうのは、本当に私がやりたい生き方なのかな……?」と考え直すようになりました。今はその壁を受け入れつつ、友達と食べに行くときはあまりこだわりすぎないようにしているのですが、他のヴィーガンなどプラントベースを実践している方からも同じような悩みをよく聞くので、やはり、まだ日本はすぐ隣にプラントベースがあるという環境ではないなと感じます。

___境界線が生まれてしまう原因というのはどういったところにあると思いますか?

自分なりに調べた結果、一つの要因として、根本の「なんで植物性食材を選ぶの?」についてオープンに話し合う場や、実際にプラントベース食を体験する機会が乏しい、ということがあると考えました。

そこでこんなことを思いつきました。「じゃあ、ヴィ―ガンもフレキシタリアン*も、宗教上特定の動物を食べない人も、お肉大好きだけど興味ある人も、みんな一緒に植物性の食について学び、話し合い、作り、食べることで、プラントベースの魅力の輪が広がっていく。そんなフラットで包括的なコミュニティを、まずはICUで作ったらどうだろう?」…そんな経緯で設立されたのがPlant-BASEです。

*フレキシタリアン:ときどき動物性食品も食べる菜食の人

Q6. プラントベースな食生活の魅力を教えてください。

「発見」です。

最初は、私も、今まで摂っていた動物性のものがなくなることは「引き算」なのではないか、バラエティーが少なくなり、単純でつまらない食事になるのではないかと思っていました。ですが、実際に情報を集めながら続けてみると、選択肢が少ないからこその創造性がありました。例えば、動物性のような食感がどのようにして生まれるのかなどです。「Less is More」に通じる部分があると思います。

加えて、個人差もあるとは思いますが、食べ応えはありつつ軽やかな食事になることが植物性にしかない魅力ではないかと思います。動物性の脂質がなくなり、お肉を再現したものでも胃に負担がかからないなど、お肉が好きだという人にも、植物性はまた違う魅力があります。これは私もプラントベースな食生活を実践してみてから気づきました。

Q7. 始めた時はどんな気分でしたか?

正直、不安も大きかったです。最初のアイディア段階では仲間が誰もおらず、私はリーダーとして何かを創り出すのは初めてだったからです。しかし、思い通りいかなくても、「失敗じゃなくて、これはうまくいかなかったという発見だ!次いこう」と受け止めることで、粘り強く賛同者を集め、一緒に基盤を作ることができました。1人でも「えいや!」と行動してみると、意外と似た興味や意識を持つ人たちが協力してくれることを実感しました。0からここまで来られたのは、そんな素敵なメンバーのおかげです。感謝しかありません。

___自分から団体をつくる上で実際に何が一番大変でしたか?

一人で色々やっていると、どうしても考えすぎてしまう、煮詰まってしまうことがあります。ああもできる、こうもできる、でもこうかなあ、とずっと考えていると、やっぱり閉ざされた世界にいたままになってしまうんです。その時に誰かに話したり相談したり、実際そういう人たちで意見を出し合ってもらって、一緒に進めていくことが改めて自分には大切だなと思いました。ちょっとここにも書いてあるのですが、仲間の存在というのは欠かせないなと自分に言い聞かせるというか念頭に置いておくべきだなと思いました。特に基盤が確立していないときはですね。

___本当に1から、一人の状態で始めた始められたのですか?

そうですね、自分でも無謀だったなとは思います。この活動を思いついたのが今年の春くらいだったのですが、それまで2年間コロナでなかなか思うような学生生活を送ることができずにいました。入学の頃から、色々思うことがあったのですが、せっかく大学にいるなら自分が本当に情熱を持っていて社会に還元できることがしたい、例えミスしてもいいから何か行動してみよう、とは入学した頃から思っていたんですね。3年生になって、少し学生生活が戻ってきた中で、ここしかないとなりました。今自分が情熱を持っていることは色々あるのですが、その中の一つがプラントベースでした。これまで学んできたことを行動に移したいという思いもあり、環境問題や社会問題の対処に貢献できる魅力的な選択肢として、プラントベースの輪を広げる活動をしたいと考えました。ICUでプラントベースを実践している人に会ったことはあまりないけれど、興味を持ってくれる人はいるはず、という願いを込めた行動でした。

Q8. どんな時にやりがいを感じますか?

まだ本格的な活動に至っていないため、大きな達成感を味わえるのはこれからだと思っています。しかし小さな達成感はすでに感じています。先日メンバーの1人がこう話してくれました。「最近肉の代わりに豆腐を使うようにして、料理のバラエティが広がった!」このように、学びを小さな実行に移してくれたことは、私にとって大きな喜びでした。今後の活動を通して、団体を超えてこのような輪が広がっていくことを願います。

Q9. 活動したことでわかったことや気がついたことについて教えてください。

「ワクワク」という要素の大切さに気づかされました。この団体でのワクワクは、おいしさ、驚き、楽しさなどです。設立当初の軸は「健康」「動物」「環境」「包括性」の4つの柱だけでした。しかしどうやって団体を長期的にうまく機能させていくかを考えるにつれて、どの活動においてもメンバーが心躍る要素は必須だと思ったため、「ワクワク」を核として定めました。

そこには、個人的な経験も関わっています。たまに「よくヴィーガン食で我慢できるね」と言われるのですが、特に我慢していると感じたことはありません。植物性ならではの軽やかな美味しさ、豆乳でチーズを再現できる驚き、新たな人や情報と出会う楽しさ…。そのようなワクワク感が、私を突き動かす大切な要素です。そして持論ですが、人間が快楽を求める存在である以上、ワクワク感はどんな行動においても持続の鍵になると思っています。

持続といえば、最近は「サステナビリティ」という言葉をあちこちで耳にします。しかし抽象的な話ですが、自然環境のサステナビリティを目指すなら、まず自分や団体自身がサステナブルであるのが前提だと考えています。賛否あるとは思いますが、せっかく環境問題に取り組むなら、ワクワクやらない?というのが持論です。「何かしなければ」「周りの行動を変えなければ」という義務感だけで活動していても、継続は難しいですから。

___「ワクワク」を持ち続けるために何か心がけていることはありますか?

好きでやっていたことでも路頭に迷ったりすることは、誰にとっても何においてもあると思います。私はプラントベースのこの活動に関わらず、何でこんなことなっちゃったのかなというくらい思い詰めてしまったときは、いつも「なんで」というところに立ち返っています。なんで自分はこれがやりたいのかということですね。自分が頑張っているときは、意思、「WILL power」に頼ってしまいがちなのですが、私はそれを「WHY power」と言っています。「なぜ」という、物事の原点に立ち返って、なぜなら私がこれをやりたいから、という自分の原点に立ち返ることで、やっぱり自分はこれが好きだからやりたいとか、やっぱりこれは価値があると思うし、これで人と繋がって、そこで生まれたやりがいが自分の幸せにつながるから、だから私はこれをやるんだって明確になります。そうした時に、今やっている活動の本質的な魅力とか、っていうのも絶対に見えてきて、やっぱりこれってすごいなってなる、そういった思い返すきっかけになるのが、「なぜ?」って問いただすことかなと思いました。

Q10. 社会に訴えたいこと、伝えたいことはなんですか?

近年では健康面やエシカル面から世界的に菜食人口が増加していて、そうでない人達と論争が起こることもあります。でも私は、動物性食品を食べることを全否定し、100%ヴィーガンになることを推進するつもりはありません。例えば動物性食品でも、放牧牛、平飼い卵、ジビエ、養蜂など、エシカルな生産方法はあります。人・動物・環境に配慮した持続的な未来を作っていきたい、という共通したビジョンを持っているのなら、プラントベースと相反するそれらの取り組みと対立するのではなく、共生する姿勢が大切だと考えています。ゼロヒャクではなく、ある短所を別の取り組みの長所で補う、組み合みせの発想です。

というのは、プラントベースは最善で唯一の解決策ではなく、あくまで選択肢の一つだと考えているからです。私たちが直面している様々な問題は、いろんな要素が複雑に絡み合っています。なので万能な特効薬など存在せず、いろんな対応策を組み合わせることが必要ではないでしょうか。その組み合わせの有力候補の一つがプラントベースです。

もし100人が週の食事の半分を植物性にしたら、50人のヴィ―ガンと同じ成果を出していることになります。完璧を目指さなくていいので、1人でも多くの人に、今日の夜ごはんから、プラントベースを気軽に初めてみてもらいたいです。

___何かお勧めできるプラントベース食の始め方があれば教えてください。

今は色々なコンテンツがあるし、だからこそ情報を探すのも難しいというのもあると思います。しかし、プラントベース食を始める上で大事なのは、なるべく網羅的にわかりやすく、且つデータに基づいたもの、信頼できるものを選ぶこと、そして持続的にその活動を続けたいと思うことです。あとはやはり自分がワクワクするというか、これちょっと良さそうと思ったものを本能的に選ぶのがいいなと思います。とは言っても私のおすすめは「Pick Up Limes」というコンテンツです。管理栄養士の資格を持っている方が発信されているため信頼性も高く、プラントベースを始める人へのコツや注意点も網羅されています。なにより、発信内容がプラントベースの「喜び」に満ちています。この中にもビギナーの方向けのプラントベースの動画があります。自分で、やはり何も情報を見つけずにやると陥ってしまうような失敗とかも、避けるためにどうしたらいいかとか、そう言ったことを網羅的に説明しているので、ぜひチェックしていただきたいです。やっぱり美味しくないと続けられないと思うので、これ美味しそう!というのは大事な直感かなと思います。

Q11. これからやっていきたいこと、挑戦してみたいことなどがあれば、教えてください!

ヴィーガニズムは欧米で急拡大しているため、プラントベースのレシピを探すと、和食が少なかったり、材料が身近でなく輸入品が多くなったりすることがあります。そのため、海外のレシピを日本版にアレンジする、地場野菜や国産素材からなる和食メニューをガッキで限定販売する、など、日本でも取り入れやすい工夫づくりができたらと考えています。

また、団体に興味を持ってくれる人が食・環境・動物に関心がある人に偏る傾向があるため、スポーツ系や音楽系など、あえて全然違うジャンルの団体とのコラボもしてみたいです。コラボ企画で楽しんでいたおいしいごはん、実はプラントベースでした!みたいな(笑)。プラントベースという選択肢がフラットに認識され当たり前に存在する、そんな未来に向けた小さな芽を、まずはICUで少しずつ育てていきます。

Instagramアカウント

Plant-BASE:@icu_plant_based

飯沼笑花さん:@emika_1001

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA