【イベントレポート 第二弾】 Re:think Activism by Map the Better
ICONfrontイベントレポート第2弾では、2023年9月16日に国際会議室で開催されたMap the Better主催のイベント、「RE:think Activism」にICONfrontメンバーからID26のりことID24のゆうきが参加した様子をお届けします!
このイベントは、多様化する社会課題と社会への関わり方を再考する機会を提供しそれぞれが持つ「よりよい社会」に向けた主体的な行動を始める、あるいは継続していく力に繋げることを目的としたものです。4人のゲストを迎え、多くの学生が参加しました。ぜひご覧ください!
目次
~イベントのおおまかな流れ~
- ゲストによるプレゼンテーション
- Q&A・パネルディスカッション
- 参加者間ディスカッション/閉会
<1:協賛企業の紹介>
株式会社アレスグッド
SDGSパートナーズ有限会社
Snap Inc.
↑協賛企業であるSnap Inc.さまからの協賛グッズ
<2:ゲストによるプレゼン>
ゲストのお三方による活動紹介がお一人につき10分程度で行われました。
【笛美さん】
海外で過ごす中でフェミニズムに出会い、広告業界勤務のかたわらフェミニストとしても活動されています。
広告業界では「フェミニズムは広告をダメにする悪魔」であることから、自身がフェミニストであることを公表することはもちろん、声をあげることさえも難しい状況の中、2020年自身のTwitterに投稿した #検察庁法改正案に抗議します、が一躍拡散されTwitterのトレンド大賞に選ばれます。その一件をきっかけに、広告のノウハウを用いてフェミニズムを広げていきたいと考えるようになったそうです。広告と社会運動の関連性について、①相乗効果がある、②片方うまくいかなくても逃げ場がある、③エコチェンバーの外の空気が知れる、の3点を挙げて説明してくださいました。
「相手を知る、媒体を知る、自分を知る」の3点を意識しながらSNS運営をされているという笛美さん。2021年にはインスタグラムの運用を、2022年にはTikTokの運用を始め、幅広い分野で活動されています。
【鈴木彩衣音さん】
学生ボランティアやインターン等学生時代から積極的に活動をされていた鈴木さんは、NPO団体のような草の根活動ではなくより影響力を持って活動したいという思いから、卒業後ボーダーレスジャパンに入社されます。ボーダーレスジャパンはソーシャルビジネスを行う会社で、世界13カ国で48もの事業に取り組んでいます。
その後、性暴力被害が被害者の自責環境が高いが故に可視化されにくいことに着目し、支援活動としてSISTERS.incを自ら立ち上げました。現在は、若年層への支援活動を行政やふるさと納税制度、企業からの支援を得て行っています。
【泉谷由梨子さん】
泉谷さんは世界最大有のネットニュースメディアであるハフポスト日本版の編集長を務められていて、主にジェンダー関連の話題に関する記事を担当されています。
女子高育ちで周囲にDVの問題を抱えた家庭が多かったことが、記事執筆を志すきっかけになったという泉谷さん。メディアでなかなか扱われることがないが、一方で私たちの生活において悩みの種となる身近な事象、例えばジェンダーギャップ指数、ジェンダーと広告、パワハラ問題、男性育休に関する話題を記事として日々取り上げています。
メディア業界ではジェンダーの問題は軽視されているからこそ、アメリカ発の媒体としてもっと踏み込んだ発信を社会活動化の人々と共に行いたいという思いで活動されています。
【金敬黙教授】
ICUの幼児園(2015年に閉園)出身で、早稲田大学文化構想学部の教授をするかたわら、社会運動に携わられています。運営されているSocial Gallery KYEUMでは、都市、アート、文化、平和、そしてアジアと関連した社会的課題について文化的な手法を用いて解決を模索するカルチュラル・コレクティブを展開。社会運動において持続可能なビジネス・アカデミズム・ジャーナリズム・アクティビズムを追及しています。
<3:Q&A・パネルディスカッション>
10分間の休憩後、参加者からの質問にゲストが答える50分間のQ&A並びにパネルディスカッションの時間がありました。
<4:参加者間ディスカッション>
近くの人と4−5人のグループになり、30分ほどディスカッションを行いました。
ディスカッションテーマは、「社会貢献とは何か」
『グループ1』
A「何度も繰り返されてたと思うんですけど、やっぱり自分事にするみたいなところが一番響いたかな、と個人的には思いました。ファシリテートしてた方も言ってたと思うんですけど、ICU生って結局俯瞰して見ちゃうというか、立場的に自分は経験してないけど事実として知っていて、これって問題だよねっていうディスカッションをしてしまうのは確かにな、耳が痛いなと思って聞いていました。ディスカッションをしてるだけいいじゃん、って議論をすることを一部社会貢献だと思っちゃってるところがあって、そこから抜け出さなきゃいけないな、って聞いていて思いました。」
B「私もすごいそこが響いたっていうか、結局ICUで社会課題とかに問題意識を持ってる人はたくさんいると思うし考えることも好きだけど、同じような立場の人としかディスカッションをしていなくてそこから抜け出せないところがあるかなと思います。じゃあ現場に行ったところで社会貢献とどう繋がるのかってところは難しいですよね。」
C「難しいですよね。ICUで長く過ごしていると、ああまたこの課題について話し合うのか、と引き目で見てしまうことがあります。ありきたりなことしか言えないし、活動を熱心にされてる方に対しても一線を引いてみてしまっている自分もいます。一方で私は今年就職活動を終えて来年から社会人になるっていう段階で他大学の人と関わる機会も多いんですけど、学外の自分は逆に社会課題、例えば女性軽視の発言とかに対して敏感に反応してしまいます。ICU内では引き目で見ているのに、大学の外で出会う物事には無意識に違和感を感じてしまうことに矛盾を感じちゃいますね。」
B「現場ってなんなんですかね」
C「私たちのいう現場のレベル感は登壇してくださった方とは違う気もするんですけど、でも社会問題について知って話し合う機会があることは、ある種社会貢献につながる部分ではあるのかなとは思います。」
D「なんか社会貢献ってここ(資料)にもあるけど、定義がすごい曖昧っていうか難しいと思っていて、まず社会貢献の目的がなんなのかを考えた方がいいのかなって僕は思ってます。最終的に何がしたいのか、そもそも社会ってなんなのか。より良い社会を作ることが目的ならより良い社会の定義をしなきゃいけない。けどその定義が企業とか人によって違うことが多いと思うし、どういうグループでそのより良い社会を目指していくのかなって思ってしまう。NPOとかで目指すのか、でも結局搾取する人がいたらずっとイタチごっこな気がしちゃって、、そう考えると社会貢献そもそもが存在するのか考えなきゃいけないと思う。」
A「人によって社会の大きさって違うじゃないですか。さっきの話で、ICU内では暗黙の了解として通じる部分が外に出ると無いっていう話もあったけど。家族からスタートする人もいるだろうし、県とか国とかだと捉える人もいるだろうし、、だからこそ資本主義と共にある人間になってしまうのかなって思います。」
C「より良い社会の定義って人一人によって全く異なってくるから、ジェンダー平等がより良い社会だと思う人もいれば一夫多妻制がより良い社会だと思う人もいる。それぞれ定義が違うからこそそこに対する批判も必ずあるだろうし、だからこそ世界全員で一つより良い社会の定義づけをすることってすごい難しいと思います。」
B「ちょっと違う話になっちゃうかもしれないけど、社会学者の宮台真司さんが、”社会は必ず存在する”って言っていて、なんでかというと人と関わりがある時点でそれは社会だと。もちろん自分と違う意見を持ってる人がいるのは当たり前であって、環境のギャップがあるのも当たり前だけど、議論をする場が少ないことが社会をよりよくすることを難しくしていると思う。もっともっとオープンに気軽に話せる環境があればもっとより良い社会になるのかなって思います。」
金先生「逆にICUがそういう環境をもてることは素晴らしいと思うんですよ。何がそれを可能にしてるのかを可視化して、どうすればそれを学校や職場で広げられるかを考えることは、ICUを現場化して日本社会を現場化する方法なのかなというのが一つ。そして、場所と現場って若干違うような気がしてですね、場所はPlaceでいいんですけど現場はなんらかの問題が起きてるところ、完璧な理想郷では無いはずだからそこをどう捉え直すかというところを繋げて欲しいですよね。あとは、問題というキーワードを私たちが使うときは9割方解決できるはず。なぜなら、解決できないものは問題とは言わずに運命的なものとして捉えるから、私たちは問題とは言わない。運命と問題の捉え方というところで、私たちが問題というときは、改善・解決できる意識があるということだと聞いたことがあります。
、、各大学にICU学科っていうのを作って欲しいくらいですね(笑)」
A「海外からICUにきている留学生たちに話を聞くと、ICUの授業ってそんなに難しいことやってないよねってよく言われることがあります。一個は英語で授業をやってるから内容が薄くなっちゃうっていう部分もあると思うんですけど、あとは薄くてもいい、特別に知識があるわけでも無いけど気軽に議論してもいいよねという雰囲気が自然とあるのを今聞いていて感じました。」
B「なんかスペシャリストに話すのって緊張するじゃないですかやっぱり。この人私よりよく知ってるから私の意見なんてどうでもいいんだろうな、ってならないのがもしかしたらあるのかもしれない。それがリベラルアーツ的な利点なのかな。」
金先生「むしろ卒業してからこれをどう保つのかってところじゃないですか。ICUのこんな素晴らしい環境で育った人たちがこの社会の中でどうやって戦っているのかを知りたいな。」
C「ICUの卒業生って本当に少なくて、社会の中でもなかなか出会わないんですよ。だからどうしても押し潰されちゃうのが現状だと思う。」
金先生「僕の早稲田大学の文化構想学部は授業でジェンダーについて扱ったりすることがあるんですけどそこで前話したのが、いい意味でも悪い意味でもあるんですけど、”フェミニズム検定”って存在しないんですよ。検定ってNPO団体とかが比較的自由に作れるんですけど、それによってムーブメントを作ることができるんですよ。だからそれこそ認定を作ろうってフェミニストのサークルとか先生たちがやってもいいと思うんですよ。」
A「自分事化しやすいですよね。それだと」
D「なんか検定とかを作るとスタンダードというか正解ができてしまう。それが一方で危険だなと思うのが、その正解が間違っていた時に、じゃあ新しい考えに自分を再構築していこうと思える土台、意識がないと怖いなと思います。一度権威のあるものから教わったことやものを変えていく時に、その土台を作っていくのが根本的に社会問題に取り組むために必要なんじゃないかなと思います。社会とか会社とかで当たり前のこととして学んだことに必要な時には立ち向かうためにも、ICUで言われてるクリティカルシンキングってすごい大事だなって思います。」
金先生「もうアクティビストになられましたね(笑)」
『グループ2』
MtBの方「 今回の講演を聞いてみて、社会問題や社会貢献に関して自分で新しく思ったことや、より考えが深まったことを共有して頂けたらと思うんですけど、どうでしょうか?」
E「そうですね。MtBさんは活動の中で社会貢献をどういう定義でされているんですか?」
MtB「 僕はこの団体がVoice up Japanだった頃から所属していて、もう3年くらい活動しているんですけど、ずっと平和に貢献したいという気持ちがあって、将来的にはそれを仕事に繋げたいとも考えています。ゲストの方がお話の中で、社会貢献は自己満になってしまうとおっしゃっていたように、自分も自己満でやってるつもりだけど、人が自分のために就職して自分のためにお金を稼ぐように、自分は人のためになるようなことをしてお金を稼いで生活したいです。
団体の活動の例としては、前にヒップホップとジェンダーというイベントを行って、ヒップホップに内在化するジェンダー問題について話し合いました。女性のラッパーの方にゲストとして来て頂いて、歌詞にある女性蔑視的な言葉に違和感を持ちながらも、「それでもやっぱりヒップホップが好きなんだよね」と、どうヒップホップと向き合えばいいか悩みながら活動していることについて語ってくださいました。その時には答えは出ませんでしたが、彼女が言っていた、「モヤモヤ」することが大事というのは、この講演の内容とも通じることだと感じました。世の中には、社会の圧力とかに負けてモヤモヤすることを放棄してしまう人もいるので、ふえみさんがおっしゃっていたみたいに、そういったモヤモヤしている人たちをモヤモヤさせ続けることが必要です。
今SNSのフォロワーが3000人近くいて、インスタを見てるといいねの数はあるし、リール作れば再生数は上がるし、自分たちが発信していることに対してリアクションしてもらえるのは貢献している実感があります」
F「なるほど。お二人(EさんとGさん)にとっては社会貢献とはどういうものですか?」
E「 私は今大学一年生なんですけど、高校の時は社会問題は、例えば貧困のような目に見えるわかりやすいもので、自分とは無縁だと思っていました。でも、最近フェミニズムを勉強し始めて、自分も当事者だったということに気づかされて、私は自分のために社会を変えたいという気持ちが強くなりました。だから、自分のためにやったことが他の多くの困っている人のためにもなったらいいなと思っているし、それが社会貢献に繋がるんじゃないかなとも思っています」
MtB 「とてもいいと思います。納得できました」
G「私もすごくそう思います。私自身フェミニストで、世の中は社会と個人の二項対立ではなく、社会のためにやっていることは自分のためになっているし、自分がモヤモヤしていることは政治が原因なこともあります。そういう意味で「社会貢献」という言葉ってちょっと曖昧だなと思って。
今、生理用品を置くプロジェクトを行っているんですけど、自分が生理になる身体だからその活動を行っているけど、それが社会に貢献しているのかと言われたらそうでもないし、でも貢献になっていると言われたら、「あーなっているんだ」って思う微妙なところにいます」
F「 なるほど。確かに、様々な分野のアクティビストの方のお話を聞くと、皆さん自分自身の信念を持ってやりたいことをやっていく中で、誰かの助けになればいいなと思っている方が多かったです。社会貢献と聞くと、どうしても大きな規模で考えがちだけど、もっと自分基準で、手の届く範囲から日々行っていることも社会貢献になり得るのかもしれませんね」
MtB「そうですね。自分のMap the Betterの活動を通して、より多くの人に共感の輪が広がっていけば、それが社会貢献に繋がるのかなと今ちょっと思いました」
G「 今の日本社会って自己責任論が蔓延しているというか、何か問題が発生したら自分に原因があるんだっていうふうに思い込んでしまう社会だと感じます。
だからこそ、アクティビストやアクティビズムが必要で、誰かが社会のせいだっていうことを伝えることで、それに対して誰かが共感して、それで連帯が始まって、そこから社会的なムーブメントが始まって……。そういう流れを起こす何かしらの力学みたいなものが社会貢献の一つの形式だったりするのかもしれませんね」
MtB「そうですね。アクティビストって、まだ社会において出る杭を打たれる存在に感じていて、身近に活動をしている人がいないと、ただ大きな声をあげて力づくでガーッて社会を変えようとする人だと認識されてしまう気がします。でも、多くのアクティビストはそうではなくて、多くの人に発信して共感を経て、さっきも言ったみたいにあなた一人で悩まないでねと伝えることが一つのゴールではあると思いますね。
僕は先月までカナダのトロントにいて、日本に帰ってきて閉鎖的な空気感や硬い価値観がすごく嫌で。ほんと嫌で(笑)。向こうだと様々なエスニシティを持った人がいるから、自分も異質なものとして扱われなくて、それがとても心地よかったです。新しい価値観がポンポン出てくるのも大事だと思うし、それに対してもっと世の中が寛容でいて欲しいです」
G「世の中が抱いているフェミニストのイメージもアクティビストと似ていますよね。無理矢理変えようとしている人とか、いつも怒っている人とか。この前友達に「フェミニストって言っているわりにはフェミニストっぽくないよね」と言われて、その人が思い描いている固定のフェミニスト像があるんだろうなと思いました」
E「 そうですよね。フェミニストは世間から攻撃的な人に見られがちで、確かにそういう人もいるかもしれないけれど、それは一部であってフェミニスト全体ではないですよね」
F「 フェミニストっていう言葉の括りだとしても、その中にもいろいろな思想や価値観を持ってらっしゃって、一つの既存のイメージというのは本来ないはずですもんね」
G「 ただ、逆になんですけど、そういうフェミニストっていう概念を自分の中に取り込む機会とか、アクティビストになるきっかけとかって、必ずしも私が勝ち取ったものではなく、努力で得たものでもなく、環境がそうさせたのかなっていうところが大きくて。だから、環境的にそういう知識にありつけなかった人や、私自身今大学に通えているのも経済的な要因が大きいから、そういう環境にいれたからこそ、それを還元していきたいなとも思います」
イベントに参加して……
ICONfront: ゲストの方々のお話を聞いて、様々な視点から今の社会の問題点や、よりよい社会を目指すために何をすればいいのかを参加者は深く考えさせられたと思います。ディスカッションの時間では活発な議論が交わされ、参加者がイベントを通して自分の思いや考えがあふれている様子が伺えたのも印象的でした。
私たちICONfrontは、アクティビストの方にインタビューをし、どのような活動を行っているのかを記事を通して多くの人に知ってもらうことを目標にしています。しかし、私たちの中でも「社会貢献」という言葉は曖昧なものだったことにこのイベントを通して気づかされ、ICONfrontの活動で何をしていきたいのかを改めて考えさせられました。
素敵なイベントを開催、そして招待していただいたMap the Betterの皆様、ありがとうございました!
※ICONfrontでは、これからもイベントレポートの執筆を行いたいと思っておりますので、イベント開催予定のアクティビストの方は、ぜひお気軽に下記の連絡先までご連絡ください。
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