世界最大規模の社会起業家向けビジネスコンテスト・Hult Prizeの井上海南子さんにインタビュー!

インタビュー第8弾では、Hult PrizeのICU支部でキャンパスディレクターを務めている 井上海南子さんにお話を伺いました!Hult Prizeに所属した経緯、運営側として感じる こと、社会問題とビジネスの繋がりついてなどを語っていただきました。

Q1. 海南子さんはどのような活動に携わっていますか?

 Hult Prize at ICUという団体でキャンパスディレクターを務めています。Hult Prizeは規模がとても大きく、大学それぞれに支部があるのですが、私はICU支部の運営リーダーを務めています。Hult PrizeのICU学内大会の運営のほか、参加チームの募集や、審査員やメンターの募集、イベントの企画、参加者のサポートなどを行っています。

Q2. Hult Prizeとは具体的にどのような活動ですか?

Hult Prizeは世界最大規模の社会起業家向けビジネスコンテストです。”社会起業家向け”というところがとても重要で、目的はビジネスを用いてグローバルな社会問題を解決することです。その規模がどれくらいかと言うと、世界100ヵ国以上の1000を超える大学が参加しており、日本からも例年参加校が増えていて、去年は50大学以上が参加しました。

 この世界大会は1年かけて行われます。まずICUでの学内大会のあと、地域大会で優勝したチームが1ヶ月ほどメンターと共に合宿を行います。そしてそこで選ばれたチームが、国連で行われる決勝戦に参加できる、というようなステップとなっています。決勝戦で優勝したチームには事業資金として1億円が提供されます。Hult Prizeのすごいなと思うところは、運営を学生主体でやっていることです。審査員には、その年のテーマに関わる専門家などプロの方をお呼びしています。

Q.3 ICUではどのような活動をしていますか?

 私たちが運営しているのは、ICUでの学内大会です。現在ICUでは、ID23のメンバー4人で運営を行っています。ICUのHult Prizeが発足したのは3年前と聞いているので、まだまだ新しい組織です。

 大会運営業務の1つとして、参加者のサポートも行っています。イベントを開催するだけでは参加者がアイディアを出すのは難しいので、コンテストのテーマに関して精通している方にレクチャーをしていただいて事前学習の機会を作るなど、参加者同士がコミュニケーションを取れるようにしています。また、プレゼン方法のアドバイスなどもしています。Hult Prizeでは、ビジネスアイデアがある人だけでなく、「何かやってみたい、仲間がほしい、大人と関わってみたい」というような人も受け入れて、一緒に活動していけたらいいなと思っています。そこが他のビジネスコンテストとは違うところだと感じます。

Q4. それぞれの活動を始めようと思ったきっかけを教えてください。

 もともと経営学に興味があり、イベントの企画もやってみたかったので挑戦してみようと思いました。

 最近は起業に関することに取り組んでいますが、もともと経営学の中でもリーダーシップやチームビルディングに関心がありました。チーム競技を沢山経験してきた中で、そういったことを学問的に学んでみたいと思うようになりました。そのこともあって、運営側に回っているということが大きいのかもしれません。運営では人のマネジメント、チームビルディングに関わることができるので。ビジネスコンテストは、金銭的な利益に関することを扱う場面が多いのですが、私は人の考え方や行動に関心があるので、社会学も勉強したいと考えています。

 当初、経営学とイベントという2つを実現できるところに惹かれてHult Prizeに入ったので、SDGsなどの社会問題に関しては詳しくありませんでした。しかし今では運営を通して参加者と一緒にグローバルな社会問題について学ぶことができています。運営メンバーにはそういった人も多いと思っています。

Q5.大会運営をされていて、ICUではアントレプレナーシップ(企業家精神)は根付いていると感じますか?

その点に関しては、比較的根付いてないという印象です。NPOやNGOでの活動に興味を持つ学生は多いのですが、意外と起業となるとハードルを高く感じてしまうのではないかと思います。また社会問題に興味を持つ学生は多いと思うのですが、それをビジネスにしようと考える学生が少ないのが現状です。

Q6. 一見「社会問題解決」と「ビジネス」は相反するものだと考える人もいると思いますが、海南子さんは社会問題の解決と利潤追求の両立に対してどのようにお考えですか?

社会起業家というと聞こえが良いですが、そんなことは可能なのだろうかと最初は思っていました。しかし、Hult Prizeに関わっていく中で、私の中でその印象が変わったと思います。社会問題に着目すると社会のニーズを理解することができるため、ビジネスアイデアを考える際にはこの2つは意外に相性が良いのだと発見することができました。

 しかし大会参加者にとって、事業を介して社会問題を利益に結びつける方法を考えるのは容易なことではないので、運営側がレクチャーの企画などを通じて参加者のサポートをしています。大会当日には、「これくらいの期間でこれだけの収益があげられるから持続可能性があります」みたいなところまで具体的な採算を立てて参加者のみなさんがプレゼンをしていたので、非常に驚きました。

Q7. アイディア勝負というよりも再現性や持続可能性も重視されるのですね。

 そうですね。もちろんアイディアの内容や独創性も重要ですが、プレゼン後の質疑応答の際に審査員からされる具体的な質問を予測し、準備することも重要です。それを想定して試作品を会場に持ってくるチームがいたのはやはり驚きでした。

Q8.去年のICUの代表チームはどのような事業計画を発表したのですか?

バナナの廃棄されるはずの皮の部分を活用して、再利用可能なサランラップに作り変え販売することで収益をあげるという事業計画でした。実際に現地の工場に連絡をとり、ここであれば実現可能であるというところまで具体的に計画していました。大会当日には、バナナの皮を細かく繊維状にして作られた、洗えば繰り返し使えるサランラップの試作品を実際に持参されていました。実現可能性が高く評価され、そのチームが学内大会で優勝しました。

学内大会で優勝したチームの次のステップは地域大会への参加です。そこでも再び選考が行われ、その先のアクセラレイトプログラムにおいても優秀なチームがようやく8月に国連で開催予定の決勝に進出できます。

Q9.8月に決勝戦が行われるということですが、大会進行にコロナウイルスの影響はあるのでしょうか。

3月頃に東京大会を実施する予定だったのですが、それもなくなってしまって臨時で全てオンライン開催をすることになりました。オンラインでの大会開催は初めてなので、オンラインでどのように大会が開催されるのか未だ明確ではありません。海外大会に行けることがHult Prizeの大きな魅力でもあるので、参加チームをサポートするための新たな試みが必要になると思います。

Q10.今年のICU支部のキャンパスディレクターを務める海南子さんですが、運営として今までに大変だったことはありますか。

実は、去年の活動に満足がいってないんです。というのも去年は活動の土台が整っていなかったため、準備が大会直前になってしまったという反省点があるからです。去年特に大変だったのがメンターの確保です。一般の企業に勤めている方に学生のサポート役であるメンターになってもらえないかどうかをお願いするのですが、先輩方は予定が合わず、一年生のメンバーだけで会社を訪問して、メンターの交渉をする機会がありました。はじめは、大学生が会社に訪問していいのか戸惑いましたが、緊張の中訪問をして無事数名の社会人の方からメンターになってもいいよと承諾をいただけた時はやりきった感がありました。

Q11.リーダーシップをとるにあたって大切にされていることはありますか。

私は自分で全てやろうとしてしまうところがあるので、そこをあえて人に頼るのが大切だと思います。押し付けるのではなく、メンバーを信頼して任せるようにしています。頼られているという感覚がないと一人ひとりに責任感も生まれないと思うので、意識的に仕事をお願いするようにしています。

Q12.今年キャンパスディレクターとしてやってみたいこと、挑戦したいことはありますか?

今年はまず去年の反省をもとに、チームメンバーと計画をしっかりと立てて活動を行いたいです。また秋学期がオンライン授業になるため、そこには新たな試みが必要です。ただそこを悲観的には捉えていなくて、むしろレクチャーをする場所取りをする必要がないことや講師の方にICUまで来ていただかなくても良いことなどを、チャンスと捉えてより多くの参加者を募ることができるように頑張ります。

Q13. 最後に海南子さんが今関心を持っていることと、Hult Prizeに関心のある方へのメッセージをお願いします!

個人的に楽しみにしていることは、コロナでいろいろなものが停滞している中で、こういう時だからこそ、コロナ×起業のような新しい視点がたくさん出ることです。今までとは違った視点のビジネスプランを見てみたいです。

起業にもともと興味があったり準備をしていたりする人はもちろん、少しでも社会問題に興味がある人にもHult Prizeのプログラムに参加いただけたら嬉しいです。

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