ブログ第1弾|より多くの人に知ってほしい〜ミャンマーの声を届ける横山尚子さん

ICONfrontで2021度から始動する「ブログ記事」プロジェクトは、ICU生アクティビストの生の声、持っている思いの可視化をモットーに、アクティビストたちの活動、ビジョン、思いをアクティビスト自身が記事に記して発信する取り組み。
このプロジェクトの第1弾を飾るのは、ID23の横山尚子さん。
クーデターだけでない、ミャンマーの文化の素晴らしさも知ってほしい。そう語る横山さんは、一度ミャンマーに訪れた時からすっかりこの国の虜になってしまった。クーデターの激化する今、「Myanmar’s Voices」という団体を通して、日々状況の変化するミャンマーの今、そしてミャンマーの魅力について発信する。この記事で横山さんは、クーデターの渦中にあるミャンマーの現状、横山さんが活動を始めたきっかけ、日本にいる私たちにできることについて語ってくれている。そして今回、ミャンマーにいる横山さんの友人も、日本にいる私たちにメッセージを書いてくれた。ミャンマーについてあまり知らなかった方、これからより知っていきたい方など、ぜひ今皆さんに読んでもらいたい記事!
執筆者情報

ID23 横山尚子(よこやま・なおこ)
「Myanmar’s Voices」でミャンマーの今を伝える発信活動をする。
専攻:教育、言語教育
部活:バドミントン

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目次

 

ヤンゴンの友人とシュエタゴンパゴダにて。2020/3撮影。
(本人の要望により顔を隠しています)
最初の衝撃

3月初め、ネットニュースを見て凍った。ミャンマーの国軍政権の抗議デモで初めての死者が出たという内容を見たからだ。犠牲者は20歳の女性で、私と同い年だった。(AFP)彼女が国軍に撃たれた場所はミャンマー第2の都市、マンダレー。私が昨年の春に訪れた、最大都市ヤンゴンでももうじき死者が出るのではないか。ヤンゴンでデモに参加している友人は無事なのだろうか。この頃から嫌な予感がし始めた。

ミャンマーで何が起こっているのか

国軍がアウンサンスーチー国家顧問を拘束し、不当に政権を奪うクーデターが起こって、約3ヵ月。軍事政権に対して、民主化を支持する人々は「抗議デモ」「不服従運動(公務員による職場放棄など)」「新しい政治組織設立」という主に3つの方法で、暴力に頼らない抗議を続けている。また、花、靴、イースターエッグ、すいかなどを用いるクリエイティブなデモにも注目が集まっている。それにも関わらず、国軍は武装弾圧を行い、死者数は750人以上、拘束されている人は3,340人(NLD党員、選挙管理委員、抗議者、活動家、医師、ジャーナリスト、作家、芸術家、教師、一般市民ら)と報道されている。(The Irrawaddy 4月26日時点)

命がけで抗議デモに参加する市民の多くがクーデター前までごく普通の生活を送っていた若者だ。残念ながら、治安に関する法律の効力が停止され、裁判所の許可なく逮捕や家宅捜索をできるようになり、多くのデモ参加者が夜間に連行されている。(毎日新聞)

ヤンゴンの友人の1人は3月27日(国軍記念日)に平和的なデモに参加した際、兵士に棒で手首と足を殴られた。その時にできた、こぶし大の痛々しい青いあざの写真を「この傷は(他の人に比べれば)よっぽどましなものだけど(My pain is a lot easier)」というメッセージと共に私に送ってきた。幸いにも、彼女は傍にいた仲間に助けられ逮捕されなかったが、中には逮捕され、性的ハラスメントを受ける女性もいるという。友人が命と隣り合わせの状況にあるという実感が湧き、言葉に表せないほど、ショックだった。

このような状況下において、「犠牲者が増えているのは、市民に国のために死ぬ覚悟があるからだ。このままではすぐに内戦状態になる」と懸念する外交官もいる。(朝日新聞)また、国軍はデモ隊に銃を向けるだけではない。民主派を支援する少数民族武装勢力の支配地域への空爆を始めたり、7歳の子どもが家宅捜索する警察に撃たれたりなどが報告されている。(毎日新聞)

加えて、武装弾圧だけではなく、国軍はさらに、モバイル端末や無線のインターネット通信も遮断した。以前はデモの様子や国軍の弾圧を中継する動画がSNS上(ミャンマーではFacebookが主流)にあふれていたが、今は大幅に減っている。(4月20日時点、朝日新聞)ちなみに家庭用のwifiなどで連絡をとっている市民もいる。

また、銀行は職員の不服従運動への参加でほとんどの業務が止まり、「お金を引き出せない。」と3月の下旬にヤンゴンの他の友人がmessengerで私に教えてくれた。武装弾圧だけではなく、生活の面でも国軍は市民をじりじりと追い詰めていると感じた。

治安部隊と衝突するデモ隊。ヤンゴンで2021/3/16撮影(ロイター)
‘Marching Shoes Strike’(靴と花を使った無人デモ)ヤンゴンにて。(The  Guardian  2021/4/15)
Myanmar’s Voicesの活動を始めたきっかけ

私がとあるプログラムでミャンマーに訪れたのは昨年の3月。首都ヤンゴン中心部には背の高い立派なビルも建っていたが、屋台や出店が並び、人々が談笑する、賑やかで素朴で平和な景色が広がっていた。「ヤンゴンでは滅多に殺人事件は起こらない。」と現地の日本人記者から聞くほど、予想以上に治安が良かった。

日本とは比べ物にならないくらい強い日差し。ヤンゴンの友人がくれたミャンマーの日焼け止め「タナカ」の少し強めのお花のにおい。油がたっぷり入っていて、ご飯が止まらないミャンマーカレーのスパイスの香り。この世のものとは思えない程黄金に輝く、寺院「シュエダゴン・パゴダ」の眩さ。そして、何よりもミャンマーの人のフレンドリーで、見返りを求めず親切にしてくれる優しさに感動した。「また戻ってくるね。」とヤンゴンに住む友人と約束した。

それから1年も絶たず、ミャンマーで国軍によるクーデターが起こった。「大好きな国、ミャンマーのために何かできないか。この現状に関心を持つ日本人を増やし、ミャンマーの方たち(日本に暮らす方を含む)を応援できれば。」という衝動にかられ、阪大生が設立した「Myanmar’s Voices」のメンバーに3月の半ばになった。当団体では「ミャンマーのことをほとんど知らない人でも、気軽に知れるように」というモットーのもと、主にクーデターに関する(現地と国際情勢のニュースを1週間分まとめた)投稿を行っている。また、クーデターに関する投稿と同じく大切にしているのが文化に関する投稿だ。豊かな文化を持つこの国の素晴らしさにも触れてほしいという願いが込められている。加えて、各メンバーが参加・運営補助をして、ミャンマーに関するイベントの発信もしている。

ヤンゴン中心部の夜景。奥のパゴダが映える。2020/3撮影
ミャンマーを取り囲む国際情勢

国際社会はミャンマー国軍側の暴力を止める手立てを見いだせていないのが現状だ。国連安保理は3月31日、ミャンマー情勢をめぐって非公式協議を実施した。国軍側に制裁を科す方向で一致できるかが焦点だったが、国軍と関係を持つ中国やロシアなどが反対し、まとまらなかった。

一方、EU、米国、英国はミャンマー国軍によるクーデターと市民への激しい弾圧の責任を問い、国軍系企業などに制裁を発動している。

また、ASEAN諸国は4月24日に首脳会議を行った。評価する声がある一方、ミャンマー国内では拘束されたアウンサンスーチー氏らの解放要求が合意に含まれなかったことに失望も広がっている。(朝日新聞)

独自の関与外交をとる日本政府

日本政府は、西側諸国で唯一ミャンマー国軍とのパイプを持つ国として、米欧とは異なった対話路線をとっている。

日本はミャンマーのかつての軍政時代から、米欧とは一線を画した関与外交で、ミャンマーの民主化を後押ししてきた。今回も米英などは制裁を発動したが、日本はデモ隊への暴力が激化した今も制裁について明言を避けている。ミャンマー政府への新規ODAは当面、原則見合わせるが、制裁としては打ち出していない。(朝日新聞)

ミャンマーのために何ができる?

個人的見解に過ぎず恐縮だが、「世論はミャンマーの現状に関心を持っている」ということを日本政府に伝え続けることが大事だと思う。国際的にミャンマーの現状打開の重要な立場にいる日本。そこに住む私たちがプレッシャーをかけて、政府をミャンマーの現状打開に積極的に関与させ続けることが状況の改善に繋がるのではないだろうか。

そのために、できることはいくつかあると信じている。例えば、SNSなどでミャンマーの現状に関して呟いたり、クーデターに抗議する署名活動に協力したり、ミャンマーで暮らす人々への募金活動に協力したりなどだ。また、日本で暮らすミャンマーの方が主体となって行っている「ビラ配り」のビラを受け取るだけでもミャンマーの方の支えになりうると思う。

もし、この文章を読んで、ミャンマーのことが少しでも気にかけてくれたら嬉しい。

募金活動の一環。チャリティーグッズのお弁当袋(国際ミャンマー学者・専門家協会主催)
ミャンマーの友人からのメッセージ

ヤンゴンに住む友人(20代前半)が今回のために、海外にむけてのメッセージを寄せてくれた。

 ~以下本人から~

(※原文は記事の最後で紹介)
(※ジェネレーションZ…軍政下にあった前世代よりも比較的自由な環境で育ってきた主に24歳以下の若者)

まず、こうしてミャンマーのCDM(市民による不服従運動)についてお話しできることをとても嬉しく思います。 特に、海外とミャンマーの繋がりが遮断されている今、この機会は私にとって宝くじのようなものです。 

私は世界中で多くのCDMを見てきました。 しかし、私たちの国と他の国との違いは、ひどく人権が失われているということです。発展途上のミャンマーの人々は、民主主義がなかった時代に、政権指導者の子供や、エリートの役員や幹部に、すべてにおいてより多くの特権を与えていました。 私たちのような一般の人々は、役人の汚職によって多くの苦しみを味わってきました。

先に、私たちの国の歴史の中で最も重要な大規模抗議活動のひとつである、1988年に行われた全国的な政治運動を紹介します。 その運動には、市民、警察、僧侶、映画スター、女優などが参加しました。1988年、上級大将は占星術師の助言で多くの人々を殺害しました。 確かに、占いの助言によって大量虐殺が起こったと聞くと不思議な感じがするかもしれません。 しかし、その占星術師の助言は現実のものとなったのです。 私たちの国は、当時、それほどの過激なリーダーたちによって支配されていました。 今年2021年には、1988年のようなことが再び起こるでしょう。私たちミャンマーの人々「ジェネレーションZ」は、1988年にはもっと団結していたと思われます。

私たちのような小さな非武装の発展途上国は、再び、軍事政府に支配されたくないと思い、国際的な助けを求めています。 小さな国にとって、国際的な援助と発言は最大の希望の一つです。今回の政治運動の結果、私たちは仏教徒、キリスト教徒、イスラム教徒のような他の宗教の人々とより団結するようになりました。若くて才能のあるヒーロー、「ジェネレーションZ」は、銃、煙弾、催涙弾を含む兵士や警察の攻撃から盾だけで守られています。プラスチックの盾で弾丸を守るのはおかしいですが、人間の力と団結力を示すものであり、私たちの人々にとっては素晴らしい瞬間でした。

特に、悪い歴史の中で有名な、このラインタヤ地区(ヤンゴン北部)の人々に感謝したいと思います。その場所は、泥棒や殺人者などの悪人であふれていると聞いていましたが、彼らには優しい心があり、私たち「ジェネレーションZ」を守ってくれました。ある男性は私にこう言いました。「我々は教育を受けておらず、非常に年老いています。そのため、死ぬことができます。しかし、あなた方(若くて教育を受けた学生や人々である「ジェネレーションZ」)は、明るい未来に向かって進まなければなりません。だから私たちはあなたたちを守らなければなりません。どうか私たちのために安全でいてください」。

私たちは銃を一丁も持っていませんでしたが、軍事政府は最終的には子供やお年寄りを含む700人以上の人を殺しました。 逮捕された少女たちは、セクシャルハラスメントや身体的暴行も受けました。

私たちの目的は同じです。民主主義を取り戻して、未来のためにベストを尽くすことです。 私たちは抑圧された階級になりたくありません。 国際的に恥ずかしい思いもしたくありません。 ただでさえ先進国も不況に悩まされているというのに、私たちのような小国はより大変な状況にあるのです。 このような状況下でのクーデター軍団の行動は、非常に嫌なものです。 我々は常にクーデターに反対します。 私たちの国民は、クーデターの背景や軍事政権の将来の計画を知っているので、軍事政権を決して受け入れません。私たちは今でも、リーダーと民主主義を取り戻すために努力しています。私たちは決してあきらめません。私たちのCDMのヒーローに感謝します。医師、エンジニア、弁護士、教師、学生、そして私たちと一緒に立ち上がっている人々に感謝します。


※以下の点にご了承下さい。

ミャンマーの情勢は日々刻刻と変わっています。そのため、このブログに記載されている情報がすでに古くなっている可能性があります。
私はただの一学生で、専門家ではありません。信頼性の高い記事を参照するなど極力努力はしていますが、本内容は事実と異なる部分あるかもしれません。
個人的見解の部分は私一個人の考えで、団体「Myanmar’s Voices」の意見ではありません。

参考資料

AFP「ミャンマー抗議デモで初の死者、頭撃たれた20歳女性」2021.2.19 

The Irrawaddy「Myanmar Regime Threatens Severe Action Against AAPP」2021.04.21

毎日新聞 「ミャンマー軍のデモ鎮圧 民意の封殺は許されない」2021.02.28

朝日新聞「ミャンマー情勢、打開模索 域内に温度差も ASEAN首脳会議」2021.04.25

毎日新聞「ASEANとミャンマー 地域安定の責任果たす時」2021.04.27

BBC「7歳少女を射殺 ミャンマー警察、家宅捜索中に」2021.3.24

朝日新聞 「ミャンマーに暴力停止要求 国軍トップ出席 ASEAN首脳会議」2021.04.25

朝日新聞 「(地球24時)EU、ミャンマー国軍系企業に制裁」2021.04.21

朝日新聞「独自外交、軍に働きかけ ミャンマーODA閣議決定見送り」2021.03.10

朝日新聞「ミャンマー新規ODA停止「制裁」とはせず 日本政府調整」2021.02.25

The Guardian 「Myanmar’s lost generation: nation’s youth sacrificing futures for freedom」2021/4/15

ミャンマーの現地メディアウェブサイト

Myanmar Now:https://myanmar-now.org/en
The Irrawaddy : https://www.irrawaddy.com/

ミャンマーの友人からのメッセージ原文

First of all, I am very happy to be able to talk about CDM in Myanmar like this.  Especially at a time when we have been cut off between the international and Myanmar, this opportunity is like a lottery for me.  Firstly, I would like to say I have been seen many CDM around the world.  But the difference in our country is that we are losing more human rights than any other country.  When someone asked how human rights are being violated in ur country,there are some answers I would like to answer.  Even if it were not for the political era, our developing Burma people would have given the children of the junta leader , the officers and officers of the elites more privileged in everything when we did not have democracy.  Ordinary people like us have suffered a lot from the corruption of officials.  I would like to tell to the world about one of the most significant mass protests in the history of our country.  It was a nationwide political movement that took place in 1988.  People, police, monks, movie stars and actresses were all involved. In 1988, the senior general killed many people on the advice of an astrologer.  Yes, you may find it strange to hear that.  But the astrologer’s advice came true.  Our country has been ruled by such extremist leaders at that time.You can read more about 1988 on youtube (or) Google.  I swear You’ll understand what kind of junta leader is.This year, in 2021, we will have something like 1988 again. We, the people of Burma (Generation Z), were more united in 1988. A small, unarmed developing country like ours, once again, called for international help because it did not want to be ruled by a junta leader.  For small country, international help and speak out is one of our biggest hope. As a result of this political movement, we became more united with other religions peoples like Buddhist,christian and Muslim.Our young,talented hero GZ are protected defense with only shield from the soldiers and police attack including guns,smoke bomb and tear bombs.It’s funny to defend a bullet with a plastic shield but it was a lovely moment for our people.  That showed  human power and human unity. I would like to thank the people of Hlaing Thar Yar here who are famous in bad history. We heard That place is filled with bad guys, kind of thieves,and killers. But they have a kind heart , they protected in front of Young GZ. One of man is said to me like that “ We’r uneducated and very old.We can died because we’re priceless. But You ( Generation Z who are young and educated students and people ) must go forward to your brighter future.We must not allowed to died this Talented Young People. So We must protect infront of u.Please be safe for us” . How kind and friendly guys.My eyes can’t stand anymore to down more tears when I heard that.We did not carry a single gun, but in the end we killed more than 700 people, including children and the elderly.  Arrested girls were also subjected to sexual harassment and physical assault. We all have the same goal: to get democracy back so that we can try our best for the future.  We do not want to be an oppressed class.  We do not want to be embarrassed in the international area.  Even small countries like ours are struggling to keep up with the recession, even in developed countries.  The actions of the coup junta at this time are very disgusting.  We will always oppose the junta.  Our people will never accept it because they know its background and their plans for the future.Now,We still try to get back out leader and democracy. We never give up.Thank You for our CDM hero.Thank you for our Doctors, Engineers,Lawyers,Teachers,Students and people are still Stand by with us.Please request to more Speak out for our county.


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