ICUのキャンパス内で畑づくりを行うICU Slow Vill。AdminメンバーのID21 岡田光さんにインタビュー!

ICONfrontインタビュー第19回目は、ICU のキャンパス内で畑作りをするICU Slow VillのAdminメンバー、ID21の岡田光さんにお話を伺いました。

ICU Slow Villが日々ICUでどのように畑を耕しているのか、普通の畑との違いはもちろんのこと、Admin メンバーの岡田さんが畑づくりに興味を持ったきっかけや畑づくりの魅力、学生が地域に携わる意義についてもお話しいただきました。

ぜひお読みください。

Q1. 岡田 光さんはどのような活動をされていますか。 

ICU Slow Villという社会学の山口富子教授の研究プロジェクトに所属しており、キャンパス内の100㎡ほどの小さな区画で、環境にできるだけ負担をかけない方法を模索しつつ、Slow VillのメンバーであるICU Farmer がチャレンジしたい作物を食用にかかわらず幅広く育てています。活動を通して、食や農、コミュニティなどについて考えられる場を作りたいと考えています。

Q2. 現在、ICU Slow Villの畑では何を育てられているのでしょうか。

今は主に夏野菜ですね。トマト、なす、オクラ、落花生、いんげん、大豆など、メンバーが育てたいと思ったものを中心に育てています。食物を食べることに関心があるメンバーだけではなく、藍染をするために藍を育てる人もいますし、綿花を育てているメンバーもいます。みんなが育てたいものを出来るだけ育てられるように私を含めたAdminメンバー4人で畑をアレンジしています。

また日々の畑作業に加えて、月一のギャザリングイベントを通して種の交換会やさつまいもの苗植え、収穫祭などを行いメンバー間の交流を図っています。年に一度ほど、大学教授や地元農家の方々、地域の方々を交えた交流会やシンポジウムも開催しています。

ICU Slow Villは研究プロジェクトと位置付けられてはいますが、実際はほぼサークルのような形で学生主体で運営しています。Adminメンバーも全員学生です。

現在50名ほどがICU Farmerとして参加していて、学生から留学生、市民の卒業生の方々、教授の方々などいろんな方々が畑に集まって参加しています。

※活動時間外は施錠されているため、自由に中に入ることはできません。
 ICU Slow Villの活動に興味がある方は、インスタグラムアカウントに直接ご連絡ください。

Q3. 改めてICU Slow Villの特徴、一般的な畑との違いについて教えてください。

一般的ないわゆる慣行農業で使用される化成肥料や農薬、除草剤などを極力使用せず、自然環境や土壌生物に負荷のない天然系の殺虫剤やECO堆肥などを用いて、食物を育てています。ICU Slow Villのメンバーも知識がある人ばかりではないので、iPhone片手に、本を片手にという形で活動しており、毎日模索の日々です。

Q4. 畑で使用されている「ECO堆肥」とはどのように作られるのでしょうか。

JA東京むさし三鷹地区青壮年部という若手の農業後継者団体の方々が主体となり、大沢にある東京大学運動会馬術部からの馬糞とICUの落ち葉を使って、有機堆肥、ECO堆肥を作ってくださっています。JA東京むさし三鷹地区青壮年部の方々がICUの一角を借りてECO堆肥を作られていた繋がりから、本来は三鷹市内の農家さん向けの堆肥なのですが、毎年春にICU Slow Villの畑にも少し分けていただいて活用しています。

Q5. 岡田さんがICU Slow Villの活動を始めようと思ったきっかけを教えてください。

もともと高校の時から社会問題という切り口で食と農業の分野に関心があり、大学では持続可能な食料システムについて学びたいと思い、ICUに入学しました。

私の通っていた山形の高校では部活動が特殊で、サッカー部などの一般的な部活動が一切なく、その代わりに畜産部や米部、パンを作る製パン部など農業高校のような部活動ばかりでした。私は畜産部に所属していて、ジャージー牛と豚と鶏を飼育して、毎朝牛乳を絞って…みたいな生活をしていたので、当時から体を使って働くことや自然に触れることが好きでした。

大学入学後も実践や身体を通した学びをどこかでできたらいいなと思っていた中で、ID19の先輩からICU Farming Project (現在のICU Slow Vill) を始めると聞き、参加したいです、と即答して、2018年春にプロジェクトに参加することになりました。

Q6. ICU Slow Vill の畑を運営する上で工夫されている点はありますか。

工夫している点でもあり、ICU Slow Villの活動開始から大きく変化したところでもあるのは、畑の運営方法です。当初はメンバー1人1人が1区画を担当し、各自が育てたい野菜を育てる形式で畑を行なっていました。各自が育てたい野菜を育てられるのは良いのですが、夏休み期間などの長期休暇中にはメンバー全員が畑の手入れを行うことは難しく、「隣の区画に野菜がたくさん実っているのに他の人の畑だから勝手に収穫できない…」みたいなことがよくありました。それはもったいないとメンバー間で話し合い、今年からコミュニティ全体で野菜を育て収穫もできるスタイルに変更しました。区画分けを緩やかにしたことで、以前よりもメンバー皆がチャレンジしたい野菜を育てられるようになり、育てている野菜の種類も増えているかなと思います。

以前はグループ化していたところから、今は全員で取り組むようになって、そのやり方を統一したという形ですか?

そうですね。みんなが自分の作物だけに責任を持つのではなく、全体の作物に責任を持つようにしています。時間がなくて十分に手入れができない場合でも、その現状を全体に報告するなど工夫して管理しています。

Q7. ICU Slow Villならではの魅力を教えてください。

ICU Slow Villのメンバーが様々なビジョンを持ち寄って参加しているところは、団体の魅力であり強みであると感じています。例えばICU Slow Villの畑を借りている「フロスク」という団体があるのですが、その団体は0から全てを作ることに挑戦をしているストイックでユニークな団体です。一昨年には0からラーメンを作る試みをしていて、有精卵から雛を孵化させて鳥を育てたり、器にするお椀を自分たちで作ったり、包丁を叩きに金沢の方まで行ったりしていました。

また「Glocal三鷹」という団体はICUの留学生に向けた日本の文化や生活との交流を促している団体なのですが、活動の一環でSlow Villの畑を借りて活動をされているおかげで、ICU Slow Villの中では留学生とも交流がとても盛んです。

Q8. ICU Slow Villでの活動を通して、新たに気づかれたことはありますか。

ICU Slow Villで畑作業を始めてから気づいたことや学びは沢山あります。今年の春には、メンバーそれぞれが撒きたい種を持ち寄って種の紹介をする「種の交換会」を行なったのですが、そこでも新たな気づきがありました。種と一口に言っても結構面白いんです。スーパーやホームセンターで売っている種は種子消毒をされていたり、赤く薬でコーティングされたりしていて、種本来の形や姿って皆さんあまり見たことがないと思います。種の交換会をした際には、「本当は人参の種ってこういう形してるんだ」とか、「かぼちゃの種ってこういう形してるんだよ」っていうことを紹介しあったりして、実際に種に触れることで新たに気づくことがありました。

種のことをもう少し詳しく話すと、F1というのが今主流な種の種類で、今ほとんどの農家さんが使われている種なのですが、実はF1の種は作物の特性を次世代に継ぐことができません。他にも在来種、固定種と呼ばれるものなど本当にいろいろな種類の種があるので、種の交換会を通して、種について掘り下げることもしています。

また種から少し視点を広げて自然環境のことで言うと、ICU Slow Villの畑はICUに住むオオタカが営巣して子育てをする場所でもあるので、オオタカに危害やストレスを与えないことがとても大切です。そのため、できるだけ静かに作業をしたり周りの環境を考えて活動をしたりしています。また今年の春からミツバチを飼っているのですが、花が咲く時期が一気に来てしまうと、ミツバチの餌となる蜜や花粉が持続的に供給できない状態になってしまいます。それを防ぐため、できるだけICU Slow Villで咲かせる花の開花時期にばらつきが出るように作物の配置を調整したりします。

Q9. 学生が畑活動に参加する意味・意義を教えてください。

すごくシンプルなことなのですが、気分転換をするという意味で大学生にとっては重要なのかなと思います。ずっと勉強していると精神的にも疲れてくるので、草刈りをするなど、自然に出ることで落ち着いたりするんです。

あとは、普段スーパーに行って買ってくる野菜が、どれだけ大変な苦労のもとにできているのかということを、自分で野菜を育ててみることでわかってくるということがあります。例えば、最近ではメディアで環境などに関心のある学生が増えているなかで、有機農業などにも関心がある学生がいると思います。そのようなメディアなどを通して得た知識として、有機農業が良いと思っている人も多いです。地産地消プロジェクトで関わっている、主に慣行農業をしている地元の農家さんは、できるだけ少ない量の農薬を使いながら作物を育てています。そういった慣行農業の方々があんなに立派な野菜を育てているすごさも感じられたりします。なので、有機農業が良くて、慣行農業が悪いとは一概には言えないです。本当に有機農業100%になった時に、人口を賄えるだけの食料が作れるのか、それだけの技術を練り上げられるのか、という疑問があって、単純に二項対立できないという気づきがあったりします。

自分たちで実際に育ててみて、全部虫に喰われて作物がなくなるなどの経験をすると、必ずしも何が良くて何が悪いという単純な世界ではないということがわかったりするので、そういったことも意義の一つとしてあると思います。

Q10. 学生一人でも取れる身近なアクションとしてどのようなことができますか。

消費者として私たちが手軽に関わる方法としては、やはりその土地の農産物を応援することが挙げられます。あとは、都市農業に絞って考えると、都市農業の意義は様々です。輸送などの環境的や金銭的な面や、都内の緑化政策の一部としても取り上げられたり、緊急時には避難所になったりだとか、多方面に渡ります。そういう意義を消費者が知って、都市農業が大切だというこ再確認することも重要なのかなと思います。そういう意味でも私たちが都内で身近にとれた野菜を買うなどの行動をとることで、都市農業が認められていって、政策的にも少しずつ支援が入ればいいなと思いますね。

また、三鷹は農家さんが多い地域ではあると思うのですが、普段生活しているだけでは、畑がどこにあるのか、どんな人が育てているのか知る機会がないと思います。なので、大学生である程度フリーな時間があるという方がいれば、自分で農家さんとコンタクトを取って援農するなど、そういったことも一つの大きな試みかなと思います。

Q11.  社会に訴えたいこと、伝えたいことはなんですか?

五感を通して得たことを取り込んで、言葉にしていくこと、他者と共有していくことです。

Q12. 五感を通して取り込んで他者と共有するということは、畑だけにとどまらずということでしょうか?

畑以外にも通ずることはもちろんあるのですが、ここで描いたのは主に畑のことです。私たちが教科書で学ぶ知識は、あまり想像力が及ばないというのが多くあると思います。そのため、畑に赴いて草刈りをする、野菜を収穫する、種に触れる、草を刈った時の匂いを嗅ぐなど、自分の体を使う経験が大事だと思っています。そういった知識だけじゃない経験が、物事を考える上で説得力のあるベースや自分の根拠になると思います。だからこそ、自分の目で見て触れて嗅いで食べて聞いてという行動が、自信を持って自分が持てる知識と経験になるなということを実感しているので、そういう機会が社会全体にあるといいなと思っています。

Q13. これからどのようなことに挑戦していきたいですか。

まずは参加してくれているメンバーが好きなタイミングで畑で作業をしたり、イベントを企画したりできる団体内での仕組み作りをしたいです。援農や、農家さんから野菜づくりなど食や農について学ぶなど、地元の農家さんとの関わりを持つ機会作りもしていきたいですね。また、キャンパス内で出た生ゴミのコンポスト化や、大学の一般教養科目への取り組みなどの大学全体に関わるようなことにも挑戦していきたいと考えています。

Q14. 大学の一般教育科目への取り組みというのはどういった形での取り組みですか?

例えば、アメリカの大学だと、キャンパスファームがあって、そこではサークル的な活動の場だけではなく、実習の場や、学食に出す作物を育てる農場としての機能を持っていたりします。ICUはリベラルアーツという特殊な教育をしているということもあって、メジャーを越えた学びとして、そういった実践の場として畑というものがあるといいねという話はずっとあります。具体的にいうと、ICUのジェネードで一年を通して畑を耕して種を植えるところからお世話をして収穫をしてみんなで食べるという、一連の作物の食料システムの流れを経験できるコースができるといいねというものです。これは主にICU Slow Vill内の話というよりは、ICU slow illと顧問の山口先生や環境研究の藤沼先生などの先生方と普段話していることです。

[過去の関連インタビュー記事]

『コラム廃棄物 落ち葉を堆肥に活用し、持続可能な農業と社会のあり方を学ぶICUの取組みとは?』

リンク:https://operationgreen.info/case_compost/?fbclid=IwAR0fxCBPAaU47yDN4Z718apn9scbMsAsT3GxEp2rPX-h0ZdTG9p63IUy_qU

Earth Company(https://www.earthcompany.info/ja/about-us/

[ICU Slow VillのSNSアカウント]

Instagramアカウント:https://www.instagram.com/icu.slow.vill/

Facebookアカウント:https://www.facebook.com/groups/538589923316085(非公開グループ)

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