大学生が古着を売る理由―フリマ運営団体own!tのID23植村ほとりさんにインタビュー|Part 1

今回のインタビュー第20弾では、フリーマーケットの運営やSNS・ポッドキャストでの発信をされている団体own!tの設立者、ID23の植村ほとりさんにお話をお伺いしました!

「恥じることなく堂々としよう」という意味が込められたown!tは、フリーマーケット(フリマ)で古着などを販売する傍ら、SNSとポッドキャストでメンタルヘルスやポジティビティを意識した情報を発信中。

Part 1では、「大学生は色々な場面で自分を他人と比較し、着飾ってしまいがち」と感じたことから、フリマをしよう、と思い立った経緯や思い、サービスラーニングでの発見、社会問題に対して無関心な層へのアプローチ方法についてお聞きしました。

古着の販売やSNSの運営を通して追い求める、利益ではないものとはー?ぜひ記事をお読みください!

ーー 植村さんはどのような活動をされていますか?

 「自分の要らなくなったモノは他の誰かの欲しいものかもしれない」を掲げて、フリーマーケットを運営しています。また、ネガティブな印象の強いSNSで少しでも多くの人が自己肯定感を保てるよう、ポジティビティを提供することを目的に活動しています。インスタグラムでは、フォロワーさんを巻き込んだ企画を行い、ポッドキャストでの配信もしています。

ー 団体名 “own!t” の由来を教えてください。

 フリマをしようという目的だけで始めた団体だったので、最初は名前がありませんでした。“own it”は、それを「恥じることなく/堂々としろ」みたいな意味なんですけど、私たちがこれからやってきたいことにぴったりだっていう話になって、own!tになりました。

ーー どのようなきっかけで活動を始めることになったのですか。

 私がサービスラーニングで上勝町というところに行く前に、よく友達と、大学生は色々な場面で自分と他人を比べられたり、自分の価値を見せないといけないような場面が多いから、人生で1番敏感で繊細な時期、自己否定してしまう時期なのではないか、という話をしてました。そんな時に、自分の好きなものを好きって言える強さだったり、自分に対しての自信を持っていけたらいいなと思いました。同時に、古着のように「不要になったモノをどのようにしたら新たに価値を見出せるかを考えること」は私たち大学生に似ていると感じました。

ーー own!tの活動を始めた2020年3月は、ちょうどコロナが流行し始めた時期と重なっていると思います。どうしてこの時期に団体を設立することになったんですか。

 すごいいきなりだったんです。その頃に、私が環境問題に興味を持ち始めました。色々な授業を取る中で、日々、サステナビリティのこととかを結構考えてたんです。

 色々なブランドが、リサイクルした生地などを使って洋服や靴を作っていると思います。でも、結局そういうところではリサイクルできているかもしれないけど、2週間に1回とか新作が出続けて、売れ残りは処分するような形だと、あまり変わらないし、むしろエネルギーを出しすぎてるんじゃないか、みたいに考えてたんです。その時、「自分たちでフリマしたいかも」と、ふと思ったんです。確かあれは、キリスト教概論の授業中でした(笑)今own!tにいるメンバーも同じ授業をとってたので、フリマをしようと思った理由とかを深掘りしていって、開催することにしました。

 でも、その時ぐらいに緊急事態宣言が出て、私達がしようと思ったことが全くできない状態になってしまいました。それでも知ってもらうために、最初はオンラインで販売してたんです。インスタに服や着こなしコーデを載せて、メルカリみたいな軽い感じで始めました。

秋以降は、ポップアップストアのように一般人でもできるんだっていうことに気づいたので、自己資金でフリマを開いて、売り上げなどもそちらの経費に回してます。

ーー 活動を始めたときは、どんな気持ちでしたか。緊張や不安などはありませんでしたか。

 始めたときは、緊張や不安はなく、ワクワクした気持ちでした。まず一人でやってる団体じゃないので、みんながいるっていうのもあったと思います。組織化するよりは、無理せず自分の時間がある時にやってる団体にしたいです。最近はDMでもown!tに携わりたいと言ってくれる子も多いので、私たちももう3年生ですし、他学年の新メンバーを迎えるのもありかなって思うようになってきました!

 スタートの時も、利益を求めてこういう団体を作るっていうことは、もともとそこまで深く考えてなかったんです。利益よりは、いらなくなったものを「誰か使ってください」と渡す感覚でみんなにも出してもらってるから、スタートの時からゆるく考えてたんだと思います。

ーー 先ほど、 古着を通して「不要になったモノをどのようにしたら新たに価値を見いだせるかを考えること」は大学生に似ているとおっしゃっていましたが、どのようにしてこの考えに至りましたか。

 今まで自分も友達も、ICUで色々なコミュニティや学生団体に入ってる人と比較していました。そこで比較して、自分のいいところを見るんじゃなくて、自分の悪い所や劣っているところを見て、気にしている人が多いと感じてました。

 でも、みんなには、自分は特別だったり価値ある人間と思ってもらいたいです。少し着飾って自分ではない何者かになってしまう人が多いし、自然とそうなってしまう社会ではあると思うんですけど、気づいていないだけで、自分にしかない強みや個性は絶対あると信じています。今は個性を出せる場所がないかもしれないけど、その個性をすごく生かせる場所や職が色々あると思うので、自分の個性を発揮できるにはどうしたらいいのか、という風に思考回路をシフトチェンジできたら、みんなの自己肯定感も上がるし、考え方が少しでもポジティブになるんじゃないか、ということをown!tのメンバーと話してます。

 古着は、それぞれ価値観が違う下で成り立つものだと思います。自分にとってはいらないものかもしれないけど、他の人からしたらそれがちょうど欲しかったものかもしれない。今ある自分の個性、持っているものを発揮できる場所は必要かなと考えます。

ーー メンバーのみなさんと、フリマの運営、ポッドキャスト、SNSの発信など様々な活動を行ってらっしゃいますが、何か苦労したことや大変だったことはありますか。

 団体を立ち上げるのも、新しい企画を作るのも、言い出しっぺはいつも結構私になるんです。始めたのが私っていうのもあるので、メンバーの皆が自分の意見を発信したりするのに控えめになっちゃうことが多くて。だから、みんながやることがないような状態にならないように役割を振って、ちょっと責任感を持って自主的に行動できるようにするのは心がけてます。でも、メンバー全員のモチベーションの維持がすごく難しいと思います。   

 他大学の団体と一緒にフリマを開催した時には、当日の予想外のハプニングが大変でした。お互い似ていることをしているかもしれないけど、団体の目的とか雰囲気は全然違うので、一日、一つの空間で同じ雰囲気にもっていくことがすごく難しかったです。

ーー own!tの活動では、どのような社会問題の解決に貢献したいと考えていますか。

 最初は、サステナビリティ・環境問題だけを考えていました。何か新しいものを生み出すのではなく、元々あるものに何か価値をつけたり、他の欲しいと思ってる人に届けられたりしたらいいなという感覚でフリマを始めました。

 世の中には、フェアトレードやサステナビリティを謳って販売されている商品がいっぱいあって、環境や社会に良いから買うっていうことは素敵だと思います。でも、本当にいろんな人にアプローチするためには、自分が可愛いとか欲しいと思って買ったものが、たまたまサステナブルなものだった、フェアトレードのものだったっていうほうがいいし、買った人も「実はちょっと貢献できたんだ」みたいに思える。そういうことが当たり前になる方がいいのかもなって考えて、あまり社会問題を感じさせないような団体を作りたいと思い、片隅に置いて活動しています。

ーー サステナビリティや環境問題に目を向けるときに、先ほどおっしゃっていたサービスラーニングで訪れた上勝町での学びや経験は何か繋がっていますか。

 すごく繋がってます。私が行ったところが、上勝町ゼロウェイストセンターっていう施設なんですけど、上勝町自体が、ゼロウェイストのために色々活動している町なんです。私はその時、環境問題とか社会問題に全く興味を持ってない人、全然知らない人にアプローチする方法をずっと考えてたんです。説明会とか講演会みたいなものを開いても、興味がある人だけが集まって、そこの理解力が深まるのはすごくいいことだけど、もっと全然興味がない人達に伝えるにはどういうアプローチ方法があるのかなと思い、その町に行きました。

 上勝町に住んでる人たちは、環境問題に元々意識があったり、色々考えて生きたりしてるっていうよりは、住んだ地域がそうだったから自然とそういう考えになったっていう人がほとんどです。町の人口がすごい少なくて、一回もゴミ収集車が走ったことないんです。ゼロウェイストセンターっていう所とゴミステーションに、わざわざ町民の人がゴミを捨てに来るんです。そこでもゴミが45分別されていて、生まれた時からゴミを分けることを考えている地域みたいです。あとは、すごく自然が多くて、お店も夜の7時くらいに閉まっちゃいますし、定休日週2日とかでやってるお店が多かったです。時間の流れが、東京や大阪と全然違うし、穏やかな人も多いと思いました。

 そこで、自分たちの生きる環境は、私たちの意思決定とか価値観とかにも深く結びついてると感じて、余裕を持って生きる事ってすごい大事なんだなって思いました。私は1日の予定を色々詰め込んじゃうので、全部やってやっと寝れるみたいな感じなんです。でも、余裕を持つことによって、周りの友達のことを気遣えるようになったり、社会問題も考えられたり、他者や自分の環境を見つめ直すことができるようになります。 

 今までは社会問題に興味を持たない人が多いのは、その人たちが興味を持ってないことが悪いことだ、みたいに考えちゃってたんです。でも、自分のことでいっぱいになってしまうような余裕を持ちにくい社会になってしまっていることのほうが問題なのかもしれない、ということに上勝町に行って気づくことができました。だから、自分はこれからも余裕を持って生きていきたいし、少しでも多くの人に余裕を持って生きてもらえたらなって思ってます。

植村さんが作成した上勝町での体験をまとめた動画

Part 1はいかがでしたでしょうか。Part 2では、アクティビズムと学業やアルバイトの両立、社会問題に興味を持つようになった理由、そして高校でオーストラリア留学をしようと決めたきっかけや留学中の経験についてお話いただきました。Part 2もお楽しみに!


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