学生だからこそ政治に声を上げるー入管問題に取り組むID25宮島ヨハナさんにインタビュー|Part1
ICONfrontインタビュー第22弾では、入管問題に取り組まれているID25の宮島ヨハナさんにお話を伺いました!
宮島さんは、出入国在留管理局の施設に収容されていたウィシュマ・サンダマリさん死亡事件の真相究明を求める学生・市民の会とICUの学生団体IRISに所属し、入国管理局で起きている人権問題(一般に入管問題と総称されます)に対して様々なアクションに取り組んでいます。
インタビュー記事Part1では、宮島さんの現在の活動内容から今の日本で起きている問題、その背後の原因まで、まだ入管問題についてあまりよく知らない人にも伝わるよう、お話しいただきました。
学生が政治に訴えることがどのような意義をもつのか、そしてなぜ今それが必要とされているのか。ぜひお読みください。
Q1. 宮島さんはどのような活動をされていますか?
今年から入管問題に取り組んできました。ウィシュマさん死亡事件の真相究明を求める学生・市民の会では、記者会見やデモを通して、ウィシュマさん死亡事件の真相究明と再発防止の徹底を求めています。また、最近学生団体IRISを作り、これからこのサークルを通して、難民や移民の支援活動や、入管法の国際基準に沿った改正を求めていきたいと思っています。
Q2. 具体的にどのような活動なのですか?
日本は、極端に低い難民認定率、入管内での無期限収容、適切な医療の提供不足、心理的虐待、子供と親を引き離すなど、非人道的な行いが続いています。また、今年の三月には、ウィシュマさんというスリランカ人女性が、入管で見殺しにされました。しかし、この事件の真相究明と再発防止の徹底は行われていません。このことに対して、#JusticeForWishmaというハッシュタグキャンペーンを始めたり、ハッシュタグデモを企画したり、主にオンラインでの活動を行っています。
そのほかでは、BOND~外国人労働者・難民と共に歩む会~やSRSG (Sophia Refugee Support Group) などの支援団体やグループと協力し、記者会見を開いたり、アクションやデモを主催したり、オンラインイベントに登壇したりと、活動は様々です。最近では、他の学生(高校生)と協力して、非正規滞在の若者に関するドキュメンタリー作成にも取り組んでいます。
Q3. いつからその活動を始められましたか?
今年の一月あたりから、高校の卒業論文として入管問題について調べたことが始まりでした。もともと父親が2009年から入管の仮放免者の保証人をしていたこともあり、入管の存在については知っていたのですが、入管での人権侵害について知ったのは今年でした。プロジェクトの一環として、この問題に関わってきた弁護士の方や、ボランティアを長年続けてきた方にインタビューをしたり、レポートを書いたりして、問題について深く知れたことが、今の活動に繋がったのだと思います。
Q4. すでに入菅問題に関わる様々な活動に携わっている中で、ICUでIRISという団体を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
この問題に関わっていく中で、上智大学のSRSGという難民支援サークルに所属している方とお話をして、その方と入管に訪問しに行ったりもしました。そういった活動をしている中で、大学のサークル活動を通して難民や移民を支援することもできるのだなということを実感したんです。私は、その当時は高校生だったのですが、大学に入ってからも支援や活動を続けたいなと思っていました。大学入学後、SRSGとすでに繋がりのあるICUのID24の小嶋ニコラスさんという方を紹介してもらい、一緒に始めようということになってIRISの立ち上げに至りました。
Q5. 学生が政治に変化を求めていったり、訴えたりするにはどのような方法が可能なのでしょうか?
私も以前は政治に興味がなくて、今回の問題に関わったことがきっかけで政治に興味を持つようになりました。今年の4月末に入管法改悪の反対運動に関わった時に、政治家や国会議員の方々がスピーチをしたり、今回の衆議院選挙でもウィシュマさんの動画開示を政策として取り上げる政党がありました。特に私にとって入管法「改正案」が廃案になった経験を通して、国会に声が届くということを身を以て実感しました。
私は、学生だからこそ政治に声を上げることに意味があると思っています。日本は、欧米などと比べると、学生が政治に声をあげるということは珍しいので、声を上げた時にその分注目が集まるのかなとも思っています。確かに、政治というと難しいイメージが学生の中では多いと思います。でも、環境問題や入管問題など、自分が興味のある問題を突き詰めて、その問題の政策などに関心を持って調べていくうちに、自分と政治の関わりも見えてくると思っています。しかしアクションはとても勇気がいることだと思うので、初めはTwitterでリツイートをしたり、問題に関するインスタのストーリーを再投稿したりとか、ハッシュタグキャンペーンに関わったりすることから始めるのも良いと思います。そのようにSNSを通してでも、政治や社会問題に関わることができると思いますし、すでにそういった機会やSNSのプラットフォームもあるので、それを活用できたら素晴らしいと思います。
Q6. 活動は主にオンラインですることが多いそうですが、政治などについてオンラインで声を上げることの強みと弱みを教えてください。
強みは、やはり問題についてより多くの人に一気に知ってもらえることだと思います。SNSだからこそ、ハッシュタグを作ったり、ハッシュタグ自体を検索したりできるので、多くの人に問題意識を喚起することもできます。私が新聞などの様々な媒体に載る中で、インスタやTwitter、ダイレクトメッセージで声をかけていただくこともあります。そうやってSNSを通じて、支援団体や、学生、個人で活動しているアクティビストと繋がることができるので、「人と繋がれる」という面はオンラインでの活動の強みなのかなと思います。
弱みは、デモやアクションのように、対面だからこそ感じられることを経験できないことだと思います。例えば100人集まった時に、こんなにたくさんの人がこの問題について関心を持っているんだ、こんなにたくさんの人がウィシュマさんのビデオ開示を求めてるんだというのをすごく実感できて勇気をもらえます。また、そういう場にはメディアの方も多く来ます。対面でアクションを行っているところが撮影されて取り上げられることによって、メディアを見た方々が刺激を受けることにもつながると思います。そういう意味では、対面の方がアピールポイントがあるとは思います。
Q7. 先ほど、入管法改正案は括弧付きの改正案とおっしゃっていましたが、それはどのような意味ですか。
改正案は入国管理局の法律で、長期収容が一番の問題となっています。入管というのは在留資格を失った外国人が一時的に収容される施設です。例えばイギリスでは、収容期限が決まっていないものの、7日間で仮放免になります。さらに、スペインでは60日、ドイツとイタリアでは、6ヶ月と収容期限が決まっているのですが、日本では収容の期限がないです。長い人だと3年だったり、最悪なケースは7年ほど、何年も収容されることがあります。それに加え、入管というのは刑務所のような場所なんです。刑務所には収容期限がありますが、入管では在留資格を失ったというだけで、いつ出られるか、いつ家族に会えるか、いつまた普通の生活に戻ることができるのかという希望さえありません。それにより、鬱病を抱えてしまったり、最悪なケースだと自殺に至ってしまったりということが相次いでいます。
今回の「改正案」は、この長期収容の問題を解決するために出されたはずなのですが、その内容を見てみると、問題点が多いです。例えば、監理措置制度についてや、送還忌避者に刑事罰を科すことなどが挙げられます。日本では、在留資格を失った外国人の9割は母国に帰りますが、残りの人たちは帰らないのではなく帰れない理由があります。例えば難民申請をしていて、難民認定が拒否された人だったり、日本に何十年も住んでいて、生活の基盤が日本にあって家族もいるという人だったりします。ですから、収容者全員が犯罪を犯しているというわけではないことを理解してほしいです。また、日本の難民について問題となっているのは、日本の難民認定率が0.4%と極端に低いことです。つまり、難民を申請していても難民として受けいられない方が日本にはとても多いということです。難民申請をしている方の中には、母国に帰ったら迫害に遭う危険性がある方などもいるので、そういった理由で強制送還に応じない外国人がいるんですね。もし入管法の「改正」案が通ってしまうと、強制送還に応じない人も日本で刑事罰を科されてしまうことになります。つまりその外国人にとっては、自分の母国に帰って迫害されるか、殺されるか、それとも日本に残って刑事罰を科されるか、どちらかを選べと言われているようなものなんです。
もう一つ問題なのが、難民申請を3回以上した人は強制送還が可能になってしまうことです。これは国際法のノンルフールマン原則にも違反しています。ノンルフールマン原則は、母国に迫害の恐れがある難民を母国に強制送還してはいけないという原則です。さらに国連の恣意的拘禁作業部会からも指摘を受けているので、今回の「改正」案は全く”改正”になっていないんですよね。そういうことを知って、入管法の改悪に反対しなくてはいけないと強く感じて、アクションをしました。
Q8. 日本がこの現状に至ってしまったのは、日本自体が日本国民だけにフォーカスしすぎていることが原因なのでしょうか。
そうですね。やっぱり国民ファーストみたいな面もありますし、この問題を含め、外国人の問題って日本人にとって難しい問題だと思っています。「私は日本人だから外国人の問題は関係ない」と思ってしまう方も多いと思うので、そういう意味でも日本の市民にとって、当事者意識を持ちづらい問題だと思うんですね。この問題に関わっていて、ネットでも外国人嫌い/ゼノフォビアを持っている人をよく見かけます。でもこの問題は日本社会で起こっている現状なので、日本人として当事者意識を持って、非人道的なことが行われないように求めていくことが大事だと思います。外国人に起こっている人権侵害を許してしまう社会は、最終的に権力や社会的地位が低い日本人に対しても人権侵害を許してしまうことに繋がると思います。また、どんなバックグラウンドの人でも人権侵害は許されるべきではないので、非人道的なことを許してしまう社会は、絶対にあるべきではないと思います。
Q9. 仮放免について詳しく教えていただけますか?仮放免の方は自由に生活できるのでしょうか?
それが自由ではないんですよね。入管から一時的に収容が解かれて、入管施設から出られるのですが、仕事も就労もできませんし、県境に行ったり、県から出たりするときも毎回入管に報告して許可を得ないといけなかったりします。あとは健康保険なども効かないんです。また、住む場所も与えられないのでホームレス状態になる仮放免者もいますし、支援者や教会の力を借りないと生活できない現状もあるので、それもすごく深刻な問題ですね。
Q10. 入管問題について取り組む前と今では、どのように宮島さんの中で入管についてのイメージや理解が変わりましたか。
お父さんが仮放免の保証人をしていたこともあるので、私自身、小さいころから仮放免の方と関わる機会が多かったんです。なので、入管のこと自体は知ってたんですけど、お父さんが毎週行く場所、みたいな感じでそれ以外は何とも思っていなく、特に強いイメージは持っていませんでした。人権侵害が起こっていたというのは父から聞いていたのですが、日本は平和な国で人権侵害もないと思い込んでいたので、問題を調べて知ったときは本当に衝撃を受けました。アメリカでBLMのきっかけとなった黒人への人権侵害のように、日本でも人権侵害が起こっているってことに気づいて、すごく衝撃で。メディアでも報道されていないので、もっとたくさんの人に知ってもらわない限り、この現状は変わらないままブラックボックス化されてしまいます。この現状は日本人としても恥ずかしいし、「変わらないと」と感じました。
Part1はいかがでしたでしょうか。Part2では、活動を始めた時の心境、活動していく中で実感したこと、入管問題への関わり方などについてお話しいただきました。Part2もお楽しみに!
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