子どもたちが”自分”でいられる場所を大切にーICUこども食堂の竹田佳奈子さんにインタビュー!


インタビュー第32弾では、ICUこども食堂で活動するID24の竹田佳奈子さんにお話を伺いました。

ICUこども食堂を1から立ち上げた竹田さん。立ち上げる際の想いや、子ども食堂についてだけでなく、子どもたちと関わってみて気づいたことなどについてお聞きしました。

ICUこども食堂が目指す姿や、現代だからこそ私たちが考えるべきことなど、記事から竹田さんの想いがたくさん伝わる内容となっているので、ぜひお読みください!


Q1.竹田さんはどのような活動をされていますか?

主に、子どもの居場所づくりをしています。最終的には子ども食堂を開きたいと思っています。”子ども食堂”といっても、貧困層の子どもたちにお食事を安く提供する場というより、子どもたちからお年寄りまで、地域の人々が1つの食卓を囲んで、みんなで「おいしいね」と言い合えるような暖かい場所を作りたいです。

その前段階として、今は地域の人々や子どもたちと交流できるようなイベントに参加したり、子どもたちのためのイベントを企画したりしています。

Q2.具体的にどのような活動なのですか?

主に2つあって、毎月交互に行っています。

①地域のイベントへの参加

毎月三鷹中央通りで行われるMマルシェでの出店を中心にしています。過去2回は「たねを植えよう」というテーマで出店しました。子どもたちと簡単な水耕栽培キットを作って、お野菜の種と簡単なレシピをお渡しするという内容でした。Mマルシェ以外には、武蔵境でのイベントにも参加させていただいたこともあり、今後ももっと幅を広げていきたいと思っています。

———企画から実施まで、自分たちで考える必要がある印象を受けますが、どのようにテーマを決めたり、準備をしたりしていますか?

テーマ決めに関しては、メンバー間でしてみたいことをリストアップして、その中から選ぶことが多いです。子どもたちが楽しんでくれるか、難し過ぎないか、人的・経済的にコストがかかり過ぎないかを基準にしています。

②子どもたちのためのイベント企画

ICUの近くにある、椎の実子どもの家という場所を中心に活動しています。そこは、子どもたちが放課後に自由に遊びに来ることができる学童のような場所です。今までは、スイートポテトづくりやキャンドルづくりをしました。今後は、椎の実子どもの家に限定せずに、色々な場所でイベントを開催してみたいです。

———どちらのイベントも地域の人々との関わりが多い活動のようですが、どのようにコネクションを広げていきましたか?

顧問の藤沼先生がICU卒業生で三鷹市で働いている人を紹介してくださって、椎の実子どもの家と連携できるようになりました。また、他団体のメンバーから他のマルシェやこども食堂とのコネクションを得ました。ICUから地域へとつながりを広げることができました。

また、今後の活動として、三鷹市でコロマガプロジェクトというものを行いたいと考えています。これは、”子どもたちがローカルマガジンをつくるプロジェクト”のことです。資金面で難しい部分もあるのですが、来年や再来年には三鷹市で実施できるように準備しています。

———”子どもたちがローカルマガジンをつくるプロジェクト”とは具体的にどんなものですか?

10ページ程度の紙製のローカルマガジンを子どもたちが主体となって作成するものです。古くからある工房などに子どもたちが取材に行き、編集を行い、プロのクリエイターがサポートをしながら刊行します。現段階では補助金を全くもらっておらず、費用はメンバー間で負担しているため、取り組みを拡大していくにあたって、経費の補助を探すことを視野に入れながら活動しています。

Q3. いつから活動を始められたのですか?

昨年5月にメンバーを集め始めました。本格的に動き始めたのは昨年10月です。

Q4. それぞれの活動を始めようと思ったきっかけを教えてください。

 私はもともと子どもが好きで、大学生の間に何か子どもに関われるような活動をしたいと漠然と考えていました。また、私は小さい頃からみんなでおいしいご飯を食べる時間が好きで、ある時、コロナの影響で小学生が給食の黙食を続けていると聞いてとても残念に感じました。

 そこから、子ども食堂の活動に興味を持って調べていたのですが、コロナの影響もあり、しっくりくるような子ども食堂を見つけられませんでした。結局何も行動せずにいたのですが、昨年の春に急に思い立って、子ども食堂つくるのに興味ある人いませんか?という内容のストーリーを自分のインスタのアカウントで流してみたところ、思ったより沢山の人からお返事をいただいて、やってみることにしました。

___竹田さんが描く、理想の子ども食堂とはなんですか?

 子ども食堂の元祖は貧困の子どものためのような食堂だと思うし、それはそれでいいし大切なものだと思います。それ以外に私があったらいいなと思うのは、貧困関係なくみんなが集まって楽しく温かくいられる場所、例えば家とか学校で居心地が良くない子どもたちが、食堂であれば安心していれる、自分らしくいれる場所があれば理想的だなと思っています

 その場所を作っていく上でなぜ子ども食堂にこだわるかというと、私が元々食べることだったりみんなで食卓囲んでおいしいねって言い合うことが好きだったので、そういった幸せを共有する時間を作ることができる食堂を中心にしたいと思いました。

Q5. 始めた時はどんな気分でしたか?

 まさか本当に学生団体を始めることになるとは思っていなかったので、不思議な感覚でした。でも同時に、行動を始められたことは嬉しかったですし、子どもたちやメンバーが楽しそうな様子を見る時にやりがいを感じます。

___学生団体を運営する中で大切にしていること、大変だったことはありますか?

 みんなが参加しやすいようなバランスを決めること、そのためにできるだけみんなから、誰が何にコミットしたいのか意見を聞くことが大事だと思います。例えばミーティングにはあまり参加できないけれど、実際にイベントに参加して子供と関わる機会が欲しいと思う子もいれば、イベントの参加よりも活動の企画に携わりたいという子もいます。それぞれがしたい活動に従事できるよう、組織でのコミュニケーションを一番大切にしています。

 大変だったこととしては、団体のルールづくりに苦労しました。活動方針を決める際に、みんながしんどくならないような活動にしたいと考えていたのですが、方針が定まっていないと活動の進捗もゆるくなってしまうことがありました。その時期は、どこまで組織内のルールを厳しくしたらいいんだろうと迷った時期がありました。

Q6. 活動したことでわかったこと、気がついたこと、ぜひICU生に知ってほしいことを教えてください。

正直私は勉強不足で、このような活動をやらせていただいていながら、専門的なことはあまり分かっていません。でも、こうして子どもたちと関わっている中で、子どもたちってこんなに色々なことを考えているんだと毎回驚きます。そこで、私たちももっと自分の心に素直にならないとなって思ったりします。

ぜひ知ってほしいことは、はっきりとは見えないけれど色んな子がいるということです。私自身も、言われないと気付かないことも多いです。そして、つい、何かしら難しさを抱えている子を探して何かしてあげないとと思ってしまいます。でも、みんなにとって居心地のいい場所を作るためには、そういう子どもを探し出すことよりも、みんなに同じように接し、1人ひとりをその子として尊重することが必要なのではないかと思います。子どもたちを見ていると、それがとても上手だなと感じることもあります。

___子ども達が色々なことを考えているというふうに気づいた出来事があれば教えてください。

すごく具体的な出来事になってしまうのですが、例えば、椎の実子供の家にある一つの部屋の前に廊下のようなスペースがあり、その奥に保育園があります。普段は、お部屋の中に子どもたちがいるのですが、その廊下に出て遊ぶこともできます。しかし、保育園のお迎えの時間があることで保育園の子どもたちや親御さんなども通るので、危ないことはあまり廊下ではできないことになっています。

大人はもちろん、子どもたちに対して危ないことはそこでさせないようにしています。ある時、子どもたちがそこで遊ぼうとしていて、大人が「今はだめだよ、そこで遊ばないで」というふうに言った際に、子どもたちが「今の時間はまだ人は通らないから、今のうちにここで遊びたい」と言っていたのがひとつです。また、子どもたちが遊ぶ場所を考えていた際、私たち大人が「広いからこっちで遊んだらいい」と思っている反面、子どもたちは、「そこで別の子がお菓子を食べているから、そこじゃない方がいいと思う」というふうに別の場所を提案していたこともありました。こういうふうに大人たちが気づかないような部分を子どもたちたちなりにしっかりと考えて動いていると感じる機会が度々あります

Q7. 活動をする中で子どもと関わっていて、大変だな、難しいなと感じたことはありましたか?

そうですね、大人で色々なことを経験して分かっているからこそ難しいなと思ったことがあります。女の子が3人くらいで塗り絵をしていた時に、1人の子が、自分の一人称を「僕」と言っていたんです。私には、それがジェンダー的なものなのか、ただ小さい子が自分のことをあだ名で呼ぶのと同じように、癖みたいなものなのかはわからないのですが、その時に違和感を感じてしまう自分がいました。その一方で、子どもたちは当たり前のようにそれを受け入れて、良い意味で何も違和感を感じてなさそうにしていました。

私は大人になる過程で様々なことを知ったからこそ気にしてしまう部分があります。もっと私自身のこの考え方が進んだら、こういった子たちに対して特別扱いをしてしまいそうだと感じていて、子どもと接する上ですごく難しい部分だなと思っています。私たちは様々な経験をしてきているからこそ、多方面に配慮しなければならないと思いがちです。しかし、子どもたちにとってその配慮が居心地が良いものなのか考えたときに、子どもたちだけの空間を見ていると、その配慮が必ずしも良いものではないと感じるときもあるので、そういった面でも子どもたちとの向き合い方を考えていく必要があると思います

Q8. 社会に訴えたいこと、伝えたいことはなんですか?

社会に伝えるほどのことは分かりませんが、私の願いは、子どもたちが自分でいられる場所がずっとあり続けてほしいということです。

___竹田さんは、現在の子ども食堂がどのようなものであると感じていますか?また、どのような空間を子ども食堂で大事にしていきたいですか?

一般的にある子ども食堂がどういう場所なのかというのは、私も勉強不足な面があるので理解しきれていない部分もあります。しかし、例えば子ども食堂ではなく現在の色々な学校を見たときに、ジェンダーの多様性などのように、人と人との違いのようなものに触れる機会が、子どもたちにとっても増えているのかなと思います。それはもちろん悪いことではないと思いますし、重要なことです。でもそれによって、子どもたちが人と人との違いや違和感のようなものに敏感になってしまうのであれば、そういうことを気にしなくても良い空間があってほしいと望んでいます

私自身が成長するにつれて様々な違いとか多様性のようなものをどんどん言われるようになって、その理由はもちろん学年が上がっていったということもありますが、それだけではないのかなとも思っています。そういう面で敏感になればなるほど、子どもたちがすごく純粋に、違いなど何も考えずにただ “その子” として、関わっている様子を見ていて、こういうのって大切だなと感じると同時に、子どもたちはずっとこうであってほしいと思いました。

Q9. これからやっていきたいこと、挑戦してみたいことなどがあれば、教えてください!

団体としてもっと自立していきたいです。今は、既にあるイベントや施設に依存してしまっているので、ICUこども食堂として率先して行動を起こしていきたいと思います。最終的には、何らかの形でこども食堂をやってみたいです。

___竹田さんが理想とする子ども食堂を普及するために、今後のプランはありますか?

現時点では、せっかくICUにいるから三鷹近辺の子どもたちが地域の中でコミュニケーションを生むことができるような子ども食堂と言う場を作りたいと思っています。そのためには子供だけじゃなくていろんな世代や職業の人のつながりが必要だと思っています。例えば、ICUこども食堂のメンバーと子供達だけでも成り立つとは思うのですが、私たちが作りたいのは、それだけじゃなくて地域のおじいちゃんおばあちゃんたちと交流できたり、農家の人たちの野菜で作った食事などを提供できるような場所です。子どもたちは様々なことを教えてもらえるし、おじいちゃんおばあちゃんたちも子どもたちから元気をもらえると思います。そして、農家の人が食材を提供してくれたら、子どもたちは美味しい野菜を食べることができるし、その姿を見て農家の人たちも幸せな気持ちになる。そういったお互いに幸せを提供し合うコネクションがあれば、私が思い描いている子ども食堂という居場所ができると思っています。そのために、今の地域の人たちとの関わりを大切にすることが重要だと感じています。もちろん、色々な地域でできたら素敵ですが、現実的な面を考慮して、三鷹やICU近辺ということをゴールにしています。


【ICUこども食堂のSNS】

Instagramアカウント:@icu_kodomoshokudo

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