展示会開催を通じマイクロプラスチック問題の実情を広める環境アクティビストにインタビュー!

サラ・ニーハウスさんはドイツ出身の1年留学生(OYR)で、アクティビストとして環境問題に熱心に取り組んでいます。
今回のインタビューでは、マイクロプラスチックに関する展示会の開催経緯、アルゼンチン、ドイツ、日本の環境意識の違い、そして蜂の絶滅に関する研究への今後の展望についてお聞きしました。

Q1. アクティビストとしての活動について教えてください。

活動を始めたのは、2019年10月。ICUで開催したマイクロプラスチックに関する展示会の企画を始めた時です。展示会は今年の2月に2週間の期間を設けて行いました。本館の2階にポスターを掲示したり、参加者が自由な感想を書き込める意見書を設置したり、プラスチック不使用の無料のティーバッグやスポンジなどを展示したりしました。

また、人々の環境意識を高めるキャンペーンとして、マイクロプラスチックに関するミニクイズが載っているチラシをガッキ(大学食堂)で配る活動などを行いました。

展示会後、ICUの生物学の教授である小林教授から、授業のゲストスピーカーとして、「内分泌撹乱物質とマイクロプラスチックの汚染」に関する授業に招待されました。私はそこでプラスチックの危険性、マイクロプラスチックとナノプラスチックの定義やその影響、そして展示会について説明しました。

Q2. プラスチック汚染、「マイクロプラスチック」、「ナノプラスチック」とはそれぞれ何ですか?そしてそれらの影響についても教えてください。

日本は米国に次いで、2番目にプラスチック廃棄物が多い国です。しかし、プラスチック汚染がもたらす人体への影響に関する意識は未だに低い。多くの人がプラスチック汚染は人体に直接影響しないだろうと考えています。また、マイクロプラスチックやナノプラスチックのこととなると、さらに認知度が低いです。マイクロプラスチックとは5mm以下の小さいプラスチックのことで、ナノプラスチックとは1000nm以下の極小のプラスチックのことを指します。

マイクロプラスチックやナノプラスチックが人体にもたらす長期的な影響に関する研究は存在しないが、動物への研究は行われています。WWFは人体を対象とした研究を行い始めており、それによると、なんと人間は毎週クレジットカード1枚分のプラスチックを食べ物や空気から摂取しているというのです。例えば、プラスチックの成分でできたティーバッグの使用など、私たちが日常的に多くのプラスチック製品を使っているから起こる現象です。大きめのプラスチックは排泄物として体の外に排出されるが、ナノプラスチックは小さいため体内組織や胎盤、血液脳関門などを通って体内の奥深くにとどまり続けることが可能なのです。研究者は動物の肝臓や免疫システムが悪影響を受けたという発見を踏まえ、人体に対しても大きな影響を及ぼすと考えられます。

Q3. プラスチック汚染について、いつから興味を持ち始めましたか?この社会問題への取り組み方は国によってどのように違いますか?

ドイツに戻る前、私はアルゼンチンに長い間住んでいました。4年前にドイツに引越した頃、アルゼンチンではあまりマイクロプラスチックやプラスチック汚染について関心が低く、話題になっていませんでした。そのためドイツに戻った直後は、プラスチックを使用することの影響や意味について、あまり考えていなかったのです。そんな中、私の意識を大きく変える出来事が起こりました。スーパーでプラスチックのレジ袋を購入しようとした時、レジの店員から「これがどれほどの大きなプラスチックのレジ袋が分かっている?」と苛立った口調で言われました。その時から私はプラスチック汚染について調べ始め、問題に興味を持ち始めました。

「プラスチック・シェイミング」と呼ばれる行為はドイツで日常的なことであり、これはプラスチック製品を利用する度に周りの人から指摘されることです。メディアでも注目されている話題のため、国民の多くは「マイバッグ」や「マイボトル」の利用を心がけています。アルゼンチンではドイツに比べ、プラスチック問題に対する認知度が低いため、ドイツでレジの店員が私を注意してきた時はとても驚きました。アルゼンチンは他にも国として抱えている問題があるため、現時点ではプラスチック問題を取り上げる余裕がないことも認知度の低い理由として挙げられるかもしれません。

日本においては現時点での認知度が低いため、話し合いから始める必要性があると思います。これには日々できるアクティビズム活動をすること、市民活動に参加すること、よりメディアで取り上げるように業界に圧力をかけること、そしてプラスチック汚染問題に対して法律を作るように促すことが必要とされています。

Q4. 何がきっかけでアクティビズムを始めましたか?

2019年9月日本語授業の研究のため、ICU生や一般の社会人の方、計10人にインタビューを行ったことがきっかけです。研究のテーマに選んだのは「日本でのプラスチック汚染問題に対する認知度」でした。何人かテーマについてよく知っていたものの、中にはプラスチックがどのように人間に影響を及ぼすのか知らない方もいました。ドイツでは日常的にメディアや家族、友人で話題になるため問題に触れ触発される機会が多く、だからインタビューで全体的な認知度の低さを目の当たりにした時、「何かしたい」という気持ちが湧き上がってきました。元々の計画はチラシを作成し、学内で配布することだったが、さらに発展させて展示会を開催することにしました。

Q5. 始めた時はどのような気持ちでしたか?

最初は生物学専攻や専門家でもない、日本語研究専攻の私にやり遂げることができるのかと疑問を抱いていました。でも他の人(教授やアクティビストの方々)と話し合うことやテーマについて調べることで、学びを少しずつ身につけることができました。まだ自分は専門家ではないが、マイクロプラスチック汚染についてより知識を深めることができたと実感しています。

Q6. どういう時にアクティビズムを通して刺激を受けましたか?

展示会をした時に多くの方から連絡をいただきました。ICU以外の東京の大学の方からも連絡が来た時、多くの方が「私たちに何ができる?何か状況を変えるためにやらなきゃ!」と、問題について積極的に質問や意見をくれました。これほど多くの方からポジティブな反響を受け、興味を持ってもらったことが、私にとって大きなエネルギーとなりました。個人単位で多くの方がこの問題に関心を持つようになったことが、意見書に書かれた感想の数からも伺えて非常にやりがいを感じました。

Q7. アクティビズムを通して何を学びましたか?ICU生に一言メッセージをお願いします!

展示会の企画を始めてすぐ、地域のNGOや個人にも関わってもらうような包括的なプロジェクトに仕上げたいと考えました。企画に参加したい多くの方: オランダ、イギリス、ドイツなど海外の方、地域の人々、Bye Bye Plastic TokyoVoice Up Japan ICUのような学生団体などと出会うことができました。これを通して多くの人が環境問題に興味を持ち、支援の手を差し伸べる体制ができていることに気づいたのです。

ICU生へのメッセージ: もしアイデア(考え)があれば、やってみてください!あなたは一個人でも、人を動かす力を持っているから変化をもたらすことができるはずです!あなたは一人ではありません。周りに多くの方やアクティビスト、コミュニティがサポートしてくれるはずだから、重要なのは最初の一歩を踏み出すことです!私が展示会で多くの方から手伝ってもらったように、困った時に手助けしてくれるコミュニティの存在があることがとても素敵だと思います。

また、アクティビストになることは個人の人生における小さな決断にすぎないため、生死に関わる究極の決断のように人生の全てをアクティビズムにかける必要性はないと思います。

日本で多くの方はアクティビズムを仕事の一種として捉えており、100%の全力を尽くす必要があると考えられています。でも実際は色んな形のアクティビズムが存在するため、自分の生活スタイルに一番合った方法を探すのが良いかもしれません。アクティビズムは一通りしかないといった考え方を見直すことが必要となってくると思います。

Q8. 社会に訴えたいことやメッセージはありますか?

多くの方はアクティビストになること、そして社会に変化を及ぼすことには多くの時間や労力がかかると考えています。でも私は毎日続けて行う小さな行動がとても大事だと考えます。家族や友達と社会問題について話し合うことやSNSに投稿することが社会全体の認知度を上げることにつながるのです。私はこの日常的なアクティビズムが社会の方向性を転換させるきっかけになると信じています。

Q9. 今後のの展望は何ですか?新しい企画などはありますか?

現在(春学期期間中)、環境研究に関する授業を履修し、世界規模で虫の数が減少していることについて議論しました。日本でぜひ、蜂の絶滅危機に関するイベントを企画して開催できると良いなと考えています。日本では蜂は怖くて危険な生物として捉えられているため、多くの方は蜂の重要な役割について知らないと思います。例えば、蜂が世界の食糧生産の30%を担当していることなど。また新たな展示企画を行い、このテーマについて話し合えると良いなと考えています。

サラ・ニーハウスさんが展示会で貼った意見書: 展示会をよりインターアクティブで対話を促す場にするため、訪れる方がマイクロプラスチックやプラスチック汚染について考えを共有できる意見書を作りました。

インスタグラム: @sarahbonchan

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