ブログ第5弾 | 病が原動力に ー全ての人の健康を守るHPVワクチンを知ってほしいー Voice Up Japan ICUで活動するID24 川上詩子さん

執筆者情報

ID24 川上詩子 (かわかみ うたこ)
専攻:法学・社会学(予定)
所属団体:Voice Up Japan ICU, TEDxICU, Her Campus ICU
趣味:音楽鑑賞や1人でゆっくりお出かけすること
Twitter: https://twitter.com/uta_ka
Instagram: https://www.instagram.com/utako_kawa/

目次

Voice Up Japan ICU HPVワクチンプロジェクト立ち上げ

私はVoice Up Japan ICU支部というジェンダー問題を中心に社会問題に取り組む学生団体に所属しています。そこで、子宮頸がんなどのがんを予防するHPVワクチンの正しい情報を若年層中心に社会全体へ広げることを目的とし、「HPVワクチンプロジェクト」を去年の11月に立ち上げました。

立ち上げ以来チームメンバーとともに:

オンライン署名の立ち上げ、専門家を招いた80人規模のオンラインイベント、メディア取材、高校への保健だよりへの掲載・動画配信、SNSにおける情報発信、他団体との合同オンライン勉強会

などの活動を通して、今までHPVワクチンを聞いたことのなかった人や、あまり知らなかった人に正しい情報を届けてきました。

私が、医学生でもなく、子宮頸がんサバイバーなどでもないのにHPVワクチンの問題に着目してアクションを起こしているのには、実は個人的な経験が背景にあります。

そんな私のお話を、少し聞いていただけましたら、嬉しいです。

原因不明の病に襲われた高校1年生

高校1年生の冬、私は全身の強い倦怠感、時に呼吸困難、食欲不振、首・背中・足・腕の鈍痛を経験していた。

本来なら20分しかかからない家から駅まで、歩いて1時間もかかった。

15時間ぶっ続けで寝ていた。

食事は3口しか食べられなかった。

明らかに体調が悪かったので、病院に行き、血液検査を行った。炎症の数値がひどく、今すぐ大病院に行った方がいいと言われ、行った。

大学病院で血液検査結果を提出したあと脈を測ってもらった。

手首を差し出した。

脈が触れなかった。

その後私は1ヶ月弱の入院生活を送った。

CT、MRI、レントゲン、超音波、心電図… あらゆる検査を3週間弱にわたって何度も受けた。

(入院時のスケジュール帳)

その結果私は国家指定の難病「高安動脈炎」だと診断された。

高安動脈炎は、大動脈などに炎症が生じて血管が狭くなったり閉じたりして重要な臓器や手足に影響を与える原因不明の難病で、

患者は日本全国でわずか6000人ほどしかいない。たくさんの研究がされているが、原因はいまだによくわかっておらず、もしかしたら遺伝的要因を背景になんらかの感染をきっかけに発症するのではないか、という推測がされている程度だ。

診断が下された後は、病状がこれ以上悪化しないよう物凄く強い薬を点滴や錠剤を使って一気に投与された。

たくさんの種類の薬を服用したが、その中でも炎症を抑える「プレドニン」というステロイド錠剤が多く使われた。

幸いプレドニンやその他の薬のおかげで病状は安定し、退院ができた。

しかし、プレドニンは服用量が多いと食欲旺盛になり、かつ上半身(主に顔と肩周り)に不自然に脂肪がつく副作用がある。

(このようなプレドニンの副作用は、「バッファロー肩」「ムーンフェイス」などとも呼ばれる)

周りがメイクやおしゃれに目覚め、どんどん可愛くなっていく中で私はそんな副作用に大きく苦しめられた。

本当に本当に辛かった。

みんなと同じく健康に過ごしてきた私が、なんで1人でこんなに辛い目に遭わないといけないのか…。

がんが予防できるワクチンって?

そんな高校一年生の冬から4年が経った。

私は今大学2年生でICU内の学生団体3つで活動している。

特に力を注いでいるのは、Voice Up Japan ICUの「HPVワクチンプロジェクト」

HPVワクチンとは、HPV (ヒトパピローマウイルス) の感染を原因とする子宮頸がんなどさまざまな癌や性感染症を予防してくれるワクチンである。

子宮頸がんは、年間約1万人の女性が罹り、約3000人が亡くなっている子宮頸部の癌だ。特徴は、多くのがんと異なり、若い女性にリスクが大いにあること(発症は20代後半から増え、30代後半がピーク)。そして、ワクチンで予防ができること

また、HPVは主に性交渉などから感染し、性経験のある男女の8割は一度は感染すると言われている身の回りにありふれたウイルスだ。ただし、感染したからといって病気を発症するわけではなく、ほとんどの場合は免疫の力によって排出される。感染が続いた状態が長期間続くと子宮頸がん・中咽頭がん・陰茎がん・肛門がん・尖圭コンジローマなどの原因となる。病名の羅列からわかるように、男女問わずリスクのあるウイルスだ。

HPVワクチンとは、こんなにたくさんの病気を引き起こすリスクのあるウイルスの感染を予防(子宮頸がんの場合は発症自体を予防)してくれるもの。

しかし、日本では過去にHPVワクチンを危険視するような否定的な報道が多くされた。それは、当時HPVワクチンを打った女性たちが次々と体調不良を訴え、それが「副反応」(ワクチンと因果関係のある症状)として報道されるような内容のものだった。その後、報道に使われた症状とHPVワクチン接種との因果関係は証明されず、ワクチン接種の副反応ではないことが研究により明らかになった。しかしこの事実を大手メディアは報道しなかった。

否定的な報道が世論を煽り、政府も制度的な接種の推奨(「積極的勧奨」)を中止した。

そんな一連の流れから、日本はHPVワクチンの接種率が他の先進国に比べて危機的に低い。

HPVワクチンが日本に導入された当時は70%前後あった接種率が、0%近くにまで落ちた。これは、女性の健康に大きな影響を与えることとなる。

子宮頸がんの罹患者数・死亡者数は他先進国とは反対に上昇傾向にあり、接種率の低迷によってワクチンで救えたはずの命が失われることが様々な研究で推測されている。

報道が盛んだった頃は「HPVワクチンは危険なもの」として世に認知されていた。今でもその影響でそのような印象を持っている人もいるが、そもそも存在すら知らない人がすごく多い。私も昨年までHPVワクチンの存在自体知らなかった。

HPVワクチンについて知ったきっかけは母が接種を勧めてくれたからである。母は、私と兄弟が難病持ちであることからコロナ禍で医療情報収集をたくさんしており、その中でHPVワクチンの必要性や効果、そして安全性を知って、私に接種をすすめてくれた。

もし母からおしえてもらえていなかったら、今でもHPVワクチンを知らなかったかもしれない。でも、親がワクチンや医療の情報収集をする家庭は決して多くない。

だからこそ、HPVワクチンの正確な情報を私の世代に広めたい、と思い去年の11月に HPVワクチンプロジェクトを立ち上げた。

もちろん、HPVワクチンは本来予防が困難とされていた癌を予防してくれる大事なワクチンで、その正しい認知が広まっておらず接種率が低い以前にそもそも存在も知らない若者が多い、ということに強い問題意識を感じた。

私が動く理由

一方で、私がこのプロジェクトの立ち上げと活動にあたっての大きなモチベーションの根源には「高安動脈炎を患った私」がいる。

自分は原因不明故に予防もできなかった病気に罹って苦しい思いをしたし、多くのものを失った。

健康に、元気に毎日を過ごせることは決して当たり前ではないし、全ての人に与えられているものでもない;まさに儚い財産だなと感じた。

だからこそ、予防できる病気は予防したい。

予防の手段が与えられているのなら、それをしっかり利用していきたい。

子宮頸がんや他HPV感染症の場合は、ワクチンという効果的な予防の手段があるにもかかわらず、そもそもワクチンの存在自体を知らず生きている人があまりにも多い。私も去年までその1人だった。

ワクチンの啓蒙活動を行うときってとても慎重にならなければいけない場面が多い。なぜならワクチン接種に否定的な言説も存在するし、情報収集やファクトチェックを念入りにしなければ誰かの健康を害する可能性だってある。

それでも、高校一年生で突然原因不明の難病を患った私は、当たり前でない健康を守る大切さを同世代に周知する必要があると感じる。子宮頸がんや中咽頭がんなどが「予防できる病気」であること、予防の手段が私たちに与えられていること、そして自分の健康を守り抜く手段は十二分に検討するべきだということを同世代に伝える使命があると感じている。

知らなかった、特に興味がなかった、という理由で病気になる人、健康という財産を失う人を1人でも減らしたいから。

HPVワクチンに関する情報

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